【フィンテック群雄割拠~潮流を読む】「海外送金」がブレイク間近?〈前編〉 革新的サービスで労働者も笑顔
【フィンテック群雄割拠~潮流を読む】日本は今、大きく変わろうとしています。すでに首都圏では、働く外国人が増えた印象はありますが、これからさらに、日本へ来て働く外国人の数は増えていくはずです。
国は、2025年を目処に50万人超の外国人の就業を目指すことを発表し(2018年6月「骨太の方針2018」より)、2019年4月1日には、外国人労働者の受け入れを広げるための改正出入国管理法が施行されました。
諸外国から外国人労働者たちが増えたときに、一つ生じるだろう問題が目に浮かびます。それは、「海外送金」という問題です。
「海外送金」と言われても、日本人にはあまりピンとこないかもしれませんが、「海外送金」には、実は「(手数料が)高い」「時間が掛かる」「手続きが煩わしい」という不満・不便がたくさん潜んでいます。海外送金をしたことがある人なら、送金手数料の高さにビックリしたことがある人もいるでしょう。
今回は、この先、日本に外国人労働者が増えたときに、必ず脚光を浴びるだろうフィンテック・サービスを紹介したいと思います。
海外送金問題を解決したフィンテック
突然ですが、皆さんは、「トランスファーワイズ(TransferWise)」というアプリを知っていますか?
実は、このトランスファーワイズこそ、先に書いた海外送金問題を優れた形で解決したフィンテックサービスなのです。このサービスが生まれたのは、移民問題が取り上げられることの多いイギリス。同名のトランスファーワイズというフィンテック企業によって開発されました。
恐らく日本人でこのサービスを使ったことがある人は多くはないでしょう。これは、今回のテーマである「海外送金」の機能を持ったサービスなのですが、世界中で愛用されるフィンテックを代表するサービスの1つにまでなっています。評価されているポイントは、安い手数料で海外送金ができてしまう点、迅速な送金が可能な点、簡単に使える点などが挙げられます。
外国人労働者、移民の多いイギリスやアメリカなどでは、このサービスが彼らのニーズにマッチして、大変な人気となっているのです。
トランスファーワイズは会社としても急成長を遂げており、2017年の売上高は前年の4倍近い1億5100万ドルを記録。世界で約300万人が利用しているといわれます。
目の付けどころは海外送金の高い手数料
どういうことかと言うと、もともとの海外送金には、非常に高い手数料がかかっていました。今も日本から海外へ送金をしようとすれば、高い手数料を取られてしまいます。ちょっとお金を送りたいと考えただけでも、信じられないような手数料がかかってしまう。
例えば、アメリカに10万円を送金しようとすると、銀行にもよりますが、4750円も送金手数料がかかってしまうのです。(※楽天銀行・海外送金シミュレーターで2019年4月1日に計算)
ただ、これだけ送金手数料がかかるにもそれなりの理由があります。
従来の海外送金の仕組みは、送金元から中継銀行へと送られて、中継銀行からまた別の送金先の国の中継銀行へと送られて、やっと送金先の銀行へと届くという極めて非効率な仕組みの元で行われていました。
このように複数の経由先を通り、各経由先で銀行側が利益が出るようにレート(スプレッド)や手数料を取るわけです。そうすると、送金先に届くころには、結構な額の手数料が積み上げられてしまうというわけです。
楽天銀行の海外送金シミュレーターでも、「送金手数料 750円」「海外中継銀行手数料 1000円」「円貨送金手数料 3000円」という具合にかかっていて、これらが足されて合計4750円になるわけです。
同じように時間がかかるのも、上記のようにいくつもの経由先があるためです。ひどいケースでは、途中でお金が行方不明になったなんていう冗談のような話も耳にしたこともあります。
しかしこんな仕組みを説明されて、高いお金をチャージされてしまうのは、利用者としては今一つ納得できない。きっとそれが、普通の感覚なのではないでしょうか?
トランスファーワイズは、「安い」「早い」「簡単」!
ところが、トランスファーワイズだと、従来の海外送金よりも大幅に安い送金手数料でできてしまうし、そもそも時間もかからない。スマホからアプリを立ち上げて、簡単に送金ができてしまうのです。
異国から出稼ぎに来ている外国人にとって、これほど嬉しい仕組みはないはずです。せっかく汗水流して働いたお金を母国にいる家族へ送る際に手数料をたくさんとられてしまうのは悲しいものです。ちょっとした手数料でも、物価の安い国から出稼ぎに来ていたりすれば、母国では大金だったりなんてこともあるでしょう。また、そもそもの話として、外国人の方が滞在中の外国で銀行口座を作ることが難しい場合もあります。
そこへ来ると、このトランスファーワイズは「安い」「早い」「簡単」というメリットを与えて、彼らのペインポイントを見事に解消しているわけです。これによってトランスファーワイズは海外で爆発的に広がっていったのだと思います。
では、トランスファーワイズはどうしてこんなことが実現できてしまったのでしょうか? 実はこのサービス、「実際にはお金を送っていない」ところにミソがあるのです。気になるその驚きの仕組みについて、また注意点などについて次回もお話を続けたいと思います。(後編に続く)
【プロフィール】甲斐真一郎(かい・しんいちろう)
京都大学法学部卒。在学中プロボクサーとして活動。2006年にゴールドマン・サックス証券入社。主に日本国債・金利デリバティブトレーディングに従事。2010年、バークレイズ証券に転籍し、アルゴリズム・金利オプショントレーディングの責任者を兼任する。バークレイズ証券を退職後、2015年12月に、手軽に資産運用、株式投資を楽しめるフィンテックサービス「フォリオ」を提供するオンライン証券会社「FOLIO」を設立。フィンテックの旗手として大きな注目を集めている。次世代型投資プラットフォーム・サービス「フォリオ」は、「ユーザー体験」「操作感・表示画面」に着目されており、テーマ投資という形で誰もが簡単に株式投資を楽しむことができるように設計されている。FOLIOはお金と社会にまつわる情報を発信するオウンドメディア「FOUND」も運営している。
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【フィンテック群雄割拠~潮流を読む】は甲斐真一郎さんがフィンテックと業界の最新事情と社会への影響を読み解く連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら
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