1966年の初代誕生以来、日本を代表する“国民車”として親しまれてきたトヨタ自動車のカローラが今年9月、セダンとワゴンモデルを全面改良した。歴代初の3ナンバーに生まれ変わった12代目はさっそく登録車販売台数の首位に立つなど、上々の滑り出しを見せている。今回は短い試乗時間の中で可能な限り、セダンの仕上がり具合を確認してきた。(文・大竹信生/SankeiBiz編集部 写真・西村克也)
国産車の発展を牽引
これまでは何となく地味な存在だった。かつてカローラには「レビン」や「FX」などのスポーティーな追加車種があり現在もハッチバックの「カローラスポーツ」は存在するが、セダンを見て心が躍ることは正直なかった。子供のころはプレリュードやソアラ、シルビアやレパードを颯爽とドライブする大人に憧れていたし、大人になってからも特にカローラセダンに意識が向くことはなかった。
とはいえ、その歴史は偉大だ。初代カローラの誕生が日本にもマイカーブームを呼び込み、クルマがクーラーやカラーテレビと並び「新・3種の神器」として普及する要因を作った。人気大衆車として1960年代以降の高度経済成長に大きく貢献したのだ。やがて日本が西ドイツを抜いて世界2位の自動車生産国となり、米国に次ぐ経済大国として存在感を示し、高速道路の開通などモータリゼーションの進展に多大な影響を与えたことは想像に難くない。その後もコスパに優れた大衆車として時代のニーズにマッチした進化を続け、実に150以上の国と地域で愛され続けてきたという実績がある。国内では1969年から33年連続で登録台数1位に輝いた。この記録こそ永久に不滅だろう。
ここ数年はプリウスやアクアといった登録車が存在感を示してきたが、実はカローラも月間6000~8000台をコンスタントに売るなど常にトップ10を維持してきた。そして昨年、「12代目カローラシリーズの先駆け」としてハッチバックのカローラスポーツを投入し、今年9月にセダンとツーリング(ワゴン)を発表して、新たなカローラシリーズを形成する3モデルが出揃ったのだ。
その直後の10月。自販連発表による乗用車の販売台数(軽自動車および海外ブランドを除く)で、新型カローラが2008年11月以来、11年ぶりに首位奪還すると、11月もシエンタを抑えて2カ月連続でトップに立った。1月から9月までの月間首位はプリウス4回、ノート3回、シエンタ2回。12月の販売状況次第では今年の月別タイトル数でノートに並ぶ勢いだ。
トップグレードのHVに試乗
見事な復活を果たしたカローラセダンは、ハイブリッド車(HV)、1.8Lガソリン車、1.2Lターボガソリン車の3タイプをラインアップしている。今回は1.8リッターエンジン(98PS/142Nm)とモーター(72PS/163Nm)を組み合わせたFF(前輪駆動)のHVに試乗した。
グレードは最上位の「HYBRID W×B」で、車両価格は275万円(税込)。215/45R17のアルミホイールタイヤやレザー調のスポーティーシート、液晶表示のメータークラスターなどを装備しているのが特徴で、1灯でハイビームとロービームの切替ができるBi-BeamのLEDヘッドランプも搭載している。大衆車ともなればローエンドのグレードも気になるところだが、最安価のガソリンモデル「G-X」は、195/65R15スチールホイールタイヤやノーマルタイプのファブリックシート、アナログメーターや3灯式LEDヘッドランプを装着しており、価格は193万円台(同)でそこそこリーズナブルだ。ちなみにHVの「G-X」は240万円台(同)となる。
これは昨年、カローラスポーツに試乗したときも感心したのだが、内装の質感はかなり高いレベルに仕上がっている。ピアノブラックの光沢やスイッチ類の感触の良さなど、車内には洗練された雰囲気が漂っている。安っぽさを感じさせるものは特に見当たらない。先代カローラよりもかなりグレードアップしているのは明らかだ。特にシートは程よいコシの強さと、着座時のサポート具合が素晴らしく心地よい。こうなると、逆にノーマルシートの座り心地がどれほどのものなのか気になる。
モーターアシストによる走りは非常に滑らか。変速ショックとは無縁のCVT(電気式無段変速機)を採用しており、アクセルの踏み込みに対してスムーズに加速していく。パワーユニットからは満足のいく力感を得ることができる。EVモードを選択すれば完全にモーター走行となるが、現実的な利用シーンは渋滞時のみだろう。少しでもスピードに乗ればEVモードは解除されてしまい、エンジンが介入する。
ハンドルは軽い味付けだが、ステアリング時の遊びは少なめで、イメージ通りのタイミングでごく自然にカーブを曲がっていく。新プラットフォームがもたらす低重心化がコーナリング時の安定感につながっていることも実感できる。重心が高いクルマは挙動が落ち着かず、運転中に上半身、とくに視線がブレやすくなるのだ。スポーツモードを選択すればエンジン音が強調され、加速とステアリングがシャープになる。そういう気分の時はこれもアリだろう。
走りに関して個人的に気になったことが2点ある。まず、カローラスポーツの広報車より1インチ大きい低扁平タイヤを履いている影響もあるのだろうが、セダンの方がコツコツとバンプを拾いやすく、ロードノイズの侵入も気になった。一方、首都高を走行中でも風切り音はよく抑えられていた。足回りのノイズを改善すれば静粛性は相当よくなるはずだ。
もう一つはブレーキだ。超低速走行時のブレーキ操作で「カックン」となることがあった。中高速度域で大きく踏み込むときは違和感ないのだが、数ミリのペダル操作を行うときに、踏み込み量に対するブレーキの利き具合にもう少し一定の減速感覚が欲しい。もっと言えばブレーキペダルに“踏み応え”が欲しい。少し言いづらいが、実はこの直後に試乗したMAZDA3のペダルの方が、圧倒的に感覚がつかみやすく優れていた。
スポーティーな外観で「地味」からの脱却
新型カローラは世界共通のプラットフォームを採用したことで、全幅が1700mmを超えて歴代初の3ナンバーとなった。とはいえ、全長4495×全幅1745×全高1435mmの体躯に扱いづらさは感じなかった(ちなみに参考として、プリウスは4575×1760×1470mm。搭載する1.8Lエンジンとモーターの型式は同一タイプ)。5ナンバーモデルとして継続販売しているカローラアクシオ(4400×1695×1460mm)を運転した時よりも若干の大きさは感じたが、前方やドアミラー周辺の視界は良好で小回りも利くなど、特に不便はなかった。
外観デザインはスポーティーに仕上げている。グリル形状はあまり好みではないが、横長のヘッドランプやリヤの灯火類は小ぎれいにまとめており、デザインを攻め過ぎて見直しを迫られたプリウスよりも好印象。特にカローラスポーツや同時発表したカローラツーリングに採用したリヤコンビランプはワイド&ローを演出するシャープな形状で、素直に「カッコいい」と思わせる秀逸なデザインだと思う(※あくまで個人的な感想です)。クルマの印象はほぼ外見で決まると思うが、そういう意味で新型カローラは個人的にこれまで持っていた「地味」といったイメージを一掃している。
個人的に気になった2点(ノイズとブレーキ)を除けば、クラスを超える上質さを備えたセダンだと感じた。ユーザーの安全を優先し、予防安全パッケージの「トヨタ・セーフティー・センス」を全車に標準装備している。「走る・曲がる」に関してクセはほとんどない。様々な操作に対する反応が自然で、逆にこれといった尖った特徴は見当たらない。むしろ“世界のベーシックカー”として、誰もが受け入れやすいクルマを目指して、あえて上質でクセのないクルマに仕上げたのだろうと感じた。別に誰かの心が躍らなくてもいい。誰もが親しみやすい存在、それがカローラの根本にあるのだと思う。
【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら
■主なスペック(試乗車)
全長×全幅×全高:4495×1745×1435mm
ホイールベース:2640mm
車両重量:1370kg
エンジン:直列4気筒
総排気量:1.8L
最高出力:72kW(98ps)/5200rpm
最大トルク:142Nm(14.5kgm)/3600rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
タイヤサイズ:215/45R17
定員:5名
燃料タンク容量:43L
燃料消費率(WLTCモード):25.6km/L
ステアリング:右
車両本体価格:275万円(税込)