お米を選ぶ楽しみ 無農薬、機能、産地…多様化

 
玄米(BrownRice)、バランス(Balance)、美と健康(Beauty&Health)の「3B」がsakura食堂のコンセプト。「ナチュラル朝日」の玄米とヘルシーな旬のおかずの定食(加藤聖子撮影)

 好みに合った良い米を食べたいというニーズが、ますます強まっている。健康を意識した無農薬米や機能米が売れているほか、新種のブランド米も日本全国で続々と誕生。どんな米を選ぶか、その観点も多様化しているようだ。(加藤聖子)

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 ◆品種は戦国時代へ

 昨今、米は「量より質」の傾向が一層加速しているようだ。消費量が減り続ける中で生き残りをかけ、“高級”“自然栽培”“健康”など、付加価値の高い新品種が次々登場している。

 「世界でいちばんおいしいお米とごはんの本」(ワニブックス)の著者で、5ツ星お米マイスターの渋谷梨絵さんも、「ここ数年、米にこだわる人が増えてきた」と実感を話す。渋谷さんによると、その傾向が強まったのは平成23年の東日本大震災後だという。震災で一時、米が不足し、今まで食べていたものとは異なる品種に触れる機会ができた。味や食感の違いを知ったことで、米をきちんと選びたいという意識が高まったとみられる。

 最近は、子供に良いものを食べさせたいと、若い人がこだわることも増えているという。「産地、品種、栽培方法や機能、合う食事のメニューなど米の個性はさまざま。いろいろ試して、味覚やライフスタイルにあったものを見つけてほしい」と渋谷さん。

 ◆高くても指名買い

 健康意識の高まりで、米の栽培方法も注目されている。なるべくナチュラルなものを-と、農薬の使用の有無や、肥料の種類を気にする人も増えた。

 岡山県で栽培され、富士産業(香川県丸亀市)が販売する「ナチュラル朝日」は、書籍化や映画化で話題になった「奇跡のリンゴ」の生みの親、木村秋則さんが栽培を指導している米だ。無農薬であることはもちろん、化学肥料、除草剤、有機肥料すら使わない“自然栽培”とあって、健康や環境意識が高い人の間で支持されている。

 粒が大きく、しっかりした歯応えと米本来のうまみが特徴で、玄米は5キログラム5886円(税込み)、精米は6156円(同)。一般的な米より高価だが、すし職人や高級料亭の料理人など、プロの指名買いも多い逸品だ。

 健康や美意識の高い女性らに人気の飲食店「sakura食堂」は、15日から、マロニエゲート銀座店(東京都中央区)の全ての定食・弁当メニューの米をナチュラル朝日の玄米にした。約5600食分の数量限定で提供する。同店を運営するC&Bプラスの広報担当者は「生産者のこだわりが店のコンセプトと合致した。この機会にぜひナチュラル朝日を食べに来てほしい」と話す。

 ◆機能性表示食品も

 また、もう一つ健康意識の高い人の関心を集めているのが「機能米」だ。サタケ(広島県東広島市)の販売する「無洗米GABA(ギャバ)ライス」は、米では日本初となる機能性表示食品。血圧を下げたり、心理的ストレスを緩和する機能のあるGABAが、通常の玄米の約3倍、白米の約10倍含まれている。同社広報部の西名緯久男さんは「GABAは添加するのではなく、発芽プロセスを利用してお米の中から作り出されたもの。温度や水分など試行錯誤を重ね、見た目や食感、味も普通の白米と変わらない」と自信を見せる。

 平成30年デビューの新種の中でも話題を呼んだのは山形県産の「雪若丸」。米では珍しく、人気タレントを起用したプロモーションなどで一気に知名度を上げた。白さが際立ち、つやのある“炊き映え”と、しっかりした粒感、粘りのある“新食感”が売りだ。同県の農林水産部県産米ブランド推進課担当者は「同じ県産ブランド米の『つや姫』と異なる食感の品種を選ぶのに苦労した。支持をいただき、現在はほぼ終売。購入者アンケートでも“とてもおいしい”が75%と高い評価もいただいた」と語った。