【受験指導の現場から】塾選びはここに気をつけよ 合格実績それとも講師?…「裏技」も伝授
非受験学年(小6・中3以外)の子どもがいる家庭の中には、「夏期講習会から初めて塾に通わせることにした」「9月から塾に通わせようと考えている」といった向きは少なくないだろう。
後者であれば、まさに塾選びの真っ最中であり、前者であっても「9月以降どこの塾に通わせるか、まだ決めていない」という家庭もあるはずだ。
そこで今回は、塾を選ぶ際にあまり考慮されていないであろう視点について、受験対策目的に限定して考えてみたい。
合格実績の見方は難しい
塾選びの一般的な観点としては、たとえば以下のようなポイントを列挙できる。
送迎も含めて通いやすいか
経済的に大丈夫か
講師のレベルが高いか(評判が良い講師がいるか)
生徒の質はどうか(問題のある生徒、迷惑な生徒がいないか)
個々の生徒に対する面倒見がよいか
保護者とのコミュニケーション(進路指導など)がしっかりしているか
子どもが気に入るか
では、合格実績についてはどうか? 塾によっては、ポスターなどで合格者数を大々的にアピールしているところもあるが、規模が大きくなれば(生徒数が多ければ)“延べ”合格者数が多くなるのは当たり前であって、全校舎(教室)合計かつ重複合格がベースの延べ合格者数は、塾を選ぶ側にとってさほど重要ではない。実際、各種のアンケートなどを見ても、塾選びの決め手に合格実績を挙げる経験者は少数派である。
「そうは言っても合格実績はとても気になる」ということであれば、「安打数」ではなく「打率」を見るべきだろう。我が子の第一志望校について、受験者数と合格者数、即ち「合格率」が分かれば理想的ではあるのだが、そうは問屋が卸さない。
校舎の実力を見抜け
「それではどうするか?」が一つめのテーマである。
規模と直接リンクする数字として、生徒数か、生徒数とほぼ比例するであろう売上金額を分母に、中学受験を例にとれば重複合格が僅かしか含まれない国立中・御三家中の総合格者数を分子にして比較するとよいだろう。上場企業かその連結子会社であれば、生徒数、校舎(教室)数、売上などは、決算短信を見れば分かる。早慶、MARCHでの比較では、校数を多く受けさせる方針の塾とそうでない塾があり、判断が難しい。
とは言え、規模の大小に関わらず、大事なのは全校舎(教室)の合算ではなく、我が子を通わせる校舎(教室)の実力である。入塾を決める前の面談の際に、第一志望校の例年の受験者数と合格者数を聞き出しておきたいところだ。同時に、教務責任者・担当者が、その学校の入試動向や入試問題の傾向などをよく知っているかどうかも確認しておきたい。
また、講師の質や在籍することになるクラスの生徒の質などは、体験授業を受けてみればだいたいつかめる。塾によっては、保護者を後ろのほうに座らせてくれるところもある。1~2科目でよいので、親も一緒に授業を受けてみると、担当講師のレベルや生徒の質、クラスの雰囲気など、いろいろと把握できるはずだ。
講師の種類もいろいろ
じつは、講師の顔触れという点では、塾は大きく3つのタイプに分かれる。
タイプA:講師は全員正社員(稀にベテランの嘱託はいる)
タイプB:講師は社会人のみ(大学院生を含む場合あり)
タイプC:大学生講師が多い(大学生を積極的に採用している)
あくまでも筆者の感覚値であるが、経験年数が1年半未満の講師は、大概まだ半人前である。これは社会人であろうと大学生であろうと同じである。また、大学生講師だからと言って、面倒見がよくないということもない。
ただ、大学生講師の場合、経験を積めば確実に実力がついてくるのであるが(そうでないと早晩辞めることになる)、社会人講師の中には、1週間あたりの授業回数が少ないなどで短期集中的に経験を積むことができず、2年経っても3年経ってもセミプロレベルのままということがある。とくに、会社勤めの副業で塾講師を始め、爾来細々と続けているという講師の中には、傍から見ていて自身の学力に対する向上心が感じられないこともある。
翻って、タイプA・B・Cの良し悪しであるが、どのタイプの塾の講師が優れているかは、一概には言えない。むしろ、同じ校舎(教室)内の講師間の差のほうが大きいのが実情だろう。であるが故に、体験授業を通して、各科目を実際に担当する講師を見極めることが重要になってくる。
ただ、担当講師は期ごとに変わることも少なくなく、講習会は別の講師が担当するということもある。従って、そこのところを敢えて判断するにはどうすればよいか? が二つめのテーマである。
講師の給料から見えてくる
一つの判断基準として、各塾の非常勤講師の時給を比べてみると興味深いかもしれない。この場合、各塾のWebサイトを見て回るのではなく、塾講師募集専門のサイトを二つほどで検索してみれば十分だろう。ただし、募集をしていないからといって、その塾をネガティブに判断するのは禁物である。
タイプAの塾はそもそも新卒・中途正社員の募集しかしておらず、タイプBの塾は応募資格欄に「大卒以上」とか「大学生不可(大学院生は可)」と明記している。タイプCの塾であれば「大学生・大学院生・大卒以上」などとあり、大学生と大学院生・社会人とでスタート時の最低時給を変えているところもある。
では、どの部分を比較すると参考になるのか?
大学生になって塾講師をやろうという場合、時給優先ではなく、自分が通っていた塾に応募することが多いため、あまり参考にならない。だが、社会人講師であれば(通いやすさ最優先ということも少なくないが)、非常勤といえども、より時給の高いところにより優秀な人材が集まるのは世の習いである。私見ではあるが、時給が高めの塾のほうが、講師間の実力差は小さそうだ。
具体的には、非常勤講師/大卒以上/中・高受験/集団指導に該当する“最低”時給を比較するとよい。おそらく、1800円から3000円までの幅があるはずだ。中には、スタート時給にかなりの幅を持たせているところもあるが、ミニマムプラス数百円と見なせばよいだろう。
同様に、中途正社員どうしを比較してみても面白いかもしれない。筆者が試してみたところ、月給22万円から35万円までの幅があった。特殊な例としては、小規模だが少人数精鋭で授業料が高めの塾の中には、月給が60万円以上というところもあった。
いずれにしても、通わせる校舎(教室)全体の実力(志望校合格率から講師の顔触れ・評判まで)をつかんだ上で判断したいところである。
【プロフィール】吉田克己(よしだ・かつみ)
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが教育に関する様々な情報を、日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、受験生予備軍をもつ家庭を応援する連載コラムです。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら。
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