神戸のスーパー銭湯が熱い 漫画読み放題やジム併設
夏の暑さも一段落し、湯船につかりたい季節がやってきた。関西の奥座敷・有馬温泉や文豪も愛した城崎温泉で知られる兵庫県では、スーパー銭湯が活況を呈している。6月に発表されたインターネット温泉情報サイト「ニフティ温泉」の「この夏行きたい!スーパー銭湯ランキング2019」では、西日本5626施設のうち、兵庫は近畿最多の4施設がベスト10にランクイン。秋の行楽シーズンを前に、記者が独断で選んだ神戸市内の「いい湯」を紹介する。(尾崎豪一)
2位・太閤の湯
2位にランクインした「太閤の湯」(神戸市北区)は、豊臣秀吉が有馬温泉に造らせた「湯山御殿」の岩風呂遺構を再現するなどし、平成17年にオープンした。遺構が411年ぶりに発見されたことにちなみ、開業日は4月11日だった。
遺構を同じ寸法で再現した「太閤の岩風呂」のほか、有馬温泉の源泉として知られる「金泉」(含鉄強塩泉)や「銀泉」(ラジウム泉)、炭酸泉など26種類もの豊富な温泉と、岩盤浴などが魅力。蒸し風呂では、金泉、銀泉の双方を使ったぜいたくなミストも楽しむことができる。
もともとは高齢者をターゲットにした温泉レジャー施設だったが、若者の集客も視野に温泉にこだわった「温泉テーマパーク」に改装し、繁盛するようになったという。施設を運営する有馬ビューホテルの木元寿部長は「ここにしかない温泉や施設を目指している」と強調。「あらゆる温泉の濃度が濃い。本物の温泉の濃さを楽しみに来ていただければ」と語る。
3位・神戸みなと温泉 蓮
神戸の繁華街・三宮から歩いていける「神戸みなと温泉 蓮」(神戸市中央区)は、3位にランクインした。平成27年12月のオープンで、健康へのこだわりが大きな特徴だ。
フィットネスジムやプールが併設され、専門のスタッフによる健康増進のためのカウンセリングルームも設置。医師が作成・監修した「温泉利用プログラム」も使える。全国に二十数カ所しかない厚生労働省認定の「温泉利用型健康増進施設」にも選ばれた。
地下1150メートルからわき出た天然温泉を使用し、源泉の温度は37・3度と低めだ。泉質は「美人の湯」といわれるナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉。「大人向け施設」だけあって、屋内の浴場は黒色を基調としたシックなつくりで、落ち着いた雰囲気が楽しめる。
施設をよく利用するという神戸市東灘区のパート、田中瑞希さん(28)は「ぬるめで長時間入れる。他に比べてゆったりと時間が流れるのがいい」と笑顔で語っていた。
10位・万葉倶楽部
神戸・ハーバーランドにある「神戸ハーバーランド温泉 万葉倶楽部」(神戸市中央区)は10位に入った。
JR神戸駅から地下道を通って徒歩3分。24時間営業で「スーパー銭湯の枠を超えて1日楽しんでもらえる施設」をコンセプトにしている。映画の上映や音楽パフォーマンスなどを行うイベントホールを備え、約1万冊の漫画本は読み放題。アーケードゲームを楽しむスペースも充実させた。
利用客の滞在時間は、通常のスーパー銭湯が1~3時間程度なのに対し、平均5時間程度。池田将美マネジャーは「長くゆっくりと過ごしていただける」と自信をみせる。
湯は、兵庫県三木市の源泉「さとわき湧玉の湯」を毎日タンクローリーで運んでくる。肌への当たりがやさしい良質な湯という。
また、建物最上階の展望フロアには、神戸ポートタワーや六甲山系の絶景を望む足湯「展望足湯庭園」を設置。家族連れやカップルを中心に人気を集めている。
28位(記者のイチオシ)・月の湯舟
明石海峡を見下ろす神戸市垂水区の高台の住宅街「ジェームス山」に、一部ガラス張りで美術館をほうふつさせる外観のスーパー銭湯「ジェームス山天然温泉 月の湯舟」(28位、平成15年開業)がある。露天風呂の泉質はユニークな3種類がそろい、個人的には「イチオシ」の施設だ。
まずは、地下約千メートルからくみ上げられ、炭酸カルシウムが豊富な天然温泉「望の湯」。関西では珍しい乳白色の天然温泉で、「月の湯舟」という名の通り、美しい月夜を満喫できる。
「朔(さく)の湯」も人気が高い。高台にありながら、天然海水を沸かした「天然海洋泉」を楽しめる。近くの塩屋海岸の海水を利用しているが、濾過(ろか)しているためべたつきもない。
ぬるめの湯温で夏場を中心に利用が多い寝風呂「寝待の湯」は源泉掛け流しの湯。枕には香り高い檜材を利用している。
近くに住む会社員、植村拓郎さん(23)は「外観がおしゃれ。人でごった返すこともなく、気軽に楽しめる」と太鼓判を押す。
バスクリン広報に聞く「入浴効果」
シャワーを浴びるだけで浴槽には入らない-。そんな人も少なくないだろうが、カラスの行水だと健康面でもったいないという。入浴剤大手「バスクリン」の高橋正和・広報リーダーに、入浴の効果を聞いた。
--入浴の効果は
「まずは『温熱作用』。お湯につかると体は温まります。血流が良くなり、体内の老廃物や疲労物質の除去、コリがほぐれ疲れが取れます。内臓の働きを助け、自律神経をコントロールする作用もあります」
--それだけではない?
「2つ目が『水圧作用』です。風呂で水圧を受けるとウエストが3~6センチも細くなる。足にたまった血液が押し戻されて心臓の働きが活発になり、血液の循環を促進します」
--まだあるのか
「3つ目が『浮力作用』。風呂につかると体重は9分の1程度になります。体重を支える筋肉や関節はその役割から開放され、身体の負担を軽減します。スーパー銭湯や温泉は浴槽も大きいので、浮力作用を感じながら入浴することで、よりリラックスしていただけます」
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【プロフィル】尾崎豪一(おざき・こういち) 平成28年入社。和歌山支局を経て、今年5月から神戸総局で兵庫県政を担当している。和歌山時代には、紀伊半島を縦断し、山中の秘湯・龍神温泉や洞窟温泉で知られる南紀勝浦温泉を満喫した。神戸に来てからは、近場で良質な湯を楽しめることもあり、すっかりスーパー銭湯にはまっている。
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