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中国・「ナイトタイムエコノミー」で消費喚起 各都市が若年層取り込み

中国新聞

 中国の多くの都市が「ナイトライフ」を発展させる措置を公布し、「夜の経済活動(ナイトタイムエコノミー)」の振興に取り組んでいる。経済成長の原動力となった消費を後押しすることが期待され、その主な担い手は1980年代以降に生まれた世代だ。

 夜の首都「夜京城」

 北京市は先ごろ、13項目の措置を公布し、夜間の消費を促進する「夜京城(夜の首都)」を打ち出した。ショッピングで知られる前門大街や中国国際貿易センターなどを「夜京城」のランドマークに位置付け、飲食店で知られる●(き、●=竹かんむりに根のつくり、下に皿)街やショッピングモールの世貿天階などを夜の商業圏にするほか、回竜観や天通苑などのエリアを「夜京城」の生活圏にする取り組みを進める。

 また、国家4A級の観光地と図書館の開館時間を延長する。午後6時から翌朝6時までの経済活動を指すナイトタイムエコノミーは、都市の新たな潮流となっている。

 天津市では海と河の沿岸をナイトタイムエコノミーの地区として打ち出す。広東省広州市はナイトライフの集積地を構築すると発表した。

 現在、消費は中国の経済成長を牽引(けんいん)する最大の原動力となっている。複雑な国際貿易の情勢下で、個人消費の持つ潜在力の掘り起こしが中国経済にとって重要であることは言うまでもない。

 美団研究院が発表した2018年の消費データでは、午後8時以降にビジネス地区で出前を頼む若者は1400万人。中国の観光産業研究機関、中国観光研究院によると、夜間の観光消費では「80後(1980年代生まれ)」が40%、「90後(90年代生まれ)」が19.8%を占めている。

 中国政策科学研究会経済政策委員会の徐洪才・副主任は「中国の国民総所得は平均が1万ドル(約108万円)に近づき、中所得国の平均を上回る。質の高い夜間の消費に対する需要は着実に増加している。ナイトタイムエコノミーの発展は消費需要を拡大する有効な方法だ」と話す。

 今回、各都市で進む夜間経済の振興は飲食にとどまらず、「食、観光、ショッピング、娯楽、スポーツ、展覧、観劇」を含む総合的なプロジェクトで、北京市が打ち出した夜の頤(い)和園観光や、上海市の黄浦江、重慶市の長江と嘉陵江のナイトクルーズ、陝西省西安市の商業地区「大唐不夜城」など、多くの都市の取り組みはいずれも好評を得ている。

 騒音対策など急務

 一方で、飲食以外のコンテンツ拡充や公共交通機関の確保には、騒音や飲食業による油煙などの問題を早急に解決する必要がある。

 国務院(内閣)発展研究センター資源・環境政策研究所の李佐軍・副所長は「夜間の経済が発展すれば、都市交通、環境、安全面などでの管理と責任がより必要となる。これまで通りの都市管理では、ナイトタイムエコノミーの発展に伴う需要を満たすことは難しい」と指摘する。

 北京市では市、区、街(郷鎮)の行政レベルで、「掌灯人(灯火を手にする人)」と名付けた組織を設立し、夜間の経済活動を統括的に推進する。深夜バスを約100本運行し、地下鉄の運行時間を延長するなど、夜間の公共交通機関を確保する。また、巡回ポイントの調整と夜間パトロールの強化で安全確保のレベル向上を図るとしている。(中国新聞社)