大富豪と多国籍企業が積極的にウイルス対策する理由は 感染拡大放置すれば…
【エンタメよもやま話】
さて、今回ご紹介するのも、世界を揺るがすあの問題に関するお話です。
昨年末以降、全世界規模で猛威を振るう新型のコロナウイルスによる肺炎は、いまだ感染者の増加に歯止めがかかる気配がありません。こうした状況の中、世界の大富豪や多国籍企業が立ち上がり、中国などでのウイルスの拡大防止に向け、動き始めたのです。本コラムでは、こうした動きなどについてご説明します。
まずは米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏(64)です。2月6日付の米CNN(電子版)などによると、ゲイツ氏と妻のメリンダさんが2000年に創設した世界最大の慈善基金団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が、新型コロナウイルスのワクチン開発や感染拡大の防止、そして感染者の発見・治療を進めるために使ってほしいと、1億ドルを寄付すると発表しました。同財団は1月末の時点で1000万ドルを寄付すると発表していましたが、感染の急拡大を受け、急遽、1億ドルに増額したといいます。
寄付金の大部分はWHO(世界保健機関)とCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)が受け取り、そこから6000万ドルが感染者の診断・治療とワクチン開発のため、公的な医療機関やバイオテクノロジー企業などに。2000万ドルが中国などの医療現場の最前線で感染者と向き合う医療関係者のケアなどに使われる予定です。
そして、中国の電子商取引最大手、アリババ・グループの創業者兼会長だったジャック・マー氏は1月末、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国の武漢市(ぶかんし)と、同市を抱える湖北省(こほくしょう)への医療物資供給のため、10億元の基金を立ち上げるとともに、新型コロナウイルスのワクチン開発に役立ててほしいと、自身の財団「ジャック・マー・ファウンデーション」を通じ、1億元を寄付したのです(1月29日付の米CNN電子版など)。
基金のお金は、中国の政府系研究機関2カ所に計4000万元が割り当てられるほか、新型肺炎の予防と治療のためにも使われるといいます。また、公共科学研究機関のワクチン開発などをサポートするため、無償で人工知能(AI)を開放しました。
このほか、中国企業では、ネットサービス大手のテンセントが武漢市への医療品供給のため4270万ドルの基金を設立したほか、通信機器最大手のファーウェイ(華為技術)、検索エンジン大手のバイドゥ(百度)、動画共有アプリ「ティックトック」を運営するベンチャー企業、バイトダンス(字節跳動、食品デリバリー最大手、美団点評(Meituan Dianping)などが新型コロナウイルスの感染防止のための寄付を行いました。
中国以外でも、米マイクロソフトが武漢市と湖北省への救援活動にと14万2400ドルを寄付したほか、米ミネソタ州に本社がある穀物メジャー、カーギルや米IT(情報技術)大手のデル、仏化粧品大手ロレアル、高級ブランド世界最大手、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンなども中国の赤十字などに多額の寄付を行ったと報じられました(1月29日付米経済誌フォーブス電子版など)。また、米航空機大手ボーイングは、武漢市と浙江省舟山市(せっこうしょうしゅうざんし)の医療従事者らを支援するため、25万個の医療用マスクを提供しました。
こうした大富豪や多国籍企業が積極的にウイルス対策に乗り出すのには理由があります。このまま感染の拡大を放置しておけば、世界経済への大打撃となるからです。
1月31日付の米CNNや2月3日付の米経済誌フォーチュン(いずれも電子版)などは、マクロ経済の専門家らの試算を引用する形で、今回の新型肺炎の影響により、中国の今年の第1四半期(1~3月)のGDP(国内総生産)が2%引き下げられ、金額にして600億ドル分の成長が失われると報じました。
中国が世界経済に与える影響は甚大です。例えば、2月5日付の英紙ガーディアン(電子版)は、最大の貿易相手国が中国という豪の準備銀行(RBA、中央銀行)のフィリップ・ロウ総裁のナショナル・プレス・クラブでの発言内容を紹介していますが、ここでロウ総裁は「中国は世界経済の大半を占めており、豪との関係はより密接である」ため、新型コロナウイルスの大流行が豪経済に与える影響は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行時よりも甚大となる可能性があるなどと明言。
さらに同紙は、経済格付け会社の試算などを引用し、豪から中国への最も重要な輸出品である鉄鉱石の価格が、新型コロナウイルスのせいでこの1か月で11%も下落したと報道。豪では年間600億ドル以上の鉄鉱石を中国に輸出しており、税収の主な源泉であるなどと説明し、さまざまな面で豪の経済に多大な悪影響を及ぼすとの見方を示しました。
「中国は世界経済の大半を占めている」というロウ総裁の発言を引き合いに出すまでもなく、豪州ほどではないにせよ、何らかの形で中国に経済の面で依存している国は多いはずです。今回の新型コロナウイルスの広がりが各国の経済に与える影響は想像以上ですが、これから本当に恐ろしいことが起きる可能性が高いというのです。
2月15日付の英紙デーリー・テレグラフ(電子版)などによると、米シアトルで現地時間の2月14日に開かれた米科学振興協会(AAAS)の会議で講演したビル・ゲイツ氏は「このウイルスがサハラ砂漠より南のアフリカやアジアの一部の地域に広がる場合、本当に大変なことになるかも知れない」などと述べ、アフリカ諸国でパンデミック(広範囲に及ぶ流行病)化すれば制御不能となり、1000万人以上の死者が出る可能性がある」と警告したのです。
ゲイツ氏は、この新型ウイルスはエボラ出血熱より死亡率は低いものの、広がり方ははるかに速いことを強く懸念し、「この病気がアフリカで発生した場合、中国で発生した場合よりも大変なことになります。今、中国で起きていることを矮小化してはならない」と警告しました。
想像するだけで恐ろしいことですが、1月28日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)などは、一般市民が新型コロナウイルスに効くワクチンの接種を受けられるようになるには、数カ月から1年はかかるとの見方を報じています。
2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、ヒトで臨床実験できるワクチンができるまでに20カ月かかりました。2015年のジカウイルスではこれが半年に短縮されました。各国の医療関係者は、今回の新型コロナウイルスでは、これを3か月に短縮したいと考えていますが、そううまくはいかないようです。
ちなみにビル・ゲイツ氏が米科学振興協会(AAAS)の会議で講演してから数時間後、エジプトのカイロで新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されました。いよいよアフリカでも大流行するのでしょうか…。(岡田敏一)
【プロフィル】 岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。
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