ホットライン「男の悩みトップ10」 性別問わず弱音吐ける社会に
男だって悩みがある。人に相談にも乗ってもらいたい。そんな男性たちに24年にわたって寄り添い活動してきた電話相談窓口がある。臨床心理士をはじめとしたボランティアによる「『男』悩みのホットライン」だ。仕事や家庭、性など、「男なら我慢すべきだ」「男なら弱音を吐いてはいけない」といった「男性像」との向き合い方に起因することも多いという。ホットラインの代表で臨床心理士の福島充人さん(36)は「『こうあらねばならない』との考えを緩めることで悩みを打ち明けやすくなるのでは」と話している。(小泉一敏)
何でたたくの?
平成7年11月、大阪市内の、とあるビルの一室で、日本初となる男性専門の電話相談は始まった。
きっかけは、初代代表で現在も相談員を務める安部達彦さん(67)の体験から生まれた一つの疑問だった。
ある日、自分の娘をしかる際に思わず手をあげてしまった安部さん。当時は「しつけ」として珍しいことではなかったが、意図していなかった自分の行為にショックを受けたという。
「かわいい娘に手を出すなんて…」。そう思い、さらに疑問が湧いた。「なぜ、自分は娘をたたいたのだろう」。家庭内暴力(DV)に関する海外の著作や事例の研究を始めた。その中に、同様の疑問を持った男性に対する支援の一つとして紹介されていたのが電話相談だった。
以前から男の子育てなど、ジェンダーに関わる問題について男性側から考える活動を行っていた安部さん。男性専門のホットラインの必要性を感じると、同じような思いを抱いていた活動の仲間を集め、相談を受けるための研修などを行い、準備を進めた。
「実際に電話がかかってくるのか分からない状態で始まった」と安部さん。だが心配をよそに、相談開始時刻の午後7時には電話が次々と鳴りはじめ、途切れることはなかったという。
同ホットラインによると、7年度から27年度までの21年間の相談件数は計3249件。計算すると1日平均約5件の電話がかかってきていることになるという。開始当初は月1回だけだったが、相談件数の増加に伴い、現在は第1、第2、第3月曜の月3回に増やして対応。相談員は約10人で、臨床心理士だけでなく、約1年の研修を受けた会社員や自営業、公務員などさまざまな立場の人たちが相談員として活動している。
相談から時代が見える
では、これまでにどのような相談が寄せられていたのだろう。
最も多いのは「異性や同性への関心」や、「性的ないじめ」、「性行為について」といった「性に関する悩み」(42・6%)。次いで、「自分と父親を比べてしまう」、「定年退職後の生活がむなしい」など「自分の性格・生き方に関する悩み」(14・9%)。さらに「夫婦間の問題」(8・8%)、「DV」(8・1%)などが続いている。
時期によって相談の傾向も変化するという。
「DV」はホットライン開設当初はほとんど相談がなかったが、平成13年にDV防止法が施行されると全体の26%にまで急増。社会でDVが問題であると認識されたことから、「暴力をやめたいけれど自分ではどうしようもない」などといった相談が寄せられた。
その後、専門の相談窓口が行政や支援機関などで開設されるようになると、ホットラインでは相談が減少していき、27年は約5%にとどまる。
同様に「セクシャルハラスメント」や「パワーハラスメント」なども、報道などで広く社会で知られ始めると、その先駆けとして相談が寄せられ、問題が認知され、専門の相談や支援の窓口ができるとともに相談が減少してきたという。
男性相談の意義は?
「現在でも、過去の体験や周囲の反応を気にして『男はこうあるべし』と考える傾向が残っている」と現代表の福島さん。また、「男性は誰かに相談するという弱みを見せることに抵抗があり、1人で抱え込む傾向がある」とも。「縛り」をどのように緩め、つらい時に「つらい」と言える社会が求められるという。
男性専用のホットラインゆえに「相談相手が男性だから話せた」と話す利用者もいて、福島さんは「まだまだ男性相談への必要性を感じている」と語る。
「『男』悩みのホットライン」は、06・6945・0252。第1、第2、第3月曜日(祝日も実施)に、午後7時から9時まで行っている。
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