【100歳時代プロジェクト】就業不能保険に注目 働けなくなったときへ備え
「100歳時代」を迎え、人生が長くなれば、世代ごとにさまざまなリスクに直面し、万が一への備えが欠かせなくなっている。働き盛り世代の備えとして注目されているのが、生命保険会社が販売している「就業不能保険」だ。病気やケガなどで働けなくなったときに、給与のように毎月一定の給付金が支払われるもので、家族の生活を守る保障として加入者が増えているという。
「責任世代」に向けて
「人生100歳時代になれば、できるだけ長く働いて、稼がないといけない。働けなくなり、収入がなくなったときのリスクもそれだけ大きくなるので、その備えはますます重要になっている」
こう指摘するのは、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんだ。
これまでの保険は、病気になったりケガをしたりしたときの治療費や介護費などの支出を保障するものが中心で、収入の減少をカバーするものは、少なかった。
そこで、生保各社は働けなくなったときの生活費などへの不安に応えようと、就業不能保険の販売に力を入れている。
太陽生命保険は平成28年に「働けなくなったときの保険」を発売。昨年4月にリニューアルした。
従来はがん・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾病とケガを原因とする就業不能を対象としていたが、精神疾患を含むすべての病気に広げた。
所定の就業不能状態または入院が30日継続した段階から早期就業不能給付金が、さらに180日継続すると就業不能年金が満了期間まで支払われる。保険期間は85歳まで設定することができる。
同社営業企画部の原耕平部長は「家族を持つ働き盛りの20~50代の責任世代向けの商品。幅広い原因に対応し、早期の段階から保障を受けられるのが特徴となっている。入院が長引いたり、障害が残ったりして長期間働けなくなるリスクに備えられる」と、同保険の狙いを説明する。
米国では30%超加入
生命保険文化センターの調査によると、世帯主が就業不能となった場合に必要と考える資金額は平均月28万円。就業不能保険に加入しておけば、健康保険の傷病手当金や障害年金などの公的保障で足りない収入を補うことができる。
同社の場合、月額給付金は男性加入者が平均13万6千円。保険料は月額給付金20万円、40歳加入・60歳満了で男性の場合、死亡・高度障害保障がないタイプで月4820円という。発売以来の契約件数は約24万件になった。
原部長は「安心して元気に長く働くためにも、万が一のときへの備えは大切。就業不能保険のニーズは高まっている」と話す。
アフラックの「給与サポート保険」は28年の発売からの契約件数は約7万8千件。当初の短期回復支援給付金とその後の長期療養支援給付金に分けて金額設定できるのが特徴だ。
ライフネット生命保険の「働く人への保険」は22年に発売された。28年に「働く人への保険2」にリニューアルされ、契約件数は約4万9千件に。当初の給付金額を半分に減らし、保険料を抑えるハーフタイプも用意した。
就業不能保険は日本ではまだ新しいタイプの商品で、就業者に占める加入者の割合は1%未満にとどまっている。米国では30%を超えており、今後の市場拡大が期待されている。
畠中さんは「会社の団体契約でカバーされている場合もあるので確認してほしい」とした上で、「安心して治療に専念できるメリットがあり、結果として無理せず長く働ける。保険は備えとして確実性が高く、人生100年時代で果たす役割は大きい」と話した。
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