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11月2~4日のお金の使い方で幸福度がわかる 「連休浪費」を回避するには

 11月2~4日は、2019年最後の3連休だ。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは「こうした連休にどう過ごすかで、幸福度は大きく変わる。幸福度の高い人は買い物よりも、友人や家族との時間に充てている。それは家計の観点からもおすすめできる」という――。

 2019年最後の3連休でわかる「お金に愛される人・逃げられる人」

 11月2~4日は、2019年最後の“3連休”だ。

 日本は世界の中でも有給休暇日数やその消化日数が少ない一方、祝祭日が多い傾向にある。今年10連休となった4、5月の大型連休以降、3連休の週末(土曜~月曜)は次の通りだ。

 7月13日~7月15日(「海の日」を含む)

 8月10日~8月12日(11日の日曜が「山の日」で、12日の月曜が振替休日)

 9月14日~9月16日(「敬老の日」を含む)

 9月21日~9月23日(「秋分の日」を含む)

 10月12日~10月14日(「体育の日」を含む)

 11月2日~11月4日(3日の日曜が「文化の日」で、4日の月曜日が振替休日)

 楽しみの後にやってくる請求書やカードの利用明細書の束

 一部の祝日は固定の日にちではなく、「○月第◯月曜日」と設定されているため土曜日を休むと3連休となる。この仕組みは、連休を増やすことでレジャー産業などの活性化を狙ったものだ。

 実際、行楽地への旅行やアミューズメントパークなどへ出かける人も多いが、楽しみの後にやってくるのは、請求書あるいはクレジットカードの利用明細書の束だ。「せっかく旅行に来たのだから」などと、つい財布のひもが緩むと、頭を抱えてしまうことになる。

 さらに、10月以降の消費増税対策としてキャッシュレス決済のポイント還元制度が実施されている。1円でもオトクに買い物やサービスを利用したいと、普段、現金派でもキャッシュレスを多用して、実際に自分がどれだけお金を使ったかわからないという人もいるようだ。

 「連休浪費」習慣を平日に持ち込みお金の使い方の規律が乱れる人

 連休明けに気持ちを切り替えて、次の給料日まで食費や交際費などを切り詰められる人であれば特に問題はない。まずいのは、連休時の浪費習慣をそのまま平日にも持ち越し、支出を増やしてしまう人である。

 家計相談を受けていると連休や長期休暇後にお金の使い方の規律が乱れてしまう人に一定の割合で遭遇する。特徴としては下記のような消費傾向がある。

 ・見栄を張りがち

 ・「行列ができているから」と店に並んだり、「流行(はや)っているから」とネット通販で買ったりする

 ・手元(財布)にお金があれば全部使ってしまう

 ・ストレスがたまるとつい衝動買いが増える

 ・何にお金を使ったかあまり把握していない

 ・計画的に物事を進めるのが苦手

 ・「期間限定」「地域限定」「レア物」などに弱い

 では、こうした連休時に湯水のようにお金をつかってしまうタイプはどのような対策を立てればいいのだろうか。

 「連休浪費」回避術1:レジャー費の予算は年間ベースで考える

 とくにレジャー費のように、月によって大きく変動する支出は、月額ではなく年額で予算管理することをお勧めする。以下の図表は、総務省の家計調査(2017年)の外食費や宿泊料、レジャー施設への入場料など、家計に占めるレジャー費(年額)を年収別に整理したものである。

 年収別にみると、平均で年額約34万円。それぞれの年収に応じて年収の4~5%程度がレジャー費として消費されている。この数字を参考に「年間予算」を立てれば、例えば、4、5月の大型連休で予算オーバーしたとしても、夏休みやそれ以外の連休などのレジャー費を抑えて、年間ベースで無理なく調整できるのではないか。

 そして、計画を立てる際は、使えるお金の8掛けくらいで予算を立てるのがポイントだ。連休で気分が開放的になると、家族旅行や買い物などで自分・家族へのご褒美を購入したり、仕事服をアウトレットやセールでまとめ買いしたりしがちだ。8掛け予算により、そうした衝動買いを回避するようにしたい。

 もし、そもそもレジャーに予算を割くほど経済的な余裕がないのであれば、通常より前もって計画を立てるといい。例えば、パック旅行や飛行機のチケットなどを早割や金券ショップなど利用したり、旅行費用を旅行積立などで準備したりすれば、リーズナブルにレジャーを楽しむことができる。筆者の顧客の中には、すべての買い物をクレジットカードのマイルで貯めて、数年に1度、家族でハワイ旅行に出かけるのが趣味という人が複数いる。

 「連休浪費」回避術2:お金の使い方にメリハリをつける日常習慣

 「連休浪費」をしないための対策その2は、やはりふだんから家計支出のメリハリをつける習慣を持つことだろう。

 例えば、食べ歩きやお取り寄せなど美味(おい)しいものを食べるのが大好きで、どうしても食費は高めになってしまうが、その分、被服費や交際費などはほとんどかけないように配慮する。あるいは、家族揃(そろ)ってキャンプが趣味だが、普段の生活では外食をしないで節約を心掛ける。そうやって本人や家庭のニーズに応じて優先順位を明確にすれば、家計の赤字転落を防ぎ貯蓄もしっかりできる可能性は高い。

 家計相談を受けていると、連休浪費に陥りがちなのは比較的収入の高い家庭ではないかという気がする。多額な住宅ローンを返済し、子供の教育費には糸目をつけない。外食比率も高い。そのような家庭の場合、連休で外出するとさらにタガが外れて支出もふくらみがちなのだ。

 連休の「暮らし方」でその人の幸福度の高さ低さがわかる

 以前、雑誌『プレジデント』(2018年8月13日号)で「年収1000万円vs.400万円 ビッグデータ解析」という特集記事に取材協力したことがある。そのアンケート解析では、年収が少ない人より年収が多い人のほうが「人生の満足度」についての平均値が高かった。収入は少ないより多いほうがいい、というのは当然だろう。

 しかし、年収400万円未満でも満足度がとても高い人もいた。この人たちについて調べると、彼らは人生において「家族仲」「休日の充実度」「友人の数や友人関係」「異性関係」などを重視していることがわかったのだ。

 要するに、相対的に年収が低く、可処分所得がそれほどなくても、家族や友人、交際相手など人間関係が充実している人の満足度は高く、人生を幸福なものと感じられるようなのだ。

 幸福度を考えるうえでは、「地位財」と「非地位財」の違いを理解する必要がある。

 地位財とは、他人との比較優位によって価値が生じるもので、所得(お金)や社会的地位、さらにクルマやマイホームなどを指す。

 一方、非地位財とは、他人との相対比較と関係がなく、それ自体に価値があり喜びを得られるものだ。休日(休暇)や友人関係、愛情、健康、社会への帰属意識など、いわゆる「プライスレス」なものである。

 『プレジデント』のデータ解析によれば、人生の幸福度を決めるのは、その人が置かれた境遇や所得の多さ、持っているモノではない、というものだった。

 連休の過ごし方でいえば、浪費に走るのではなく、「非地位財」の質と量を高めるためにお金を使うことが、幸せになる近道だといえそうだ。

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 黒田 尚子(くろだ・なおこ)

 ファイナンシャルプランナー

 CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書は『50代からのお金のはなし』など多数。

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 (ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)