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東京モーターショーがテーマパークへ変貌 100万人来場のカギ握る親子連れ

SankeiBiz編集部

 10月25日から一般公開が始まった第46回東京モーターショー。見どころの一つは、従来の自動車見本市から、「親子で楽しめるテーマパーク」へと大きく舵を切ったことだ。コンセプトカーの展示はもちろん、近未来の日本を疑似体験できるエリアや、「キッザニア」との初コラボにより「子供たちが働く街」も出現。趣向を凝らした多種多様のブースやプログラムを用意して、100万人という大きな来場者目標を掲げた。自動車業界の枠を越えた新機軸のモーターショーを実際に体験してきた。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)

ダイハツでコペンの組み立てを体験する男の子
インタビューに応じてくれた小学1年生の男の子
ホンダではプロが実際に使う高精度のシミュレーターを体験できる
色とりどりのミニカーが並んだトミカのブース
マツダのブースで金型磨きを体験する女の子
スバルのブースで整備士の仕事を体験する女の子
筆者も立ち乗りのパーソナルモビリティーを試乗してみた
トヨタの小型モビリティー「iROAD」。時速60km/hほどで走行可能
トヨタの小型モビリティー「iROAD」の運転席。ピザの配達に行く気分
トミカのミニカーには大人も釘付けになる
トミカはブースの中心に『トミカワールド』の世界観を打ち出した商品群を並べて子供や大人をもてなす
1970年に発売した初代トミカ6種類を再現した50周年記念コレクション
たくさんのキッチンカーが並ぶ。ケバブも食べたかったが、取材を終えるころには閉店していた
久しぶりに唐揚げで感動した
画面を通して重機の遠隔操作を体験する外国人来場者(※画面内のイメージは録画映像で実際に操作することはできない)
「FUTURE EXPO」のエリアでは近未来の日本が体験できる
レクサスが2030年ごろの世界を意識して開発したEVのコンセプトカー「LF-30」
2020年2月発売予定の新型ホンダ「フィット」
1988年シーズンにホンダエンジンを搭載して16戦中15勝を挙げたF1マシン「マクラーレンMP4/4」
スズキの自動運転車「ハナレ」
スズキがコンビとコラボした「エブリイどこでもベビールーム with コンビ」
スバルが初公開した新型「レヴォーグ」のプロトタイプ
マツダブースで展示されていたお洒落なソファとテーブル。外国人の来場者たちも「なんてクールなんだ」と英語で賛辞を送っていた

 「次の青海エリアまでどうやって移動しようかな…。せっかくだから、立ち乗りのパーソナルモビリティーに試乗してみるか」

 受付で希望するモビリティーの種類を伝えると、スタッフが丁寧に操作方法を説明してくれた。3輪のEVモビリティーに乗ってレバーを押すと、青海エリアに向かってスーッと動き出した。時速4~6km/h程度で歩行者に混じって運転してみたが、移動中は好奇の視線に晒され、少し恥ずかしい気分に…。まだまだレアな乗り物であることを実感した。

 新しい試み

 今回の東京モーターショーはいろんな意味で“新機軸”だ。会場は従来の「有明エリア」に加え、新たに「青海エリア」まで拡大。2つのメイン会場を中心に、開催エリアの面積は過去最大規模となった。ショーの形態も単なるモーターショーから、モビリティーのテーマパークへと様変わり。自動車業界の枠を越えたオールインダストリー体制で「暮らし」や「街づくり」まで領域を広げるなど、「未来のモビリティー社会」のワクワク感を演出する構成になっている。中でも主催者の日本自動車工業会が新機軸として掲げたキーワードが、「体験型」と「子供」だ。冒頭の試乗の様子は、2会場を一本の道でつなぐ「オープンロード」で体験できるプログラムの一つだ。

 全長1.5kmのオープンロードは歩いて30分近くかかる。2会場の移動には3分間隔で運行する無料シャトルバスや、ゆりかもめで「東京ビッグサイト駅-青海駅」を移動するという手もあるが、上天気であれば近未来を感じさせる乗り物にぜひ試乗してほしい。3輪スクーターと車が合体したような小型モビリティー「i-ROAD」にも試乗したが、こちらもかなり不思議な乗り物だった。一見バランスが悪そうだが、カーブで思いっきり車体を内側に傾けても倒れる気配はない。傾けすぎるとハンドルが振動して警告されるのだが、車両自体は自動制御が入り、バイクのような転倒の心配もなくキビキビとカーブを駆け抜ける。これは今まで経験したことのない運転感覚だった。

 青海エリアにはキーワードの一つ「子供」が楽しめる参加型プログラムや展示物が目白押しだ。中でも最大の目玉は、東京モーターショーが子供向け職業体験型施設のキッザニアと初めてコラボした「職業体験エリア」。小学生を対象に自動車関連10社のブースでメカニックやカーデザイナーなど様々な職業が無料で体験できるのだ。さらには未就学児でも参加できるプログラムもいくつか用意している。

 各社のブースを覗くと、男子も女子も工具やペンを片手に楽しそうに“職務”に当たっている。ダイハツのブースでは軽自動車コペンを組み立てる仕事が体験可能。スタッフに聞くと「バンパーやライトが外れた状態から組み立て作業をしてもらいます。通常工程を子供に体験してもらって、最終的に社員による点検・チェックを経て終了となります。技術員と一緒にやるので簡単です」とのことだ。

 「お友達にも勧めたい」

 フォーミュラマシンを持ち込んだホンダは、レーシングドライバーの仕事を学ぶという夢のあるプログラムだ。コックピットに座ったり、プロが実際に使う高精度のシミュレーターを通して運転技術を磨くという。職業体験に参加した小学1年生の男の子(7歳)にシミュレーターの感想を聞いてみると、「簡単かなと思ったら予想より難しかった。スピードも速かった」とレースカーの速さに驚いた様子。レーシングドライバーになってみたいと思った?と尋ねると「どうかなー。ちょっとまだ難しそうだけど、興味は持った! クルマが好きなお友達にも勧めたい」と満面の笑みで話してくれた。

 キッザニアの担当者は「こういう機会をいただき弊社としてもありがたい。クルマってすごいな、ワクワクするな、といった原体験をすることが、将来自分でクルマが欲しい、乗ってみたいということにつながると思う」とコラボの意義を語る。プログラム内容は基本的に「うちの会社のこういう技術を体験してほしい」といったメーカー側の希望を尊重しながら、個別に一緒に作り上げたという。そのために各社がキッザニアまで視察に来たそうだ。「例えば広島のマツダさんは東京のキッザニアまで見に来てくれた。『子供が真剣に、楽しそうに職業体験に参加する様子がすごくよく分かった』とイメージを膨らませていた」という。ちなみに保護者が体験付入場券を購入すれば、子供は2人まで無料で職業体験できる。

 乗り物玩具で人気のトミカも、大きなブースの中心に『トミカワールド』の世界観を打ち出した商品群を並べて子供や大人をもてなす。ほかにも「1970年に発売した初代トミカ6種類を再現した50周年記念コレクションや、トヨタとJAXAがコラボした月面探査車のミニカーを参考展示している。懐かしいものから現在、未来のクルマまで、親子でまんべんなく見ていただきたい」と関係者は見どころをアピールする。

 車両の展示がメインの有明エリアはより大人向き、近接のMEGA WEB(メガウェブ)を含む青海エリアは子供向けプログラムや体験型コンテンツが多く、家族連れや若者向けという印象だ。高校生以下が入場無料という新たな料金設定も、親子や若者の来場を後押しする。今回の東京モーターショーが「体験型」や「子供」に力を入れるのには理由がある。

 東京モーターショー存続へ危機感

 かつては来場者数200万人超の栄華を極めた東京モーターショーも、近年は回を追うごとに来場者も出展ブランド数も減少しており、一昨年はついに80万人を下回った。

 自工会の豊田章男会長は9月下旬に行われた東京モーターショーの説明会で「もはや新しいクルマを展示して『どうぞ見てください』という時代ではない。自動車だけで未来を表現するには限界がある」と危機感を口にした。そのため今回は業界を越えた連携で「楽しい未来を作る」ことに主眼を置き、「なるべく体験してもらおう。そして未来をテーマにするならば、未来の主役である子供たちに来てもらいたい。子供や家族連れに本当に楽しんでもらえる企画として、キッザニアとのコラボや高校生以下無料の実現に至った」という。

 豊田会長が掲げた来場者数の目標は、無謀とも思える100万人。しかも「自動車の軸では頑張っても70万人が限度」だという。残りの30万人をいかに新しい機軸で持ってくるか-。「そこでのキーワードが『体験』と『子供』だった。箱根駅伝や甲子園、高知のよさこい祭り、徳島の阿波踊り、こうした誰もが知るイベントはいずれも100万人規模。東京モーターショーも家族で見てもらえるテーマパークを目指して100万人とした」。

 目標達成に向けてカギを握る家族連れの来場。開催エリアには他にも子供向けカート体験や未来の日本を体験できる近未来空間など魅力的なイベントが盛りだくさん。キッチンカーでグルメを楽しむといったこともできる。ちなみに香ばしい匂いに誘われて食べた「諭吉のからあげ」はお勧めだ。会期は11月4日(月・祝)まで。