航空法、道交法、規制法、条例… ドローン飛行、ルール守って
手軽に空撮が行えることから愛好家を増やしているドローン(小型無人機)。東京五輪・パラリンピックに向けて警察の警戒が強まる中、法律などで定められたルールを無視した違法飛行の摘発が相次いでいる。不用意な飛行による事故やトラブルを防ぐためにもルールを十分に理解しておきたい。(玉崎栄次)
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警視庁は8月末までに航空法違反容疑で21件の違法飛行を摘発。5月に書類送検された60代の男性会社員のケースでは、東京都足立区上空を無許可で飛行させていたドローン(重さ800グラム)が福祉施設の敷地に墜落しており、けが人はなかったが、「人にぶつかれば大けがをするところだった」(施設関係者)。男性は空撮が趣味で、同庁の調べに「住宅街で飛ばしてはいけないことは知っていた」と話したという。
重さ200グラム以上のドローンは航空法で規制される。空港周辺▽150メートル以上の上空▽人家の密集地域-は無許可での飛行が禁じられており、3つの条件を踏まえると「都内で無許可飛行できる場所はほとんどない」(警視庁幹部)。
許可を受けた上で飛ばしたい場合は、事前に国土交通省に飛行目的や計画を届け出ることになるが、日中の飛行▽目視の範囲内▽人や建物などから30メートル以上離す-など航空法で定められた10項目の飛行方法の順守が条件となる。
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さらに飛行場所に応じてさまざまな注意点がある。ドローン関連の法令などに詳しいドローンパイロット、早川晋平さんによると、他人の敷地上で飛行させる場合、民法の所有権が関わってくるといい、「土地の所有権は上空300メートルまで及ぶとされるため、所有者に無断で飛行させると所有権の侵害などのトラブルに発展しかねないリスクがある」と指摘する。
国交省は航空法に基づき第三者の頭上を飛ぶことを禁じている。道路上空を飛ばす場合は、落下に備えて警察署から道路交通法の道路使用許可を受けた上で立ち入りなどを規制する必要がある。
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皇居や首相官邸、原発などの重要施設はその周囲約300メートルを含め、ドローン規制法で飛行が禁止されている。ドローン規制法は航空法と異なり、重さに関係なく全ての機体が対象だ。
公園や観光地では自治体が条例などで規制し、違反者に過料や罰金を科す場合もあるので確認が必要だ。東京都は独自ルールを定め、全82カ所の都立公園・庭園で飛行を禁じており、「国の許可があっても、防災訓練時など公的目的以外は届け出を受けても都は許可していない」(都公園課)。
鳥取砂丘を管理する鳥取県は条例に基づくガイドラインを設け、届け出をすれば砂丘での飛行を容認。一方、富山県立自然公園では同県が条例で禁じており、違反者には30万円以下の罰金が科されるなど、自治体ごとに対応はまちまちだ。
早川さんは「飛行計画を立てる際には、場所ごとに入念に規制の詳細を確認する必要がある。ドローンが便利な道具として社会に受け入れられるためにもルール厳守を徹底しなければならない」と話している。
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■外国人旅行者への周知急務 警視庁が動画配信
外国人旅行客らが趣味や遊び目的で無許可のドローンを飛ばすケースが目立っている。東京23区では、警視庁の摘発や注意を受けた外国人の多くが「規制を知らなかった」と釈明しており、ルールの周知が東京五輪・パラリンピックに向けた課題となっている。
警視庁は9月、動画投稿サイト「ユーチューブ」に動画「NO Drones!(ノー ドローンズ)」を公開。英語と日本語による40秒間の動画で、東京都内ではほぼ全ての地域で無許可で飛ばすことができないことを説明している。
同様のメッセージを伝える英語のポスターを空港や観光スポットに掲示しているほか、英語や中国語など数カ国語でリーフレットも製作して外国人旅行客に配布を進めている。
開催中のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会や東京五輪では、それぞれの大会特別措置法で競技会場周辺をドローン規制法の対象空域に指定した。
東京五輪では撮影用など正規のドローンが飛ぶことも想定されており、警視庁幹部は「違法なドローンを排除するために外国人への規制の周知を急ぐ必要がある」と話している。
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