膝の痛みで認知症も 「国民病」早めの受診を
「歩くときに違和感を覚える」「正座できない」-。日常生活でこのように感じる人も多いのではないだろうか。そんな膝の痛みのうち、「変形性膝関節症(膝OA)」の患者は40歳以上で推定2500万人を超えるというが、「年だから…」となかなか医療機関を受診しない人も少なくない。症状が悪化しうまく歩けなくなり、転倒による骨折などから介護が必要な状態になる恐れもあり、専門家は「適切な治療のために、早めの受診を」と呼びかけている。
自覚症状のない人を含めると、日本人の約5人に1人、40歳以上では約3人に1人が膝OAを抱えている-。こんなデータが東京大の吉村典子教授らによる調査で明らかになった。
厚生労働省が発表した国民健康・栄養調査報告(平成28年)では「現代の国民病」とされる糖尿病が疑われる成人の推計が初めて1千万人を超えたとされ、人数の上では、膝OAも「国民病」のひとつと言えるだろう。
しかし、こうした実態にもかかわらず、埼玉協同病院の桑沢綾乃関節治療センター副センター長は「膝に痛みを抱えたまま放置している人は多い」と指摘する。
◆「年だから」と諦め
膝OAは関節にある軟骨がすり減ったり、半月板の変形や摩耗で関節内に炎症が起きたりするほか、骨変形などによって、痛みが生じる疾病。桑沢副センター長によると、加齢や肥満、運動不足が主な原因とされ、「誰にでも起きる可能性がある」という。
その上で、桑沢副センター長は「発熱や頭痛と異なり、年齢だから、と諦めて、医療機関を受診しないケースが多い」と説明、「放置しても良くなることはない。すり減った軟骨や骨の変形は元に戻らず、症状が悪化する」と警鐘を鳴らす。
膝OAの治療には、湿布や装具を活用して、症状の進行を遅らせたり痛みを緩和させたりする「保存療法」や、人工膝関節置換術を始めとする「手術療法」がある。しかし、医療機関を受診しなければ、膝の状態を正確に把握できず、適切な治療にたどり着けない。重症化しているのに自己判断で保存療法を続け、結果として手術に踏み切らざるを得ないケースもある。
◆適切な治療のため
一方、東京医療保健大学の今泉一哉教授(人間科学)は、膝OAなどの運動器疾患と認知症との関連を指摘する。
認知症の入り口のひとつは、社会参加を抑制する要因となる「要介護状態」だと今泉教授。「痛みが出ている部位の可動域が狭まり、筋力が低下する。それに伴い移動能力も低下し、運動器疾患の重度化や転倒による骨折などにより、寝たきりや要介護となる恐れもある」と話し、結果的に認知症につながる可能性を懸念する。
桑沢副センター長によると、膝OAは長い時間をかけて徐々に進行するため、「ならないための予防」は難しい。ただ、早期発見で適切な治療を受ければ、健康寿命の延伸につながるという。
仮に重症化してしまっても、諦めるのではなく、手術療法や再生医療を受けることで痛みの大幅な改善が期待できることもある。しかし、放置し続けていると、膝の動きが悪くなり、周辺の筋肉が減ってしまう。このため、せっかく治療に踏み切ってもリハビリの効果に限界が生じることも。桑沢副センター長は「膝の状況をしっかり把握するため、まずは一度受診を」と呼びかけている。(手塚崇仁)
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