IR、万博、インフラ整備 大阪・夢洲で工事同時多発も 交通アクセスに課題

 

 大阪府市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の事業者公募が、今月から始まる。予定地としている大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」(大阪市此花区)は2025年大阪・関西万博の会場でもあり、府市は「万博までのIR開業」という理想をあきらめてはいない。ただ同時期にさまざまな工事が重複することになるため、アクセス道路の渋滞対策や業者間の調整が大きな課題になる。

 総面積約390ヘクタールの夢洲のうち、北側の約49ヘクタールがIR用地。工事を始めるには府市がIR事業者を決め、国に申請した上で、立地区域として認定を受けなければならず、それまでは土地の引き渡しができない。

 その区域認定のスケジュール自体がまだ明確になっておらず、再来年の2021(令和3)年7月以降としか定まっていない。吉村洋文知事も「21年秋に土地を引き渡してそこからトンカチ(工事)を始めるにしても、万博開幕までにどこまでできるか」と過密日程になるとの見通しを示す。

 夢洲では現在、万博予定地(約155ヘクタール)の埋め立てが急ピッチで行われている。来年からは地下鉄延伸、道路、上下水道のインフラ整備がスタートし、人工島内では種々の工事が同時並行で進むことになる。

 アクセス道路では現段階でも日常的な渋滞が発生している。大阪市内と夢洲を結ぶのは、夢舞大橋と夢咲トンネルの2ルートのみ。すでに稼働している夢洲のコンテナターミナルは近年、取扱量が増加しており、物流車両が列をなしている。市の担当者は「工事車両や資材が一気に集中すればさらなる混雑は必至。物流への影響も心配だ」と危惧する。

 混乱を避けるため、市は夢洲内の工事を一括管理する事業調整会議を設置。工程管理や運行ルートの調整を行うほか、資材は極力、海上運搬することも検討している。

 それでも「万博とIRのどちらかが譲歩しなければ」(市幹部)と両立困難という見方は根強い。関西経済界や与党からは「国家事業の万博ファースト」との声も上がる。

 これに対し、松井一郎・大阪市長は「工事調整は必要だが(万博とIRが)同時に開業することで相乗効果が生まれる」と説明。両立は「ミッション」と強調している。

 市は今後、夢舞大橋や周辺道路を4車線から6車線に拡幅するほか、夢洲内に物流と観光車両の動線を分ける高架道路もつくり、万博期間中(25年4月中旬~10月中旬予定)の計約2800万人の想定来場者に対処する計画だ。

 ある市幹部は「2800万人であれば対応できる」としながら、「想定を1割超えたら厳しいかもしれない」。仮に年間1500万人の来場を見込むIRの同時開業が実現すれば、その「1割超え」は確実で、来場者輸送の面で新たな対策を迫られることになる。

 万博の詳細な来場者輸送計画は国土交通省や府市、民間企業などで構成する専門部会が検討中。日本国際博覧会協会は来年秋ごろ策定する万博基本計画に反映する方針だ。