今回の【乗るログ】は台風19号が接近する神奈川県の大磯ロングビーチで行われたレクサスのオールラインアップ試乗会から、今夏以降に改良が加えられたフラッグシップセダン「LS」、ラグジュアリークーペ「LC」、中型SUV「RX」にフォーカスする。タイプの異なるクルマを一気に乗り比べる中で、改めて「レクサスらしさとは何か」を考えてみた。(文・大竹信生/SankeiBiz編集部 撮影協力・レクサスインターナショナル)
今回筆者が運転したのはLS、LC、そしてRXの2列シート仕様と3列シートのロングバージョンの計4台。試乗コースはプリンスホテルを拠点に箱根ターンパイクや中井町を往復する2本の異なるルートで、4車種を乗り換えながら試乗した。
「アグレッシブすぎた」RXがマイチェン
中型SUVのRXは2015年秋に現行の4代目がデビューし、今年8月にマイナーチェンジが施された。一見分かりづらいかもしれないが、外観はヘッドランプやスピンドルグリルの形状の見直しなど、かなり改良が加えられている。
実は現行モデルのダイナミックな見た目が、一部ユーザーから不評だったという。特にアメリカの従来ユーザーから「アグレッシブすぎる」との声が多かったといい、派手好きの中国ユーザーや、“ちょい派手”を好む日本ユーザーの声にも耳を傾けながら、よりマイルドな雰囲気を与えたのだという。
筆者は5月27日にメディア関係者として最初に実車を見させてもらったのだが、この時にエクステリアデザインの責任者・佐藤一寛氏が語っていたポイントは「デザイン変更を感じさせない改良」だった。言い方を変えれば「こっそりイジって印象を変えた」ということだ。もともとのデザインも好きではあったが、結果的にキレイさっぱりとしたことで「受け入れやすい爽やかさ」を手に入れたのではないだろうか。
今回の試乗車は2列シート仕様の「RX450h」で、スポーティーな走り味に仕上げた「F SPORT」グレードのAWD車だ。動力は262PS/6000rpm、335Nm/4600rpmを絞り出す3.5リッターV6エンジンに2基のモーターという仕様で、167PS/335Nmを発揮するフロントモーターはエンジンに加勢し、68PS/139Nmのリヤモーターは後輪の駆動に用いられる。
これまでに何度かRXのハンドルを握っているが、走りは相変わらずダイナミック。発進時はHVならではの静かさやスムーズさが際立ち、街乗りでは落ち着きのある立ち振る舞いを見せるが、ひとたびアクセルを踏み込めば2130kgの車重を感じさせないパワフルな加速を披露する。今回のマイチェンでハブベアリングの剛性を高めるなど足回りも見直しており、ハンドル操作に対して極めて自然な動きを見せる。対地200mmというクリアランスの高さを感じさせない安定性には目を見張るものがあった。約1.9mのワイドな全幅に神経を使う場面もあったが、それを除けば運転中のストレスは特に感じなかった。「乗用車の居住性と走行性能」「SUVの走破性や見晴らしの良さ」といったジャンル別の利点を融合させたクロスオーバーSUVに、一歩上を行く動力性能・質感・安心感など「ラグジュアリー」の要素を見事に付加させている。常に「余裕・安心感」という感覚を享受できることが、RXに対する個人的な価値の高さだ。
3列目シートをテコ入れ RX450hL
次に紹介する「RX450hL」は、2017年12月に発売された3列シートのロング仕様。文字通りボディサイズはこちらの方が一回り大きいが、パワートレーンは2列仕様の「450h」と同じユニットを共有している。
外寸は全長5000mm(2列モデル比+110mm)×全幅1895mm(+0mm)×全高1725mm(+15mm)。車内は室内長2630mm(+535mm)×室内幅1590mm(+0mm)×室内高1200(+0mm)といったサイズ感だ。2列シートのSUVに目が慣れているためか、初めはルームミラー越しに見る3列目シートの存在にやや違和感を覚えた。
3列仕様のRXを運転するのは初めてだったが、2列モデルと比べてドライブフィールはやや“鈍重”といった印象。車体の奥行きにはすぐに慣れるのだが、加速・減速・旋回、さらには上り・下りといった場面で“重さ”を意識することが多かった。2列モデルは軽量グレードの「F SPORT」だったこともあってか、車重が+110kgともなれば余計に目立つ。
試乗車は7人乗りだったが、2列目に2脚のキャプテンシート(独立座席)を採用した6人乗りモデルも導入した。さらに今回のマイチェンの目玉は、3列目シートを2ポジションの可動式としたことだ。実はこの3列シート仕様、売れ行きは著しくないという。そのテコ入れとして、大人でも座れるようにシートポジションを95mm後方に、22mm下方に動かせるようにしたのだ。RX開発担当者の中野聡氏に聞いたところ、「通常のマイチェンではここまでやりませんが、国内ユーザーの声を反映して、思い切って2ポジション化しました」とのことで、その言葉からは販促に懸ける必死さが伝わってきた。
そんな彼らの努力を踏みにじるつもりはないが、筆者ならよほど3列目を必要としない限り2列シート仕様を選ぶだろう。走り味はもちろんだが、補助的なシートとはいえ実際に座った感想として「3列目に座る人はあまりくつろげないだろう…」などと考えてしまった。ラグジュアリーカーに乗るなら、何かを我慢したくはないだろう。
LSのハンドリングに見た意外性
現在5代目の最高級セダンLSで筆者が最も驚いたのが、ハンドルを切った時の“無抵抗感”だった。これを「手応えがない」「軽い」と形容するのが正しいのか分からず、ほかに適切な言葉が見当たらないのだが、とにかくハンドルの先に何もつながっていないような何とも不思議な感覚。ロールス・ロイスやBMW、キャデラックの上級モデルでは味わったことのない未経験のフィーリングだ。そして全長5235mm×全幅1900mm×全高1460mmの大きな体躯を誇りながらもスイスイと気持ちよく曲がるのだ。
試乗車は299PS/356Nmを発揮する3.5リッターV6エンジンに、1基のモーター(180PS/300Nm)が組み合わされたHVの「LS500h」。グレードは最上位の「EXECUTIVE」、駆動はAWDで価格は1700万円超だ。
ステアリングフィールのほかに意外だったのが、アクセルをグッと踏み込んだ時のエンジン音の存在だった。ロードノイズなど一切の雑音を排除した高い静粛性を誇るキャビン内に、意図的に聞かせるかのように力強いエンジン音が響くのだ。ドライブモードを「SPORT S+」に入れれば、それはもう大排気量スポーツカーのように「ブロロロ…」と野太く咆哮する。
それでも、10月の改良では駆動力を増加することで、低中速度域における静粛性を高めているという。具体的にはアクセル開度40%時の蹴り出しトルクを170Nmほど増強。それに伴い0-60km/hに加速した際のエンジンの最高回転数を従来モデル比で約500回転下げることで、静粛性の改善につなげている。
内装はどこを触っても質感の高さが指先から伝わってくる。これぞ至極のラグジュアリー空間。ドアトリムに配した江戸切子のオーナメントが1枚100万円すると聞いて仰天してしまった。運転手付きのショーファードリブンとしてもニーズの高いLS。機会があれば数日借り出して、後席の快適性などみっちりレポートしたいと思う。
LCの走りが「滑らか」に進化
最後はクーペのLCだ。試乗車は電動化の流れに逆行する自然吸気(NA)5リッターV8エンジンを搭載する大排気量ガソリンモデル。最高出力477PS/7100rpm、最大トルク540Nm/4800rpmという超ハイスペックマシンだ。LCもサーキット走行を含めて何度か試乗しているが、その高性能に加え、ほぼ同等のパワーユニットを搭載するスポーツクーペ「RC F」とは雰囲気の異なるエレガントで艶やかなスタイリングに毎度のこと気持ちが高ぶる。
鋭いレスポンスやNAらしい伸び感など、スポーツカーらしい味付けは相変わらずエキサイティング。少し踏んだだけで一気に景色の流れ方が変わるほどシャープに反応する。ジャンルが違うので当たり前なのだが、アクセルやブレーキの反応具合、居住性やヒップポイントの位置など、RXやLSとは特性が全く異なる。
前回のLC試乗はマイチェンが施される前だった。今回、箱根のワインディングで強烈に印象に残ったのが、さらに磨きのかかった走り味、とりわけ自在なコーナリング性能だった。全くざらつきがないステアリングフィール、操作に対する胸のすく素直な振る舞い。ステアリングシャフトから伝わる振動は明らかに減っている。そして、とにかくノーズの入りがいい。
試乗後、運動性能の検証を担当するLEXUS-TAKUMIの伊藤好章氏に「ハンドルを切った時のスムーズ感や、ハンドルからくる振動やザラザラ感が減りましたよね? シルクの上をなぞるように抵抗がない感じですね」と尋ねると、「ハンドルも動きもスムーズになりました。ステアリングサポートを鉄製からアルミに変えたことで、路面から伝わるザラザラ感がかなり遮断されるんです」とのことだった。小改良のレベルでもしっかりと進化の様子が伝わってくるのだ。
4車種を一気に乗り比べてみた結果、ジャンルが異なる中にもいくつか共通しているポイントがあった。これまでにもレクサスは「品質・乗り心地・静粛性」において高く評価されてきたが、最近のラインアップにはすべての車種に共通する“新たな付加価値”が与えられているように感じた。
それらは《軽やかなステアリングフィール》《余裕を感じさせる先進の走行性能と安全性》《デザインに見るブランドの統一性(=グリル形状やL字モチーフの灯火類)》《運転のしやすさ》だ。とくに《運転のしやすさ》については「肩肘張らず自然体で運転できる高級車」であると感じた。それは、挙動を把握しやすいドライブフィールであったり、初めて乗っても直感的に分かりやすい操作性やスイッチ類の配置の良さだ。もちろんすっきりとしたハンドリングや余裕のある動力性能も《運転のしやすさ》に直結しているだろう。これが最近のモデルに共通する新たな「レクサスらしさ」なのだろうと勝手に解釈した。
【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら