そのペットボトル買い取ります 大阪市とサントリー、回収でタッグ
砂浜に漂着した洗剤容器やポリタンク、クジラの胃から発見された大量のポリ袋-。「プラスチックごみ」による海洋汚染が、地球規模で深刻化している。28、29日に大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議でも、主要議題となる予定だ。その大阪市では、飲料メーカーが住民から使用済みペットボトルを買い取るという新しい取り組みが、今秋をめどに始まるという。リサイクルの何が変わり、どんなメリットがあるのか。(田中佐和)
飲料大手のサントリーホールディングス(HD)は今月7日、大阪市内の家庭から出る使用済みペットボトルについて、市が提案する新しい回収・リサイクルシステムに参画すると発表した。
大阪市では現在、ペットボトルは「資源ごみ」として週1回、空き缶や空き瓶などと一緒くたにして回収。その後、業者がペットボトルだけを分別し、リサイクルに回している。
これに対し、新システムではサントリーが対象地域と売買契約を結び、市に代わってペットボトルのみを回収。再生ペットボトルの原料としてリサイクル工場に売り、売却益を地域に還元する。
つまりペットボトルを「ごみ」ではなく、経済的価値のある「有価物」として取引するのが大きな違いだ。
分別意識向上へ
サントリーHDによると、再生ボトルを作るには、フタとラベルを外して水洗いした“質のいい”状態の使用済みボトルが必要。だが、従来の回収方法では洗われていなかったり、他のごみと混ざっていたりと低品質なものが多いのが課題だった。
大阪市によると、平成29年度に約7千トンのペットボトルをリサイクルした一方で、約1千トンは普通ごみに混ぜて捨てられ、焼却処分されたと推計されている。
新システムでは、サントリーHDが住民側に対価を支払うことで、良質なペットボトルを大量に回収することが可能になるという。市の担当者は「市民の分別意識が高まる」と期待する。
売却益が地域の財源となることも大きなメリットだ。売買契約の対象となるのは、「地域活動協議会」など、校区規模の地域コミュニティー。市では売却益の用途は定めていないが、街灯の設置や防災グッズの購入といった、地域に役立つことへの使用を想定しているという。
サントリーHDは協力が得られる地域コミュニティーと契約を結び、秋ごろのスタートを目指している。
活発化するリサイクル
大阪府と大阪市は1月、「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」を策定した。大阪・関西万博が開催される2025年までに、ペットボトルの100%資源化などを具体的な削減目標として掲げている。今回の新システムはその一環で、大阪市が仕組みを構築し、公募で参加事業者を募った。
こうした動きは民間にも。日本コカ・コーラは、提携する全国のコンビニエンスストアの店頭で回収した使用済みボトルで再生ボトルを作り、それらを使った飲料を今月発売した。サントリーHDも、2030年までに全てのペットボトル飲料を再生容器や自然由来の容器に替え、化石燃料由来の原料を全廃するという目標を掲げる。
サントリーHDの担当者は「現在再生ボトルはサントリー商品の1割だが、将来的には7割にまで引き上げたい。今回の大阪市の取り組みをモデルケースとして、他地域にも広げていければ」と話した。
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【プロフィル】田中佐和(たなか・さわ) 産経新聞大阪本社社会部で大阪市役所を担当。先月まで住んでいた奈良市では、ペットボトルは専用の網袋で回収していた。個人が少しの手間を習慣化するだけで、有害なごみは有益な「原料」になる。新システムに多くの地域が協力すれば、大阪のごみ問題は確実に前進するだろう。
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