中国人観光客、相次ぐキャンセル 団体旅行停止影響か
新型コロナウイルスによる肺炎が発生・蔓延(まんえん)する中国の当局がさらなる拡大を懸念し、国民の移動が活発になる春節(旧正月)の休暇に合わせて団体の海外旅行禁止措置を発動した影響が、日本でも出始めている。観光地では中国人観光客のキャンセルが相次ぐ。一方、団体客の規制から外れ、既に来日している中国の個人客らが中国で品薄になる薬やマスクを求めてドラッグストアに押しかける“異変”もみられる。
東京・銀座のドラッグストアには27日、スマートフォンの画面に「マスク」を表示させ、店員に在庫の有無を問い合わせる中国人観光客の姿が目立った。店員が渋い表情で「没有(ありません)」と告げると、観光客は肩を落とした。
別の店では、唯一残る高額な高機能のマスクを大量にカゴに入れる中国人客の姿も。横付けされた観光バスから降りてきたツアー客が市販の薬を求める場面もみられた。ツアーに同行する中国人女性(45)は「日本の薬は品質が良い。中国の病院にかかるより安心と思う人もいる」と明かす。
一方、観光地には団体旅行停止が影を差す。
都内を周遊するバスなどを運行する「はとバス」では中国からの観光客数人がツアー参加をキャンセルしたという。このうち2人はウイルスが猛威を振るう中国・武漢からの観光客だったといい、自ら参加の取りやめを申し出た。はとバスでは28日以降、すべてのバスに消毒用のアルコールを常備する。
中国の旅行会社に国内ツアーを販売している「カモメツーリスト」(東京都新宿区)によると、この時期は多くのツアーが予定されていたが、キャンセルが相次いでいる。週末も社員が出社し、宿泊先のホテルなどに連絡。27日も朝から対応に追われた。
中国の旅行会社から委託を受け、宿泊先や交通機関を手配している大手旅行会社の担当者は「春節期間中にあった中国側からの依頼は全てキャンセルだ」と述べた。
中国メディアに「無料でおすすめのスポット」などと紹介され、中国人観光客らに人気が高い都庁展望台(新宿区)。都によると、影響はまだ見通せないが、案内担当者らにマスクの着用を依頼した。また、同じく人気スポットの東京タワー(港区)も中国人客のキャンセルが出始めている。担当者は「推移を見守りたい」と漏らす。
東京・築地の場外市場で海産加工品などを扱う田所食品の田所惇子さん(78)は「大通りに観光バスが並び、中国人客が多く来てくれるが、いつもの春節と違って少ない」。関西空港近くの「りんくうプレミアム・アウトレット」(大阪府泉佐野市)の担当者も「どのような影響が出るのか気掛かりだ。安全対策に努めたい」と話した。
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