連日メディアで取り上げられ、何かと話題の「タピオカブーム」。ここ数年、本場・台湾の有名専門店が相次ぎ上陸。喫茶店のチェーンなどもタピオカティーを相次ぎ発売し、人気にあやかった派生商品や施設も登場している。大阪税関の統計によると、19年上期のタピオカの輸入量は前年同期比4.3倍の4471トンとなり、輸入額(約15億円)も含めて過去最高を更新した。
日本では以前にも何度かタピオカが人気となっており、今回のブームは一説には「第3次」と呼ばれる。ただ、流行の蚊帳の外にいる人からすれば、「どうしてこんなに人気なのか」「ブームはいつまで続くの?」などと疑問も少なくないだろう。
タピオカは主に若い女性の間で飲まれ、特に写真をInstagramに上げる「インスタ映え」がブームの一翼を担っているとされる。そこで、SNSマーケティングを手掛けるAIQ(東京・千代田)にInstagramの投稿のデータから、流行に至ったメカニズムや、実際にはどんな人がタピオカ写真を投稿しているのか分析してもらった。特に、SNS上では特にタピオカと「食い合わせ」が悪いとささやかれる「おじさん=中高年男性」層に着目した。
投稿数、1年で約5倍に
まず、ハッシュタグに「タピオカ」と付いたInstagramの投稿について18年7月から1年分をまとめたところ、7月には約4400万件投稿されていた。18年8月には約850万件だったのが、1月には約1860万件に倍増。その後は寒さの影響かやや横ばいになったものの、3月には再び増加率が急激に上昇している。
若干の停滞期間を越えて3月からタピオカブームが再加速した要因については「有名人の投稿など、複数の要因が重なったと想定される」(AIQの担当者)が、Instagram上のブーム形成で今回着目されるのが「派生ハッシュタグ」だという。
AIQの担当者によると、Instagramのユーザーははやりモノの写真を投稿する際、その物の名前をハッシュタグとして入れるだけでは画像が他のユーザーに気付かれにくく埋没してしまう恐れがあるため、もじって作った派生のハッシュタグを入れて差別化を図るという。タピオカの場合「タピる」「タピ活」「タピオカ巡り」などがある。
「派生ハッシュタグ」がブームを加速か
一見他愛もない工夫にも見えるが、「派生ハッシュタグが増加しているのはブームが過熱している証。逆に、Instagram上のブームを加速させるきっかけにもなる」(AIQの担当者)。実際、18年7月以降に出現してきた派生ハッシュタグは3~4月に急激に数が伸び、7月には「タピ活」は約489万件、「タピオカ巡り」も約446万件にまでふくれあがった。「話題が話題を呼ぶ」SNS独特のバズり方として機能している可能性がある。
ちなみに、7月~8月中旬の「タピオカ」やこうした派生ハッシュタグの投稿数を見ると、今のところは右肩上がりの傾向が続く。外的要因など読めない要素が多いものの、少なくともデータ上ではタピオカブームはまだ続きそうに見える。
では、このタピオカブームは「誰」が支えているのか。AIQが独自のInstagram分析ツール「AISIGHT」で、7月中旬~8月中旬の「#タピオカ」投稿のユーザー層について分析したところ、10~20代女性が約7割を占めた。一方、30~50代の男性はわずか2.1%。若年層も含めた男性全体でも約1割と、属性に激しい偏りが出た。
もともと女性のユーザー比率が高いとされるInstagramだが、最近では男性ユーザーの流入も進んでいる。ガイアックスが総務省やジャストシステムのデータから推計したInstagramの「主要SNSユーザー数データ」から計算すると、日本の10~60代のInstagramユーザーのうち30~50代男性の数は約26%となっている。
以前、Twitter上で「タピオカ専門店におじさんがいるのを批判する女性」の話が炎上したことがあったが、アクティブユーザーの傾向などを差し引いても、「インスタを利用する中高年男性は、タピオカに実際に無関心か敬遠している」と言えそうだ。
タピオカは果たして「裾野拡大」を迫られるのか
こうした支持層の偏りはタピオカブームにどのような影響を与えたのだろうか。いちよし経済研究所の主席研究員、鮫島誠一郎さんは「おじさんが参入しなかったのがむしろタピオカのブーム維持には良かった」とみる。「かわいい見た目といったインスタ映え、それに600円くらいの高校生くらいでも手の届く価格帯が、若い女性向けにタピオカが成功した理由」(鮫島さん)。
「うまい・安い」を優先しがちな上の世代の男性とは、そもそも食べ物に求める優先順位が違い、そういった中高年男性層は一度試しで買うことはあっても継続しにくい、とみる。
鮫島さんは「今冬を越えるかは分からないが、タピオカブームはしばらく続くだろう」と分析。「パンケーキブームがそうだったように、いずれ人気の店以外はブーム終焉で消えることはあるものの、ある程度は『定番化』するだろう」とみる。
ただ、ちょっと慎重な意見も無いわけではない。とある大手飲料メーカーの担当者は「タピオカのブームは今がピークではないか。うちでは普通、ある程度認知度の高いブランドに関しては、新コンセプトの商品発売やキャンペーンなどで間口の拡大に取り組むもの。(タピオカは)購入層に特に変化が無く、路面店もコンビニも若い女性客が中心のため、間口の拡大が課題だろう」と分析する。一過性のブームを仕掛けるだけでなく、定番ブランドとして売れる商品を打ち出したいメーカーとの戦略の違いもあるようだ。
結果的に「10~20代女性」という狭いターゲティングで一定のブームを形成してきたと言えそうなタピオカ。供給側が女性客に飽きられずにこのスタンスをどこまで維持できるか、もしくは「裾野の拡大」に舵を切るのか、注目される。(服部良祐)(ITmedia)