名刹に行列カフェ、子供向け食堂…檀家減少で苦境、生き残りへ変わる寺

 
築地本願寺の境内にあるカフェ「Tsumugi」の看板メニュー「18品の朝ごはん」=東京都中央区
築地本願寺の安永雄玄宗務長

 檀家の減少によって苦境に立つ寺が、生き残りをかけて変わろうとしている。境内にカフェをオープンさせたり、大学生と共同で食堂を営んだりと、人を呼び込むための取り組みが進んでいる。識者は「寺は地域の社会資源としての歴史があり、改めてその役割を発揮できるかどうかが問われている」と語る。

 写真映え朝ごはん

 400年の歴史を持つ名刹として知られる東京都中央区の築地本願寺。インドなど古代仏教様式の本堂そばにあるカフェ「Tsumugi」が午前8時に開店すると、行列の客で席が埋まった。目当ては、色とりどりの料理が小皿に並び、SNSなどで写真映えすると評判の「18品の朝ごはん」だ。

 カフェや書店が入る施設ができたのは平成29年秋のこと。同時に過去の宗教・宗派を問わない合同墓も設けた。維持費や掃除などの管理が不要な点が好評で、30万円からと設定されている申し込みは、令和元年末時点で8千件を超えた。同時期から、僧侶による人間関係の相談、相続など「終活」に関する専門家紹介といった会費無料サービスも提供する。取り組み以前は寺への年間訪問者は約200万人だったが、現在は約250万人に増えた。

 牽引(けんいん)しているのは寺トップの安永雄玄宗務長(65)だ。銀行や外資系企業で働き、50歳で僧籍を取った異色の経歴で、本山の西本願寺(京都市下京区)が平成27年に抜擢(ばってき)した。一連の改革に内外から苦言や反発もあったが、部下の僧侶をビジネス講座に通わせるなどして組織風土を変えていった。

 安永氏は「時代に合わせた課題を解決する存在が目標。そのためにカフェなどを通じ縁を持たないといけない」と語る。

 「未来の寺子屋」に

 都市部への人口流出が悩みの種となっている山梨県都留市の禅寺、耕雲院は30年7月から月に1度「つる食堂」を開いている。

 貧困家庭に限らず子供たちに食事を提供するほか、共同運営する地元大学生が勉強も教えている。独居の高齢者や子育て中の母親らも含め、毎回約100人が参加するという。このほかにもヨガや精進料理の教室を開催しており、河口智賢副住職(41)は「集い、学び、遊べる『未来の寺子屋』を目指している」と語る。

 寺院経営のコンサルティングを手がける「お寺の未来」(東京)が28年、全国の1万人を対象にした調査では、「特定の寺の檀家」と答えたのは29%。「檀家でない」54%が大きく上回った。

 「お寺の未来」は、信頼して付き合える寺探しに役立ててもらうウェブサイト「まいてら」を運営。地域活動が活発で財務状況も安定している寺を紹介する。

 井出悦郎代表理事(40)は「駆け込み寺との表現もあるように、善意の第三者となる力が寺にはある。従来の死者儀礼中心ではなく、いかに個人の生き方に関わりを持つかが重要になっている」と語る。