【5時から作家塾】実はガラパゴス製品 加熱式タバコ「アイコス」が中国人富裕層の注目の的に
日本へ出張するたびに専用タバコを“爆買い”
「とにかくかっこいい」と嬉しそうに手にしているのは加熱式タバコ「アイコス(iQOS)」。日本向けのシステムやアプリ開発をする会社を経営する中国人の張さんは、日本へ出張するたびに専用タバコを“爆買い”しているという。
実は、アイコスは中国では販売されておらず、品薄になった昨年始めなどは、日本での購入価格の2倍ほどの高値で売られていた。
張さん曰く、経営者同士での会合などでアイコスは洗練されたスタイリッシュさで注目の的となり、オレもオレもと中国人富裕層の愛好者を増やしているという。中国人は見た目のメンツを重視するので、中国では売られていないアイコスは、彼らのメンツを満たしてくれる恰好のアイテムなのだろう。
経済発展が加速し始めた90年代終わりでも成人男性の喫煙率が8割を超えていた、という新聞記事が確認できる中国では、高度成長が一段落したこの10年での健康志向の高まりから喫煙率が急激下がっている。
質にこだわりを見せ始めた富裕層
マナーの問題は別にして、10年前には分煙されていなかったので常に煙っていた駅構内などはスッキリ分煙化され、パーティションで区切られていただけで煙が漏れていた国際空港でも喫煙室の個室が当たり前になるなど、かつての喫煙大国では一気に分煙化が進んでいる。
そうなってくると経済的に余裕がある富裕層はタバコの質にこだわりを見せ始め、葉巻へ切り替えたり、アイコスのような国内で販売していないような舶来品へ移行し始めたりしている。
アイコスを始めとする「プルームテック(Ploom TECH)」「グロー(glo)」などの加熱式タバコは、ほぼ日本でしか販売されていない。実は、加熱式タバコは、ガラケー(ガラパゴス携帯)と呼ばれるフューチャーフォン以来のガラパゴス製品であることをご存知であろうか。
アイコスは2015年の発売以降、販売許可される国があまり増えないため、「日本禁煙科学会」によると、全世界の加熱式タバコ市場の85パーセントを日本が占める。平成時代、ほぼ日本でしか販売されなかったものの代表としてMD(91年発売)や99年サービス開始のiモードなどが挙げられるが、加熱式タバコは、令和のガラパゴス製品なのだ。数種売られている加熱式タバコの中でも中国人は特にアイコスを好んでいるようだ。
容易に手に入らないとなると、ますます欲しくなる
ガラパゴスな加熱式タバコは、世界的には電子タバコと同一の扱いを受けることが多い。しかし、日本では薬機法(旧薬事法)により、ニコチン入りの電子タバコの販売が認められていないことから、日本での電子タバコは、実質、タバコとは呼べず、アイコスを販売する「フィリップモリスジャパン」などは、加熱式タバコと電子タバコは別物だとアピールを強めている。
今回は電子タバコについてはあまり触れないが、現在の電子タバコを発明した発祥国中国でも昨年11月、オンラインも含めた販売が禁じられてしまっている。そのため、今後アイコスが中国国内で販売認可される可能性は極めて低いと考えられる。
しかし、容易に手に入らないとなると、ますます欲しくなるのが人間の性だ。
日本国内でアイコスブームが起こった1年半前、アイコスは生産が追いつかず、公式サイトでも1人1台ずつ、空港の免税店を除き日本国内在住者限定で販売されていた。結果、転売が流行り、19年1月に1万6980円のアイコス3のマルチセットが中国人向けに3万円ほどで売買される現象が起こっていた。
中国人が好むのは金色。続いてネイビーのような濃い青となるが、現在は、公式サイトで1人2台まで、なによりもコンビニエンスストアで外国人でも台数制限なしに買うことができるようになったので、中国人向けのプレミアム化は終焉している。それでも日本へ頻繁に来られない人のニーズは健在で、多少色を付けた価格で転売されているようだ。
冒頭のシステム開発会社を経営する張さんは、喉の調子がいいと家族や社員には言い訳していると笑いながら話し、アイコスのタバコを買うために出張予定を組むくらいアイコス愛が止まらない。(筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))
【プロフィール】5時から作家塾(R)
1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。
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