【受験指導の現場から】合格に導く「過去問フォーメーション」とは? 受験生のやる気も尻上がり
本稿が掲載される10月初旬ともなれば、夏期講習会の成果を測る9月の模試の結果を受けて、冬期講習までのあいだ、子どもにどういう時間の使わせ方をさせるのがベストなのか、受験生の親ともなれば思案せずにはいられないだろう。
塾の特別コース(日曜特訓、志望校別講座など)に参加させるべきか、むしろ家庭教師を一人付けるほうがよいのか、他の習い事を中断すべきなのか…。
なかでも悩ましいのが、塾の授業・宿題と並行して、過去問にどう取り組ませるかであろう。この時期、通わせている塾からも過去問の進め方について、ガイダンスされているはずだ。
志望校が、御三家をはじめとする最難関レベルであれば、ほとんどの大手塾が志望校別対策講座を設置しているため、それを過去問対策に代えるという考え方もできそうだが、学校特化型のコースが見当たらない早慶の一部やMARCHクラスが志望校の場合、どういう取り組み方をするとよいのか? これが今回のテーマである。
プラスにもマイナスにも作用する過去問
まず、過去問を解くという勉強法は、とくに小学生にとっては、じつは両刃の剣であるという点を指摘しておきたい。
塾から言われたとおりのペースで解答し、答え合わせをし、点数を出して、「はい、1年分終了!」…を繰り返しても、出題の傾向を掴む程度で終わってしまう。とくに、点数が合格者平均点にまるで届かないなら、子どもに却って諦めの気持ちが生じてしまい、メンタル面のマイナスは大きい。
ではどうするか? 先に簡単に言ってしまうと、「この学校、いけるかも?!」という気持ちにさせるような取り組ませ方、サポートの仕方ができるかどうかに懸かっている。
よく、受験をマラソンにたとえる向きがおられるが、マラソンと受験とでは、決定的に異なる点がある。マラソンは決められた距離をより速く走る競争だが、受験は決められた時間でより遠くまで走る競争である。ゴール地点が分かっていて、そこまで到達したら終了、順位は走っている最中から分かっている、というのと、決められた時間(ときに単独で)走り続けて、最後の最後で誰々が上位入賞者なのかが分かる、というのとでは、後者のほうがメンタルを維持するのはきつい。
過去問の取り組み方というのは、そのメンタルに、プラスにもマイナスにも大きく働く可能性がある、という点で両刃の剣なのである。
過去問の効果的な進め方 やる気も最高潮に
では、具体的にはどのような進め方をすればよいのか? 小6の私立受験生を例に、あくまでも一例であることをお断りした上で、筆を進めさせてもらう。
【1】科目別に、制限時間内で解く(本人)
【2】答え合わせをして、点数を出す(本人)
【3】合格者平均点との差を確認する(本人+講師 or 親)
【4】解答用紙を見ながら、ときに問題も見ながら、「ケアレスミスしている」「題意を勘違いしている」「もう少しで正解できそう」「この小問は正解したい」「解き直せばできるようになるはず」といった、惜しかった、手の届きそうな小問を、合格者平均点との差+α分ピックアップする(講師 or 親)
【5】ピックアップした小問が、もし正解できていたら何点になるかを確認する(講師 or 親)
【6】同時に、「難しすぎる」「解くのに時間が掛かりすぎる」「二度と出題されないと考えられる」など、捨て問としてよい問題も特定する(講師 or 親)
【7】【4】【5】【6】の結果を両者で共有する(本人+講師 or 親)
【8】【4】の問題を解き直す(本人)
※このとき、解答を読ませてから、講師がヒントを与えてから、参考書を見ながらなど、本人の実力に合った方法を採る
【9】解き直した問題の答え合わせをし、【2】)と合わせると合格者平均点を超えることを確認する(本人+親)
塾によっては過去問の進捗状況をチェックしてくれるが、やっているかやっていないかしか見ていないようであれば、その続きをどうするかが課題になってくる。【4】~【7】までやってくれているようなら、【8】の解き直しをしているかどうかだけ、後日チェックすれば済む。
受験生本人に強く意識させるべきこと
じつは、考えてみれば当たり前なのであるが、合格者平均点を取れなければ合格できない、ということはない。倍率2倍であれば、受験者平均点で合格するし、倍率3倍であれば、得点分布の具合(平均点と中央値のずれなど)によるが、受験者平均点と合格者平均点の真ん中よりも少し上が合格ラインとなる。
しかしながら、受験生本人に強く意識させるべきは、あくまでも明示的な合格者平均点である。本人に「あと、これとこれとこれができていれば、合格者平均点を超えたんだ」「あと○問、取れるようになれば合格できるんだ」という実感を持たせることができれば、滑り出しは上々と言える。その上で、複数年度分を進めていく中で、合格者平均点との差が縮まってくればしめたもので、本人のやる気も膨らんでくるはずだ。
私見ではあるが、この時期、成績がふるわないからと言って、あるいは夏期講習前に比べて偏差値が下がってしまったからと言って、集団授業を追加して時間をぎりぎりまで埋めてしまうのは愚策である。受け身の時間をいくら増やしたところで、質は上がらない。それこそ、過去問は一度解いて採点しておしまい、本人ともども自信をなくすだけ、という状況に陥りかねない。
過去問は取り組み方が肝心
筆者の経験では、過去問の取り組みを上手に回すことで、本人に合格ラインとの距離感が生まれやる気も回復、あるいはそれまでの最高レベルとなって11~12月にぐっと得点力が伸びた、という生徒は少なくない。とくに、二番手クラスの上位にいる男子はこの傾向が出やすかった。
今の時期、冬期講習までの期間の時間の使わせ方に迷いがあるようなら、真っ先に過去問フォーメーションを固めるのが妙策、という可能性を考えたいところだ。
【プロフィール】吉田克己(よしだ・かつみ)
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら。
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