先週の為替相場は米国が香港人権法案を可決したことを受け、米中関係悪化への警戒感が高まったことなどにより、安全資産とされる円が比較的強い推移となりました。
ただし、米中貿易交渉に関しては、ネガティブな報道だけでなくポジティブな報道も出てきており、不安と期待が交錯する状態が続いており、為替相場でも一喜一憂の動きが続いています。
今週も引き続き、香港問題も含めた米中関係に関する情報に注目が集まり、最新の報道に振り回される可能性があるため注意が必要です。
経済指標は米国では、国内総生産(GDP)改定値や個人消費支出、消費者信頼感指数などの発表が予定されており、発表後は結果に反応することが想定されますが、偏った結果が続かない限りは米中関係に関する材料に比べると、注目度は薄く、市場への影響は限定的となりそうです。
ドル円は引き続き鈍い動きが続く可能性も
では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。
オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。
ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。
先週のドル円は序盤に一時1米ドル=109円台に乗せる場面もありましたが、上値は重く、すぐに108円台に押し戻される動きとなり、その後は108円台で方向感の鈍い動きが続きました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買の比率は買いが56%とやや高くなっていますが、現在の価格水準を中心に10月から続く1米ドル=108.00~109.50円の価格のレンジ(価格帯)で構築されたポジションが多く、今週もこのレンジを上下いずれに抜け出すかで価格の方向性を探っていきたいところです。
価格がレンジを上抜ける動きとなると、売りポジションの損切り(損失を増やさないための決済注文)の買い、価格がレンジを下抜ける動きとなると、買いポジションの損切りの売りが増えることが想定され、価格の均衡が上下いずれかに崩れると、これらの注文を絡め、崩れた方向に方向感が出てくる可能性が高まりそうです。
ユーロドルは買いポジションの損切りに注意
先週のユーロドルは、序盤こそ底堅い推移となりましたが、後半は失速し、1ユーロ=1.10ドル台前半まで下押す動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買の偏りは少ないですが、先週後半の下押しにより、含み損を抱え、苦しい状況に陥った買いポジションが少し目立つ状況となっています。
このため、価格がさらに下落し、直近の安値水準である1ユーロ=1.1000米ドル付近の水準をしっかりと割り込むような動きとなると、これらのポジションの損切りの売りが増え、下押し圧力が強まる可能性があり、さらなる下落の余地が残されているように見えます。
また、価格が反発した場合も、これらのポジションの利益確定の売りが上値を圧迫し、上値の重い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
1ポンド=1.2765-1.3000米ドルの価格レンジに注目
先週のポンドドルは、1ポンド=1.3000米ドルに迫る水準では上値が重く、押し戻される動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、10月からの価格レンジとなる1ポンド=1.2765-1.3000米ドルで構築されたポジションが多く、ドル円同様にレンジを上下に抜けるような動きとなると方向感がしっかりと出てくる可能性を見出すことができそうです。
このため、この価格レンジを上下いずれに抜ける動きとなるかに注目したいところです。
〈OANDAのオーダーブック〉
オープンポジションはここに注目
相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。
これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。
例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。
損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。
オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。
オープンオーダーはここに注目
前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。
オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。
損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。
世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?
トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。
OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。
これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。
※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。
本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
- OANDA Japan株式会社
- 第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号
- 一般社団法人 金融先物取引業協会 加入番号1571号
【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら