東京五輪の渋滞対策 交通量の削減へ高速料金変更も有望な手段
東京五輪・パラリンピックが開催される7月から9月は例年、首都高速道路の交通量、渋滞や事故の発生がピークとなる時期の一つである。これに、来年は選手や大会関係者などの輸送が加わることになる。
1日の利用台数は、最大で120万台を超えると見込まれる。7月の平日平均より10万台以上多くなる。全く削減されなければ、首都高の渋滞による損失時間は2倍近くになる恐れがある。
首都高は東名、中央、関越、東北などの高速道路とつながっており、首都高の渋滞がこれらに波及する可能性がある。このため、拠点を東京圏に置く物流や、東京圏を通過するような広域移動にも、大きな影響を想定する必要がある。
このような状況で大会関係者が円滑に移動し、同時に安定した都市活動を維持するため、首都高では前述の最大交通量から30%削減、東京圏全体の交通量も10%減の目標が設定されている。
達成されれば、首都高の交通量は休日の平均(約89万台)程度となる。渋滞はほとんど発生せず、渋滞に誘発されやすい事故も削減できて、大会関係の車両も円滑に運行できるだろう。
これまでに決定されている対策は、交通の発生そのものを減らす交通需要マネジメント(TDM)と、首都高への流入規制などである。
首都高での通常時の交通規制は、11の本線料金所での開放車線の削減と、臨海部にある選手村や競技会場に近接する4つの入り口の閉鎖程度にとどめられるだろう。
加えて、大会関係車両の運行が交通の集中や事故による渋滞の影響を受ける場合には、いわば「伝家の宝刀」として、効果が期待できる他の入り口も順次閉鎖される。
一方、TDMは官民一体で組織する「2020TDM推進プロジェクト」の自主的な取り組みが主となる。121団体2382社・事業所(8月末現在)の協力を得て、テレワークや物流の効率化などにより、企業や官庁活動に伴う発生削減を進めている。
一般の道路利用者には(1)公共交通を使う(2)2~3回に1回でも車の利用を控える(3)早朝や夜間にシフトする(4)都心を迂回(うかい)する-などの協力手段がある。
これらの対策の効果を事前評価するために、今年7月と8月にテストが実施された。7月中の5日間に関しては、交通規制をしなかった3日間の一般道路の交通量は前年比で約4%減少した。一部団体の先行的協力の結果としては、予想以上の効果があったといえる。ただ、同じ3日間の首都高の交通量は、ほとんど変化がなかった。
交通規制した2日間は、首都高の交通量が7%程度減少した。入り口を最大で40カ所以上閉鎖し調整したことが大きい。それでも選手村から競技会場までの所要時間は、一部の時間帯で長くなった。このままでは、もし事故が発生し渋滞した場合の対応がかなり難しくなることが懸念される。
首都高の交通量を削減すればするほど、使う人にとっては便利になる。この結果、一般道路から移る交通が増え、削減の効果を相殺することが交通シミュレーションでも予見されていた。
私は、大会関係者が使う時間帯には首都高料金を高くして転換を抑制し、逆に夜間や早朝の料金を下げて利用を促すことが、大会本番で有望な対策だと考える。
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【プロフィル】赤羽弘和
あかはね・ひろかず 千葉工業大教授。1958年長野県生まれ。東京大院修了、工学博士。95年から現職。専門は交通工学。東京五輪の渋滞対策をまとめる「交通輸送技術検討会」の副座長を務める。