銚子電鉄「まずい棒」赤字削減に貢献 新味「ぬれ煎餅味」も限定販売へ
銚子電鉄(千葉県銚子市)が販売するスナック菓子「まずい棒」が昨年8月の発売から1年を前に100万本以上を売り上げ、厳しい経営状況の改善に大きく貢献している。平成30年度決算では本業の鉄道事業で大きな赤字となったが、まずい棒や「ぬれ煎餅(せんべい)」などを扱う食品製造販売事業の営業利益は前年度より6割以上増え、本業の赤字幅を縮小した。
銚電はまずい棒の発売1周年を記念して、新味「ぬれ煎餅味」を8月3日に発売する。経営危機を救ったぬれ煎餅とまずい棒-2つの救世主の“奇跡のコラボ”が実現する。今後はぬれ煎餅の新しい味付けや、持ち前の「自虐ネタ」を生かしたユニークな企画を準備しており、怒濤(どとう)の新商品ラッシュで起死回生を図る。
「経営がまずいので」
「まずい棒に救われた」。銚電の竹本勝紀社長(57)は、まずい棒を発売してからの1年間を振り返り、そう語った。
まずい棒は、銚電が毎夏走らせている「お化け屋敷電車」の企画・演出を担当する怪談蒐集(しゅうしゅう)家、寺井広樹さんが考案。パッケージに描かれた車掌姿のキャラクター「まずえもん(魔図衛門)」は、「まずい」という言葉に反応して魔界からやって来る銚電ファンの異星人という設定で、ホラー漫画家の日野日出志(ひでし)さんが手がけた。
昨年8月3日に第1弾のコーンポタージュ味が発売されると、「経営がまずいので」という自虐的なネーミングやユーモラスなパッケージが話題となった。犬吠駅の売店に行列ができるなど予想以上の売れ行きに追加生産が間に合わず、品切れ状態が続いた時期も。今年3月にはシリーズ第2弾となるチーズ味の販売を始めた。
新味はパクリスペクト
新たに加わる「ぬれ煎餅味」は、コーンポタージュ味をベースにしょうゆパウダーを加えたもので、「焼きトウモロコシに近い味になった」(竹本社長)という。パッケージには「まずえもんのおばあちゃん」が煎餅を焼く姿が描かれている。
竹本社長は「有名な米菓『ぽたぽた焼き』(亀田製菓)のおばあちゃんをモチーフにしています。パクリではなく、リスペクト(敬意)を込めたパクリスペクトなんです」と説明する。8月3日から7万5千本の限定販売だが、反響次第では追加生産も検討する。
資金難救ったぬれ煎餅
銚電の「ぬれ煎餅」は、平成7年に犬吠駅で手焼き販売を試験的に始め、2年後には工場を構えて本格的な製造に乗り出した。18年に資金不足で深刻な経営危機に陥った際には、社員がホームページに「ぬれ煎餅を買ってください!!」「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」と書き込んだところ、全国からネット通販の注文が殺到し、ぬれ煎餅の一大ブームを巻き起こした。
経営危機を救ったぬれ煎餅、まずい棒に続くヒット商品を狙い、銚電は7月13日に「バナナ車掌のバナナカステラ」を発売した。バナナあんがたっぷり入ったカステラで、パッケージには銚電車掌のバナナ健(32)、妻のバナナ千恵子(27)、娘のバナナ苺(3)の3種類のキャラクターのいずれかが描かれている。
銚電どこへ向かうのか
スナック菓子やスイーツなど幅広い食品を取り扱っている銚電だが、竹本社長は「食品部門に関しては、ぬれ煎餅の売り上げをいかにして確保できるか。世界一の煎餅屋を目指し、ぬれ煎餅を最高においしいものにしていこうと、味の改善に取り組んでいる」と、主力のぬれ煎餅に本腰を入れる。
関西方面の市場に向けて、うす味でだしの効いたぬれ煎餅の開発を進めるほか、「電車が古くてサビが浮かんでいるのを見て、『わ!サビだ』と思ったからワサビ味」「経営がとてもつらいから激辛(つら)味」といった持ち前の自虐ネタを生かし、話題性と味の追究を両輪に商品開発を進めていくという。
(城之内和義)