【受験指導の現場から】子供は塾でどんな話をするのか 知りたがり女子と話したがり男子

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 夏休みが終わり、我が子を塾に通わせている生徒の親であれば、夏期講習会に通わせた甲斐があったのかどうか、どうしても気になってしまうという向きが多数派だろう。とくに、受験学年の夏はまさに正念場であり、7月上旬の模試から9月になって最初に受ける模試の結果がどう変化するか、結果次第ではなんらかの手を打つことも考えなければならず、親も講師も気が気でない。

 そこで今回は、次の模試の結果が出るまでの束の間ではあるが、従前とはがらりと目先を変えて、「生徒は塾で講師にどんな話をしているのか」について披瀝してみたい。もちろん、講師のキャラによって頻度も内容も随分と違ってくるため、あくまでも一例であることをあらかじめお断りしておくのであるが。

「知りたがり女子と話したがり男子」

 一般的な感覚では、女子生徒に比べて男子生徒は大人とはあまり話をしたがらないと思われるかもしれない。たしかに、こと勉強に関してはそのとおりなのであるが、プライベートなこととなると、意外や女子生徒はあれこれ聞いてくることはあっても、自分のことはあまり話さない。家庭や家族のことを話したがるのは、むしろ男子生徒のほうである。とくに小学生はその傾向が強い。いわば、「知りたがり女子と話したがり男子」といった感がある。(以下、小学生について。)

 初めて担当した小学3~5年生のクラスの場合、何度目かの授業ともなれば、活発な女子生徒が真っ先に根掘り葉掘り聞いてくる。「先生いくつ?」「結婚してるの?」「子供はいるの?」「どこに住んでるの?」といった、個人情報に関することである。

 たいがいははぐらかすのであるが、時にはある女子生徒の「先生いくつ?」という質問を皮切りに、他の女子生徒が「42くらいだと思う」とか、また別の女子生徒が「50はいってないと思う」などと、勝手にやり取りを始めることもある(この場合、「とうに50を超えてるけどね」と思いつつ、内心ニンマリしているのであるが)。

 また時には、他の講師の年齢を聞かれることもある。「○○先生って24歳ってほんとう?」などと聞かれたりすると、〈まだ、大学生なんだけどなぁ。本人が中途半端にごまかしたな〉と思いつつ、「さぁ、先生は知らないなぁ。30はいってなさそうだけどね」などといった具合だ。

 結局のところ、小学生にとっては、30歳を超えていれば総じてオジサン、オバサンであり、自分の親より年上か年下かという見方しかしない。つまり、30代も50代も生徒から見れば「先生」には変わりはないということである(塾講師の世界に年功序列はないということの裏返しでもある)。

家庭の“色”が濃くなる夏休み

 時節的なところでは、生徒が家庭内のことを話題するのは、通常の授業日よりも講習会の時のほうが頻繁である。学校へ通っている時期は、学校から自宅に帰るとほとんどすぐに塾へ向かうため、学校と塾との合い間に家族と密なコミュニケーションをすることはないが、講習会の時期は朝から夕方までが塾、夕方以降は自宅で家族と一緒という生活になるため、前日の晩に起こったことを翌日の朝一、塾に来るまで引き摺っていることがある。

 畢竟、講習会の朝一の授業が始まるタイミングは、なにか言いたくてしようがない生徒がちらほらいるため、授業の開始時間より10~15分程度早めに教室に入って、言いたいことを吐き出させ、気分を切り替えさせてから授業を始めるようにしたほうがよい日がある。でないと、出欠をとっている最中や直後に、何名もが勝手に話し掛けてくる状況に陥ってしまうことがある。

 たとえば、朝一の授業開始直前に、こんなことを言い出す生徒がいた。「昨日お父さんにテストを見せたら、『なんでこんな問題を間違うんだ!』って言って、灰皿を投げつけられました」と。どうやら、灰皿はその生徒のすぐ傍を壁に向かって飛んでいったらしいのであるが…。

 じつはこの生徒の父親、スポーツチームの監督をやっているけっこうな体育会系らしく、その生徒にとっては怖い母親でさえ、自分の意見を父親に納得させるのは難しい家庭であった。

「朝起きたらお父さんがいなくなっていた」

 あるいは別の日、たしか土曜日の朝一だったと記憶しているが、こんなことを話し出した男子生徒がいた。それ以前に、「昨日、お母さんに思いっきり蹴られた」と文句を口にしたことのある生徒である。

 「昨日の夜ね、お父さんとお母さんが喧嘩してね。でね、今朝起きたら、お父さんがいなくなってて…」と落ち込んでいる。どうやらお父さん、早朝、家族が寝ているうちに家を出ていってしまったらしい。〈この家は夫婦喧嘩をすると、父親のほうが出ていく家族なんだな、やはり〉などと思いつつ、と慰めるには慰めたのだが…。

 じつは、この生徒の両親は大学時代の同級生同士で、家庭内では母親のほうが強い。その生徒にとって母親は怖い存在であり、その代わり父親とは仲が良く、休日に父親と二人で出掛けた話をよく聞かされていた。化石好きな生徒で、訪ねた先で見つけてきたチャートをくれたこともある。

 実際のところ、親に関する文句や不満があると、普段からよく話す男子小学生は、けっこうあからさまに訴えてくる。なかには、朝一から自分の母親のことを、「あのクソババァ、なんたらかんたら」と独り言で罵っている生徒がいると思えば、「昨日お母さんと出掛けたら、一日じゅうテストの点数のことを言われ続けて…」と腐っている生徒がいたりと、小学生といえども、事程左様に、なかなかの人間模様なのである。

【プロフィール】吉田克己(よしだ・かつみ)

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「SankeiBiz」「ダイヤモンド・オンライン」で記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら