乗るログ

リーフやノート、GT-RやZのNISMOで豪快に雪上試乗 意外なあのクルマの姿も…

SankeiBiz編集部

 北海道で行われた日産自動車の雪上試乗会に参加してきた。イベントの目的は「電動モデルによるスノードライブ体験」と「駆動方式や車種の違いを楽しむ」ことだ。そのための試乗車としてEVのリーフやノートe-POWERのほか、高性能スポーツカーのGT-RやフェアレディZのNISMOバージョンまで幅広いモデルが用意されていた。その中でも異彩を放っていたのは、「このクルマでドリフトしてくれ」と言わんばかりに定常円コースの前に置かれた、工事現場でよく見かけるあのクルマだった…。(文・大竹信生/SankeiBiz編集部)

2月上旬に北海道で行われた日産自動車の雪上試乗会「ニッサン・インテリジェント・スノー・ドライブ」
日産のEVリーフ
高性能スポーツカーのGT-Rでショートコースを走る
フェアレディZのNISMOバージョンでショートコースを走る
日産デイズ
スカイライン400R
ノートe-POWER
NV350キャラバンで定常円旋回に挑む
高性能スポーツカーのGT-R
高性能スポーツカーのGT-R
高性能スポーツカーのGT-R
高性能スポーツカーのGT-R
高性能スポーツカーのGT-R
高性能スポーツカーのGT-R
フェアレディZのNISMOバージョン
フェアレディZのNISMOバージョン
フェアレディZのNISMOバージョンでショートコースを走る
フェアレディZのNISMOバージョンでショートコースを走る
2月上旬に北海道で行われた日産自動車の雪上試乗会「ニッサン・インテリジェント・スノー・ドライブ」
登坂路を駆け上がるノートe-POWER
スカイラインGT
NV350キャラバンで定常円旋回に挑む
ノートe-POWER
高性能スポーツカーのGT-R
高性能スポーツカーのGT-R
フェアレディZのNISMOバージョン
フェアレディZのNISMOバージョン
フェアレディZのNISMOバージョン
スカイライン400R
スカイライン400R
ノートe-POWER
日産デイズ
日産のEVリーフ
NV350キャラバン
NV350キャラバン
NV350キャラバン
NV350キャラバンの「スノーモード」と「二輪/四輪駆動」の切り替えスイッチ

 今回の舞台は江別市のスポーツパーク内に用意された特設コース。ブレーキング性能を体感する直線コースや最大15度の傾斜を設けた登坂路、スラロームコースや様々な要素を盛り込んだショートコースなど、雪上での安定性や操縦性、走行性能を試すに相応しい多様な雪道を再現している。

 電動車と雪道の相性は果たして

 試乗会の中心となるモデルは、日産の電動化技術を採用した「100%モーター駆動」のクルマたちだ。筆者が試乗した電動車はリーフとノートe-POWERの2車種。リーフはモーターのみ搭載するピュアEVであり、ノートe-POWERは、エンジンで発電した電気で駆動用モーターを回すシリーズ方式を採用したHVモデルだ。タイヤを回すのはモーターであり、エンジンは一切駆動に関与しないのが特徴だ。

 モーターはエンジンよりもトルクの立ち上がりが早いため、雪道のように滑りやすい路面(低μ路)で大きなメリットを発揮する。わずかな踏み込みでもレスポンスが素早く、超低回転域から強力なトルクを生み出すため、泥濘路や砂利道のような悪路でもグイグイと気持ちよく走ることができる。ちなみに日産の駆動用モーターは1万分の1秒単位というきめ細かいトルク制御を行っているという。実際に雪上を走るとアスファルトと同様、モーターならではの滑らかな発進や加速を味わうことができる。雪の積もった坂道で停止したときも、難なくスッと再発進してみせた。アクセル操作に対するラグはほとんどなく、常に爽快感のある走りを披露する。

 雪上でも安心のワンペダル

 リーフやノートe-POWERは、アクセルペダル1本で発進・加速から減速・停止までこなせる「ワンペダルドライブ」の機能を備えている。アクセルペダルを緩めると回生ブレーキを利かせながら、まるでブレーキペダルを踏むような感覚でグーっと減速するという優れものだ。特にリーフが採用する「e-Pedal」は回生ブレーキに加えて普通のブレーキも併用することで、後輪も含めた4輪による安定した減速ができるという特徴がある。この機能は雪上でも非常に有効だった。アクセルペダルを戻すと確かな減速感とともにスローダウン。足を離せばごく自然に停止する。減速中は常にタイヤが路面を捉えている感覚があり、スリップの不安は特に感じない。単なるアクセルオフよりも強い制動力が働くため、ペダルの踏み加減をコントロールすることで、ドライバーの意図した通りに減速できるという安心感がある。

 ノートは二輪駆動(2WD)/四輪駆動(4WD)の切り替えが可能で、傾斜度15度の凍った登坂路ではトラクションの差が浮き彫りとなった。特に坂の途中で一旦停車してから再発進する時が顕著だ。4WDを選択中は4輪がしっかりと路面をつかみながら発進するが、2WDではタイヤが空転して横滑りが始まり、やがてずるずると後退を始めた。駆動力が全く発揮されないのだ。平地から一気に駆け上がる分には急勾配でもない限り2WDでも問題ないが、坂の途中で一度モメンタムを失えば、4WDでないと抜け出せない場面が出てくる。四駆の電動車なら普段は2WDで電気をセーブして、いざという時は4WD、という使い方ができるのだ。

 雪上での横滑りは大丈夫か?

 突然の降雪や高速走行中のゲリラ豪雨など、悪天候の中のドライブでは横滑り防止装置が心強い味方となる。中には「そんなのオレには必要ねぇ」という練達のドライバーもいるかもしれないが、逆に運転を得意としない人もいるのだ。筆者もゲリラ豪雨で怖い思いをしたことがある。頼れる電子デバイスがあるのなら、使わない手はない。ちなみに横滑り防止装置はメーカーごとに名称が異なる。日産はVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)と呼んでおり、筆者がこの日試乗したすべての車種に搭載されていた。

 VDCはクルマが横滑りしそうな状態になるとセンサーが感知してアクチュエーターに信号を送り、個々の車輪にかかるブレーキ圧やモーター出力を制御するデバイスだ。駆動輪が空転したときにモーター出力を抑えて駆動力やハンドル操作性を向上させる「トラクションコントロール機能(TCS)」や、空転している駆動輪にブレーキをかけてもう一輪の駆動力を確保する「ブレーキLSD」、急ブレーキ時に車輪のロック(回転が完全に停止した状態)によるスリップを低減する「ABS」はすべて、VDCのシステムに組み込まれている。

 VDCは具体的にどのように車両の安定性を高めるのか。例えば左右の駆動輪のうち右車輪だけ回転を止めると、クルマは右に旋回する。VDCはその原理を利用して、個々の車輪のブレーキを超高速で「摘まんだり離したり」を繰り返しながらクルマの姿勢をコントロールしているのだ。同時に、TCSでスロットルの制御を行うことでスピードも抑えている。実際にVDCをオンにしてドリフトを試みても必要以上に速度が上がらないのは、TCSがモーター出力を抑制しているからだ。

 VDCは各社のチューニングのノウハウが生かされる技術であり、メーカーごとの “個性”が表れやすいという。かつてGT-RやフェアレディZの開発を手掛け、新型デイズの実験も担当した永井曉氏は「実は少しロックするぐらいが一番効く。ロックの“限界ギリギリ”をいかに試すか、そこの微妙な調整に各メーカーの味付けが出てくる」と話す。「VDCの介入が多いと安定はするけれど前に進まない。うちはそこのバランスを良くしたかったので『しっかりと走り、安定もしている』というチューニングにかなり気を使った」。また、別のエンジニアは日産のVDC技術の高さを熱く語りつつ、「(ベンツ・BMW・アウディの)ドイツ3社は横滑り防止装置における開発の歴史が長く、雪道が多いという環境もあってシステムの作り込みが上手い」と技術力の高さを称えていた。

 VDCは手元のスイッチで簡単に解除することもできる。実際に解除して走ると、特にハンドルを連続して左右に切るスラロームではあっさりと挙動が乱れる。4WD仕様の新型デイズでは張り切りすぎてしまい派手にスピン。あやうく雪の壁をヒットしそうになり、永井氏から「けっこう攻めますね」と“言葉のブレーキ”を掛けられてしまった。その後、私のお行儀が少しだけよくなったのは言うまでもない。そもそも、VDCの解除スイッチは何のためにあるのか。答えは、ぬかるみや深雪にスタックしたときに、一時的にVDCの作動を停止して駆動力を確保することで脱出を補助する緊急用モードなのだ。

 GT-RとZを雪上で走らせると…

 VDCの恩恵を特に強く感じたのは、高性能スポーツカーを駆った時だった。滑りやすい雪道でハイパワーのGT-Rやマニュアル仕様のフェアレディZ(しかもハイパフォーマンスモデルのNISMOバージョン)に乗るのは初めての経験だったが、そこそこの速度でコーナーに飛び込んでも常に安定した姿勢を保ちながら、思い通りに操ることができるのだ。これは元々の優れた基本性能に加えて、VDCを含めた様々な電子デバイスが適切な制御を行うことで、ドライバーの技術不足やエラーを上手に矯正しているのだ。制御があまりにもさりげなく自然に介入するので、まるで自分がとてつもなく凄いドラテクを持っているかのような錯覚すら起こしてしまう。おかげでGT-RとフェアレディZは雪上でも抜群に楽しいクルマだった。正直、ショートコースを数ラップ回るだけでは物足りなかったぐらいだ。

 しかし、ある意味、この2車種を超えるこの日最大のサプライズは、なぜか商用ミニバンのNV350キャラバンが用意されていたことだった。ハンドルはかなり上向きで、高い運転席から見下ろすドラポジは独特のワクワク感がある。駆動方式は後輪駆動(FR)の2WDと4WDの切り替えが可能で、このクルマでパイロンの周りをぐるぐるとドリフトする「定常円旋回」を試せというのだ。とはいえ筆者には滑らかに連続旋回する技術もなければ、クルマに快適性もない。キャラバンは満載の荷室を想定してサスペンションの味付けをしているので、空っぽの状態だとロデオの荒馬乗りも斯くや、というぐらいにポンポンと跳ねるのだ。しかもアンダーステア(ハンドルを切っても旋回が追い付かずアウトに膨らむ状態)の出るFFと違ってFRだから、見た目に似合わずグイグイとインに切り込む。こんな状態でも海外のジャーナリストは血眼にドリフトを試みるのだから、日産スタッフの爆笑が止まらないのも許せてしまう。しかしよくよく考えると、時として過酷な環境で使用する商用バンだからこそ、路面を問わず優れた走行性能が求められるのであり、雪上試乗会が場違いでもなんでもない事に途中で気付いた。

 ともあれ、電動車の操縦性や走行性能の高さは雪上でもしっかりと確認できたし、モーターやエンジンの異なるパワートレインやFF・FR・4WDによる駆動方式の違いがもたらす挙動やハンドリングの特性も存分に楽しむことができた。個人的に最もエキサイティングだったのはGT-RとフェアレディZだったが、すべてのモデルに共通していたのは雪上でも高い基本性能と安心感だった。そして、こういったイベントを通じて路面状況や車両特性に応じた運転テクニックを磨き、クルマがどのようにしてコントロールを失うのか自らの体験をもって理解することが重要でもあるのだ。

【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら