食パンで地球を救う!? 大阪の店が「SDGsパン」開発
食パンが地球を変える-。大阪市鶴見区のパン店が、食品ロスや二酸化炭素(CO2)削減といった地球規模の問題への関心を呼びかけるユニークな食パンを開発した。その名も、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)にちなんだ「SDGs食パン」。売り上げの一部が飢餓撲滅の寄付金にあてられるほか、従業員の働き方改革などの一助になると見込まれており、店は「社会の意識を変える食パンになれば」と期待を込めている。(桑村朋)
大阪メトロ横堤駅近くの「ダンクブロート」。店内は香ばしい匂いに包まれ、多種類のパンが並ぶ。店で毎月限定で予約販売されるのが、SDGs食パンだ。見た目は普通の食パンだが、「SDGsの理念をベースに作った特別なパン」と、店員の吉村貫(とおる)さん(36)が説明する。
「地元・鶴見区をSDGsに取り組む街にしたい」との夢を持つNPO法人「みらくる」(同区)の提案を受け、約2カ月かけて食パンを開発した。
売り手と買い手の満足に加え、社会貢献もするとの近江商人の経営哲学「三方よし」にちなみ、商品名は「三宝」に。1本売るごとに、別のNPO法人を通じ、途上国に給食1食分が寄付される仕組みだ。
さらに、パン店最大の悩みでもある「食品ロス」と「過重労働」について、三宝は完全予約販売で食品ロスをゼロに。販売数も毎月200本に限定、月1度の販売日は三宝だけを売ることで労働時間を抑制した。
また、国産の小麦を使うことで輸入時のCO2を削減。外国産より割高で、食パンに向かないとされる国産だが、「低温発酵ではちみつを加えることで、もっちり食感、しっとり味に仕上がった」と自信を持つ。
7月28日に初販売し、客からは「食べるだけで寄付できてよい」「味も間違いない」と評判も上々。「社会貢献したい思いはあったが、機会がなかった」という吉村さんは「SDGsの考えが全国に広がれば」と話している。
1本2斤で800円(税抜き)。電話か来店で予約を受け付け、第1月曜に手渡す。問い合わせは同店(06・6967・8904)。
■広がる取り組み
自然災害、気候変動といった地球規模の問題の解決には、経済優先の価値観から脱却した持続可能な社会の実現が不可欠として、国内でも「SDGs」に沿った取り組みが広がる。
来年の東京五輪・パラリンピックでは、メインコンセプトの一つに「持続可能性」を掲げ、「再生可能エネルギー電力を100%活用」「調達物品の99%のリユース・リサイクルを実施」などの目標を設定した。
東京大会では、約60万世帯分の年間排出量に相当するCO2が出るとの試算もある。環境への配慮は最大の課題で、組織委員会は「さまざまな問題解決のモデルを示したい」とする。
2025年の大阪・関西万博でも、目的の一つに「SDGsが達成される社会」がある。これに伴い、近畿経済産業局や国際協力機構(JICA)関西などが、「関西SDGsプラットフォーム」を設立。これまでに、790企業・団体が加盟し、取り組みを推進する。
電通が2月、全国の10~70代約6570人に行った調査では、SDGsの認知度は16・0%にとどまる一方、ボランティア活動の参加などを実践している人は60・4%に上った。電通は「この層へのPRを行うことで、浸透が期待できる」としている。
【用語解説】持続可能な開発目標(SDGs)
「Sustainable Development Goals」の略。「今のままでは地球がもたない」との危機感から2015年、国連で全会一致で採択された指針。「貧困根絶」や「気候変動」など地球規模の問題への具体的目標を定め、17の大きなゴールが設定された。30年までに世界全体での達成を目指している。
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