【今どきワークスタイル】(4)男性の育児参加 夫婦でキャリア支え合い

 
妻のキャリア支援を考え、子育てをメーンで担当する鈴木庸介さん

 妻の仕事の有無とは関係なく、「積極的に育児に関わりたい」と考える男性が増えている。人生100年時代といわれるなか、家計だけでなく家事・育児の責任を分かち合い、夫婦でお互いのキャリアを支え合うことが求められているようだ。

 東京都内の総合商社に勤務する、鈴木庸介さん(36)は、昨年10月から育児休業中だ。同じ会社に勤める妻(31)は、今年1月からフルタイムで職場復帰した。鈴木さんは「商社なので、残業時間にテレビ会議を行うこともある。妻のキャリアを考えると、フルタイムで復帰するべきだと思いました」。

 数年前までは育休という選択肢はなかった。だが、人生100年時代の戦略的な生き方をつづったベストセラー「ライフシフト」を読み、考えが変わった。「社会の変化を考えると、夫と妻の両輪でキャリアを考える必要がある」

 妻の妊娠中から会社に育休取得を相談し、今では食事の準備から掃除、洗濯まで家事を一手に担う。「家事や育児は回数をこなすほど負担でなくなった。妻も細かいことを言わずに任せてくれました」

 この春から長女(1)は保育園に入園。鈴木さんも今月15日から、午後5時までの時短勤務で復帰の予定だ。育休中はNPOの活動に参加するなど視野が広がった。「会社以外でも、自身のキャリアを多様化していきたい」と話す。

専業主婦でも

 男性の育児参加は共働き世帯に限った話ではない。東京都立川市の会社員、嶋田泰典さん(32)は月に数回の在宅勤務をしながら、3人の子供を育てている。妻の恵実さん(31)は専業主婦だ。「1人目の育児を妻に任せきりでした。2人目が生まれたときにこのままではいけないと思った」と嶋田さん。教育環境の良さで選んだ自宅は、都心の勤め先まで往復3時間。帰宅は午後9時近くになり、子供と過ごす時間が少なかった。

 在宅勤務の日は、幼稚園バスまでの送迎や、皿洗いと家事育児の時間ができた。嶋田さんは「子供との関わりで学ぶことも多い。思い通りにいかないことも、まあいいかと許容できるようになった」と話す。

 育児経験は、仕事にも良い影響があった。「部下の育成面でも長期的な視点を持てるようになりました」と嶋田さん。

経済戦略の一つ

 共働き世帯は増加しているが、厚生労働省の「平成29年度雇用均等基本調査」によると、民間企業の男性の育休取得率はわずか5・14%だ。だが、父親が育児に関わることのメリットは大きい。

 リクルートワークス研究所の大嶋寧子主任研究員(雇用政策)は「認知能力の向上など子供の成長にプラスなだけでなく、離婚率を低め、生活への満足度を高めるなど国内外でさまざまな研究があります」と説明する。ドイツなどでは、父親の育児は少子化の歯止めとしてだけでなく、経済成長戦略のひとつと認識されているという。大嶋さんは「家計を担う責任や、家事や育児の負担を分かち合うことが、変化の大きい時代に求められているのではないか」と話している。

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 ≪編集後記≫

 「イクメン」が新語・流行語大賞のトップテンに選出されたのは平成22年。それでも、男性の育休取得率は低く、政府が掲げる「2020年に13%」には遠く及びません。「妻が専業主婦だとしても、将来働きに出るかもしれない。そのときに妻の仕事の選択肢を広げるためにも、男性の育児参加が必要」という有識者の言葉は説得力がありました。長期的な視野をもち、男性が育児に関わるメリットをもっと社会で共有する必要があるようです。(油原聡子)