【受験指導の現場から】 受験シーズンは過ぎるのも早いもので、本連載も4回目となった。そこで、年度も改まったところで、今回は少しレンジの長いテーマについて考えてみたい。
じつは、この原稿を書き始めた直後、「小学5、6年に教科担任制、中教審に諮問へ」という報道を目にした。同記事には、「高校教育では、とくに普通科で文系の生徒が大学入試に不要な理系科目を勉強しようとしない現状があるため、文系と理系の枠組みを超えた教科横断的な教育を推進する」とある。
まさに、筆者の日頃の問題意識に応えるものにもなっており、「我が意を得たり」といったところである。
一方、ひと昔もふた昔も前から、「理科系のほうが就職に有利」と巷間言われ続けていることもあり、「できれば理科系に進んでほしい」と考えている親は少なくはないだろう。
では、子供の志望(適性)も理科系だとして、「大学進学時に理科系の学部・学科に進むには、どういった進路を選択するとよりスムーズなのか?」--これが、今回のテーマである。
大学系列校を選ぶ際の注意点
議論が情緒的、直感的になりすぎないよう、あらかじめ、大学(理科系学部・学科)合格までの進路を場合分けしておくことにする。
Aコース:中学受験⇒中高一貫進学校⇒大学受験
A'コース:中学受験⇒中高一貫大学系列校⇒内部推薦
Bコース:公立中学⇒高校受験⇒中高一貫進学校⇒大学受験
B'コース:公立中学⇒高校受験⇒(中高一貫)大学系列校⇒内部推薦
Cコース:公立中学⇒高校受験⇒附属中・大学のない私立高校⇒大学受験
Dコース:公立中学⇒高校受験⇒公立高校⇒大学受験
A’とB’に関しては、基本、大学系列校に入ってからの成績次第であるので、今回の議論の対象からは外してしまってもよいだろう。ただし、後の議論でより重要な観点になるため、以下の点には、あらかじめ言及しておいたほうがよさそうだ。
〈1〉中学受験(4教科)と私立高校受験(3科目受験/首都圏)とで、理科系科目のウェイトを比較すると、中学受験では「算数+理科」の配点が大概5割であるのに対して、私立高校受験では数学の配点は3分の1となり、理科系科目が得意な子供にとっては中学受験のほうが与しやすい傾向にある。英語が苦手になりそうな子供であればなおのこと、高学年(小4~5)になる前に一度は見極めておきたいところだ。
〈2〉B’コースの場合、定期テスト対策以外には理科にまともに取り組んだことがないまま中高一貫校に編入することになるため、中学受験時にきちんと理科に取り組んだ内部進学組と比べると、理科は後方からのスタートになる。
その上、数学について、上位の私立中学になればなるほど、本来高1課程である数Ⅰと数Aを中3のうちに終えるカリキュラムになっており、高1で「数Ⅰ+数A」と「数Ⅱ+数B」に同時並行で取り組むことになる。つまり、内部進学組と較べると、理数系科目はかなり後方からのスタートになるため、「学内で上位の成績を収めて理数系学部へ」というシナリオを描くのは、あまり現実的ではなさそうだ。
後方集団からのスタートはきつそうだ
ここからは改めて、以下のA、B、C、D、それぞれの進路によって、何がどのように違ってくるのかを考えていきたい。
Aコース:中学受験⇒中高一貫進学校⇒大学受験
Bコース:公立中学⇒高校受験⇒中高一貫進学校⇒大学受験
Cコース:公立中学⇒高校受験⇒附属中・大学のない私立高校⇒大学受験
Dコース:公立中学⇒高校受験⇒公立高校⇒大学受験
いずれの進路も大学受験が前提となるため、ここでの論点の中心は、「理科系学部・学科への進学を目指す際、高校の3年間で理科系科目の学力を最大限に高められそうなのは、どの進路なのか?」ということだろう。
もちろん、それぞれの学校の先生の指導力の差に依るところが最も大きいことは間違いないが、進路が異なれば「どの時期に何を学ぶのか」が変わり、子供の適性が同じであっても、大学受験時点の仕上がり具合がかなり違ってくることになるはずだ。
まず、Bコースであるが、先に(2)で挙げた観点がほぼそのまま当てはまる。内部進学組と較べて理数系科目がかなり後方からのスタートになる上、大学附属校であれば学校の成績さえよければ何とかなるところ、模試などの成績で他校にいるライバルと伍して戦わなければならない。ほとんどの場合、私立高校に通っていながらも予備校にも通わないと、学外のライバルと互角に戦うことは難しいだろう。
Cコースに関しても、学内でのビハインドがないことを除けば、大きな枠組みではBコースとほぼ同様のことが言える。ただ、Bコースに比べると、学力の面では同じスタートラインから高校生活を始められるため、精神的にはむしろベターかもしれない。また、中堅の私立高校の中には、「学内予備校」のような制度を積極的に採り入れ、大学進学実績の向上を図っている注目株も存在する。「公立中・下位校よりは私立のほうが…」というなら、当たってみる価値はあるはずだ。
実は子供の特性を見極めることが大事
では、AコースとDコースという、一見真逆な2パターンについてはどうだろうか? 例えば、中学から御三家クラスなのか、公立中学を経て都県立トップクラスの高校なのか。小学校の中学年というかなり早い段階で一度は判断しなければならない割には、選択肢として(家庭の方針として)、両者には決定的な違いがあるように感じられてもおかしくはない。しかしながら、最終的に(中間ゴールとして)目指すところは同じである。
あくまでも筆者が日頃、大勢の生徒たちに接している中での実感値ではあるが、どちらの選択がベターであるかは、小学校時分の成績だけでなく、子供の特性に依るところが大きいと感じている。
誤解を恐れずに言えば、好奇心旺盛、負けず嫌い、我が強い、好き嫌いが大きい(苦手分野がある)、弁が立つ(ある面で生意気)…といった子供は、どちらかと言えば中学受験向き。逆に、寡黙、競争・自己主張が苦手、得手・不得手があまりない、大人びてない、体力がない…といった具合なら、決戦の時を遅らせたほうが得策となることも少なくないように思える(「迂を以て直と為す」かもしれない)。
翻って、素直に学力だけで考えれば、国語や社会に苦手分野があっても、本人の中では算数が抜きん出ているなら中学受験のほうが、どの科目もほぼ均等にできるタイプなら高校受験のほうが、より優位に戦えるのではないかという、冒頭の話に戻るのであるが。
以上を敢えてまとめると、「理科系の大学・学部に進むなら」…「A≧D≫B≒C」が、現時点での筆者の主観である。
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【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが教育に関する様々な情報を、日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、受験生予備軍をもつ家庭を応援する連載コラムです。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら。