【受験指導の現場から】「算数が苦手」にもいろいろ 答案用紙からここまでわかる子供の弱点
中学入試に於いて差がつきやすい科目、つまり合格者平均点と不合格者平均点とのあいだの点数差が大きいのは、算数、理科、国語、社会の順であることは、中学受験生の親なら、たいがいはご存じだろう。
もう少し詳しく言えば、一般的に算数が100点満点であるのに対し、理科は50~75点満点(標準的には60点満点)であることを考慮すると、点数では算数、理科の順であるが、得点率の差だと算数と理科はあまり変わらない。
となると、当たり前のことであるが、算数が得意であれば、算数でいかにライバルに差をつけるか、逆に他科目よりも苦手であれば、算数をいかに合格者平均点に近づけるかが、焦眉の急となってくる。
しかしながら、異口同音に「うちの子は算数の点数がなかなか伸びなくて……」「うちの子も算数が苦手で……」と言っても、どう苦手なのかは様々である。
そこで今回は、「算数の得点がなかなか伸びない」にはいくつかのタイプがあり、対処法もそれぞれに違ってくるということについて掘り下げてみたい。
得点や偏差値だけを見ていないか
塾に通っている小学生であれば、ほぼ必ず、1~2カ月に一度は模試または模試に準ずるテストを受け、志望校の合格可能性の判定を受けているはずだ。帳票が送られてきて真っ先に見るのは、全教科及び科目ごとの偏差値と得点、志望校ごとの合格可能性だろう。
しかしながら、それらの数値だけを見ていては、具体的な対策は浮かんでこない。もし、同じ帳票を見た塾の講師のコメントが、「算数を頑張らないとダメですね」で済ませているようなら、その講師は無能である。なんら具体的なアクションにつながらないコメントは、アドバイスでも指導でもない、ただの感想である。生徒の行動につながってこそ指導である。
帳票には必ず、採点済みの答案のスキャン画像がついているはずであり、まずは答案用紙を見る必要がある。親は自分の子供の答案用紙しか見ないので、その場ではなかなかイメージしづらいかもしれないが、同じ60点にもいろいろなタイプがあり、それぞれに具体的な対策は違ってくる。
2つのタイプ、伸びやすいのは…
「算数がいつも50点くらいで、なかなか点数が伸びない」というケースを想定しよう。同じ50点にも大きく分けて二つのタイプがある。
【タイプA】
解答欄に空欄が多いが、正答率は割と高い。例えば、20問中13問を解いて10問の正解(正答率77%)。
【タイプB】
解答欄はほぼ埋まっているが、不正解が多い。18問中10問の正解(正答率56%)。
意外に思われるかもしれないが、点数を伸ばしやすいのはどちらなのかと言えば、じつはタイプAのほうである。
空欄が多いことには、当然いくつかの理由が考えられる。(1)計算が遅い(暗算が苦手、計算上の工夫ができない)、(2)解けない問題(経験していない問題)が多い、(3)特定の問題に時間を掛けすぎている(分からない問題を後回しにしない)、といったところだろう。しかしながら、今は時間が掛かっていてもほぼ正確に解けている(計算ミスや勘違いが少ない)なら、コツコツと訓練し、苦手な単元を順々に潰していけば、解答率に応じて点数は上がってくる。
対策としては、(1)計算スピードを上げるための訓練をする、(2)できなかった問題を必ず(いったんは)できるようにしてから次に臨む(本来、週単位の対応が望ましい)、(3)捨ててよい問題をはっきりさせ(10~15点分)1問あたりに掛ける時間の上限を意識して制限時間内での点数最大化を図る(受験スキルを磨く)、といったところだろう。
集団指導塾では、実際問題として(2)はなかなか対応しきれないため、親から各校舎(教室)責任者に相談し、受験者全体の正答率は必ずしも低くないのに(目安は40%以上)我が子ができていない問題(単元)に関しては、手を打ってもらえるようにしたいところだ。
読解力や性格に問題ありのケース
問題はタイプBである。解答率は高いが正答率が低い生徒には、いくつかの傾向がある。例えば、(1)なにをどう答えればよいかを正確に読み取れていない、(2)計算ミスや数字の取り違えなどが多い、(3)正解かどうかの確認をしない(その術を分かっていない)、(4)きちんと考えずに勘で答えを書く癖がある、などだ。
お気づきかもしれないが、上記の(1)~(4)は読解力と性格に起因するところが大きい。仮に(1)なら、問題文の中の「すべて」「それぞれ」「ただし、」「誤っているものを」といった、答え方に直接関係する部分を読み落としていることが多い。この(1)のタイプの生徒は理科や社会でも同様の間違いを連発する傾向があるため、理科・社会と突き合わせてみれば、より明瞭になるはずだ。
で、どうすればよいのか? このタイプBの生徒の場合、答案用紙だけでなく、問題用紙も確認し分析する必要がある。おそらく、ではあるが、答案用紙は見ていても、問題用紙の設問の隙間になにをどのように書いているかまで見ている親は少ない。と同時に、集団指導塾であれば、担当している生徒全員の問題用紙を見ている講師は稀であるのが現実である(受動的対応にならざるを得ない)。
では、問題用紙を見てなにを判断するのか? (1)のタイプであれば、問題文中の肝心な部分(数字や先程のキーワード)にアンダーラインを引いたり〇で囲ったりして、リード文から小問に移った後で見落とさないような工夫をしているかを見る、していなければそのように促す。
また、(2)のタイプの場合、設問の隙間に雑然と走り書きをしていることがほとんどである。後から見て、どの計算をどこに書いているのか、本人にも分からないことが多い。そもそも、図や式を整然と書くことができない(書こうとしない)。例えば、問題を図式化することをまったくせず、設問の隙間に筆算だけして済ませていたり、かつその筆算も途中で間違っていたりする。
こういった生徒であれば、普段から、正解か不正解かを最重要視するのではなく、模範解答をつくることを旨とするなど、図解・立式・説明力を再構築する必要がある。その際、それぞれの式がなにを計算しているのか明確になるよう、数字に単位をつけさせるのも一手である(理科の計算問題のためにもなる)。
「勘で答える」タイプが一番危険
(3)は割愛して、最後に(4)のタイプについて触れたい。 たまに、高得点を取ることよりも解答欄を埋める、あるいは早く終わらせることに意義を見出しているかのような生徒がいる。(4)のタイプの多くがそれであるが、じつは、中学受験に際して最も望み薄なのがこのタイプである。「正答率が低い」タイプBの中でも最も性格に依るところが大きく、講師のアドバイスに対してもあまり聞く耳を持たず、行動面まではなかなか変わらない。
筆者は、そういう生徒は「クラスに必ず1名はいる」との実感を持っているのであるが、クラス内のテストの時に机間を見回りながら、早く解き終わった?(ように見える)そういう生徒に、「なんでこの答えになるの?」と聞くと、必ずと言っていいほど、「ん? カン」と返ってくる。
このタイプの生徒は、知識の詰め込みはできても、性格的にじっくり考えるということができない。けっして、頭の回転が悪いわけではないのであるが(実際、計算が遅いということはない)、筋道立てて考えを進めるという癖がなかなかつかない。それを小学5~6年生の2年間ほどのあいだにがらりと変えられるかと言えば……正直、難しい。現実として、筆者の知る限り、「ん? カン」と答えた小6生で第一志望に受かった子はいない。
もし、自分の子供が(あるいは小学生の頃の自分が)このタイプだなと思ったら、塾に通い始める前から、我が子の「説明力」を意識してはどうだろう。説明するためには、当然、よく考えて頭の中を整理しなければならない。授業中、積極的に手を挙げた生徒であっても、説明させてみると、途中からしどろもどろになってしまうことは多い。親と仲良く話ができる年頃のうちに、勉強に関する親の「なぜ?」に対して、子供が面倒臭がらず積極的に説明をするようになってくれれば、きっと次につながるはずである。
【プロフィール】吉田克己(よしだ・かつみ)
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【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが教育に関する様々な情報を、日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、受験生予備軍をもつ家庭を応援する連載コラムです。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら。
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