輝く「じいじ」と「ばあば」 愛知県の旧足助町
人口減少時代のまちづくりをどう進めるべきか-。愛知県の旧足助町(現在は豊田市)は、その先進地域として知られている。観光と高齢者雇用、そして福祉が共存する複合拠点を整えたのは30年前。地域の高齢化率は40%を超えたが、70歳を超えた人が今も、現役で数多く働いている。
■ハム工房やパン屋さん・レストラン…観光軸に高齢者雇用
中部地方の紅葉の名所「香嵐渓(こうらんけい)」のほど近く。観光と福祉の複合拠点「百年草」がある。アユ釣りの名所の足助川に面したホテルにはフレンチレストランがあり、豊田市社会福祉協議会が運営する介護事業所「百年草デイサービスセンター」が共存する。介護保険のケアプランを作る「居宅介護支援事業所」や、訪問介護を行う「ヘルパーステーション」、じいじ(爺)がハムやベーコンをつくる「ZiZi(じじ)工房」、ばあば(婆)がパンを焼く「バーバラはうす」も隣接する。
「百年草」は旧足助町が平成2年につくった。命名には「誰もが雑草のように100歳まで生きよう」との願いが込められた。今も60人以上いるスタッフの半数が60代、70代だ。
「あきらさん」「はるやん」「みえちゃん」
60、70代の仲間たちは名前で呼び合う間柄だ。河合朗(あきら)さん(71)はトヨタ系の会社を引退後、週2、3日、「ZiZi工房」に通う。「同世代の仲間と、孫や近所のことなど、どうでもいいことを話すのが楽しい」という。
管理する三州足助公社の岡村達司事業部長は、創設の目的について、「単なる福祉センターを作るのではなく、色々な人が出入りし、高齢者が働ける場を併せて作ろうとしたと聞いています」と説明する。根底には逆転の発想もある。レストランでは名物の川魚料理ではなくフレンチを出す。工房でハムやベーコンを作ったのは、町内に養豚事業者がおらず、地元産業を阻害せずに済むからだ。
加藤美恵子さん(70)もトヨタ系の会社で定年まで働いた。「家にいたら化粧もしないが、働きに出れば、仲間と『今度、ランチに行こう』という話もできる。レジでお客さんから『ペイペイでお願いします』と言われ、慣れない手順にドキドキするのも、いい刺激です」と軽やかだ。
豊田市によると、百年草が創設されたころの足助町の高齢化率は19・64%。現在の全国平均の28・4%に比べても低かった。だが、当時約1万1千人いた人口は今年8月時点で約8千人に減少、高齢化率は40・54%と深刻さを増している。
「バーバラはうす」で働く河合孝子さん(69)は「私の集落は今は5世帯だけ。空き家の方が多く夫以外の人に会う機会がない。働けるだけでありがたい」と言う。
ただ、企業が定年後の再雇用に踏み出すなかで、高齢者雇用は困難になり、百年草の75歳定年も見直しを迫られている。
岡村部長は「現金はゲンキの源。今後については課題が多いが、経験を積んだ高齢者は貴重な戦力。80歳過ぎまで、少しでも現金収入があれば素晴らしいと思う」と話している。
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