北海道・ニセコが全国トップの上昇率 公示地価、2年連続

 
しゃれた飲食店が点在するJR倶知安駅前の商店街。オフシーズンは人影がまばら=令和元年9月、北海道倶知安町(寺田理恵撮影)
スノーリゾート「ニセコ」への交通拠点、JR倶知安(くっちゃん)駅前。ローカル駅だが北海道新幹線が延伸される予定=令和元年9月、北海道倶知安町(寺田理恵撮影)

 国土交通省が18日発表した令和2年の公示地価(1月1日時点)は、世界的なスノーリゾート「ニセコ」のある北海道倶知安(くっちゃん)町で住宅地と商業地のいずれも平均変動率が大きく上昇し、町内の調査地点が前年に続き上昇率全国トップとなった。

 同町では北海道新幹線や自動車道の延伸が予定され、インフラ整備に伴う投資や交通利便性の向上への期待が高いことも上昇要因となっている。

 パウダースノー高評価

 ニセコをはじめ、日本の雪質は「日本」と「パウダースノー」と組み合わせて「JAPOW(ジャパウ)」と呼ばれ、世界のスキーヤーから高く評価されている。倶知安町では10年以上前から、富裕層が長期滞在用に購入するコンドミニアム(アパート式別荘)の建設ラッシュが地価を押し上げてきた。

 当初は、豪州からの訪日スキー客が中心だったが、「ニセコ」ブランドの認知度が高まり、ここ数年は香港やシンガポールなどアジア系の客が増加した。

 北海道不動産鑑定士協会によると、アジア系外国人による旺盛な別荘地需要がある。リゾート施設従業員の住宅用地のほか、建設作業員用の賃貸住宅の需要も。インフラ整備が進められることから、JR倶知安駅前や国道沿いの商業地では投資の引き合いがあるという。

 しかし、リゾートエリアへの交通拠点となる倶知安駅前周辺はしゃれた飲食店などが点在するものの、シャッターが下りた店舗も目立つ。同協会の斎藤武也副会長は「転売は起きておらず、新幹線の新駅開業を待っているのではないか」とみる。

 大都市圏に比べ低価格

 住宅地の上昇率全国トップとなった調査地点は、早くから開発されたスキー場「グラン・ヒラフ」に近接する別荘地で2年連続の1位。上昇率は44%で、価格は1平方メートル当たり10万8000円となった。全国2位も同町の比較的駅に近い調査地点で、上昇率は30・6%。価格は同4万7000円となっている。

 商業地の上昇率全国トップは、3年連続で倶知安駅に近い国道沿いの調査地点。上昇率は57・5%で価格は同10万円となった。いずれも大都市圏に比べて価格が低いため、上昇幅が目立つ。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大は観光産業に大きな影響を与えている。斎藤氏は「倶知安町の場合、上昇幅が大きくても価格は安い。土地を換金するような動きは出ていないが、感染拡大の影響には注視する必要がある」と指摘する。

 炭鉱町の衰退続く

 一方、北海道ではかつて炭鉱で栄えた夕張や美唄(びばい)、岩見沢の各市などが商業地の調査地点別下落率で全国上位を占め、道内の明暗がくっきりと表れた。

 商業地の下落率全国1位は夕張市の中心市街にある調査地点で、炭鉱の閉山後に人口が流出。JR石勝(せきしょう)線夕張支線(新夕張-夕張)が昨年廃止され、地域経済の衰退に歯止めがかからない。全国2位以下も、美唄市や岩見沢市などの地点が続く。