めっちゃ文系がサイエンススクールを運営?
私はArt to Science(アートからサイエンス)を学びのアプローチとして定義しているインターナショナルスクール「GGIS」を運営しています。人間力やコミュニケーション能力なども含めたアート(文系)に始まり、サイエンス(理系)の両刀を習得させるというミッションの学校です。しかし、私自身は自他ともに認める「めっちゃ文系」です。「文系頭」として「情熱は論理を超える」と負け惜しみに近いことを訴えながら(笑)、自分なりに今まで生き抜いてきました。ただし、これからの時代を生き抜いていくためには、大人も子供も、ロジカルに考え、それを形にしていく力・技術が必要になっていきます。
小学校では今年の4月からプログラミング教育が必修となります。日常の中にもAIが支えるサービスがちらほら目立つようになり、会社や学校など様々な場所にそのシステムが導入され、便利になっています。大人も子どもも「理系」に強くならないと…と肌で感じている方も多いのではないでしょうか。
日本では高校生から、早いと中学生から、学生を進路に沿って「文系」「理系」に分類し始めますね。私が運営するインターナショナルスクールでは、文・理のどちらも必要と考えています。そして通う子どもたちは、「サイエンス(科学)」と総称して、数字、足し算・引き算、理科、天文学(例:星について学ぶ)、生物学(例:動物の生体について学ぶ)、プログラミング、ロジカルシンキングなど様々な科目を学んでいます。しかもまだオムツを履いているような小さな子どもが!
子どもは生まれながらにサイエンティスト
「学校でサイエンスを学ぶ」というと、白衣を着てビーカーで実験をしているような様子を思い浮かべるかもしれません。そんな大げさなことをしなくても、自然や日常の中にサイエンスの題材は詰まっています。
サイエンスの基本は、様々な事象を観察(Observe)し、推測(Guess)し、実験・実証する(Apply)ことです。赤ちゃんも含め、子どもは意識せずとも、生まれながらにこれが大の得意。赤ちゃんは毎日、試行錯誤しながら自分の体の使い方を学んでおり、幼児になると「なんで?」「どうして?」とたくさんの疑問を投げかけてくれます。
我が家の3歳の“サイエンティスト”は先日、「お風呂にティッシュを大量に入れたらどうなるのだろう? きっと楽しいことになるぞ」と推測したようですが、「母の雷が落ちる」という実証結果となりました。子どもは自然と、様々な事象に疑問を持ち、探求する天才です。
では、子どもが生まれながらのサイエンティストなのであれば、幼い頃から学校でそれを学ばせる必要はあるのか? という思う方もいるでしょう。その答えはYESです。
子どもだけの特権じゃない「なぜなぜ」戦法
子どもにとって、たまたま抱いた「疑問」を広げていき、そこからさらに疑問が生まれ、先生からも疑問を投げかけられ、一緒に学んでいくというプロセスがとても大事です。公園で「コンクリートに石を投げるのと、木に投げるのとでは音が違う」と気がついても、そこからさらに「なぜ音が違うか」を一緒に問うことが何よりも重要です。疑問から生まれた探究心と、体験や知識などを結びつける「補助」という重要な役割を担うのが先生だと考えています。
このコラムを読んでくださっているビジネスマンの皆様。社会人にも同じことが言えると思いませんか。新人が「なぜうちの会社はこのようなやり方をしているのだろう?」「これって効率悪い」と思ったとします。「こういうものだから」と突っぱねてしまうと、疑問を感じても徐々に口に出さなくなるか、最悪の場合、疑問さえ抱かなくなります。「なぜ」にしっかりと向き合い(と言っても限界はありますが…)その疑問を吸い上げ、追求し、必要に応じてプロセスを見直す。しっかり疑問を検証する。これらは仕事にも通じることです。
オムツを履いた子でもチャレンジできる科学の実験
話がずれてしまいましたが、GGISで実際に行っているサイエンス教育の取り組みをいくつかご紹介させてください。先ほども触れたとおり、サイエンスの題材は日常の生活にもあふれています。ご自宅をはじめ、どこの学校・塾・保育園でもできるようなことばかりです。
GGISの生徒は、小さいうちからたくさんのことを学びますが、1~2歳児クラスの生徒でも実験に挑戦しています。小さければ小さいほど、五感に訴える学習法を心がけています。
【学習テーマ】お花は私達と同じくご飯を食べているのかな?
この疑問を検証するために、水に色を付けて花びらの色が変わる様子を一週間にわたり観察しました。
【学習テーマ】静電気ってなに?
風船を髪の毛と摩擦させ、静電気を起こし、塩が風船にピシャーーーとくっ付くかを実験しました。静電気によって、紙製のチョウチョの羽がヒラヒラと動くことも確認します。
何度も同じテーマを様々な方法で繰り返します。何年も繰り返し学ぶことで、自分の知識として蓄積されます。子どもたちは一年で想像を超えるほどの成長を見せてくれます。去年気が付かなかった点を今年気がつきますし、去年やったという自信が抵抗感を減らしてくれます。
例えば2歳児クラスでは、「濃度」について下記のような実験を行います。
【学習テーマ】塩を入れると卵は浮かぶか? なぜ浮かぶ?
卵を水の中に入れると沈むことを確認します。その後お塩を入れて混ぜていくと何故か浮かんできます。
まだ2歳児クラスでは、不思議! 面白い! と思うだけで十分です。その後、3~4歳児クラスになると、「濃度」についてもう少し種類を増やして学びます。
【学習テーマ】液体って同じ重さじゃないの?
濃度を理解する一環として、液体の重さが違うというのを視覚的に理解するための実験をしました。水、酢、アルコールなど様々な液体に色を付けてどの液体が重いか(濃度が高いか)を見ました。
【学習テーマ】虫の体ってどうなっている?
生物学の一環としては、公園から死んでしまった虫を拾ってきて学びました。
もちろん、いわゆるお勉強も大事です。数字や足し算・引き算など基礎部分の学習です。実験するにも、「お塩を○杯入れましょう!」と言われて数字がわからなかったら始まりません。なので、ここが先生の腕の見せ所。学んでいると気が付かないように、楽しくゲームのように学習します。
これは年長さん、つまり5歳児クラスのみんなで取り組んだカビの実験です。
【学習テーマ】カビってなに? どこにいるの?
カビがありそうな場所を考え、そこにパンをつけてカビが生えるかどうかを観察。カビのありそうな場所として、お友だちの顔、靴箱、普段座っている椅子など様々なアイデアが浮かびました。
ご紹介した学習テーマからもいえるとおり、子どもにとってのサイエンス(科学)とは、身近な「なぜ」を観察し、その理由を推測し、実験で検証することです。我が子には「理系」に強い子に育ってほしいからといって、難しく考える必要はありません。題材は日常に無限にあります。子どもの「なぜ」に向き合い、できる範囲で「実験」に付き合ってみましょう。
大人も子どもも、自分の中にある「なぜ」を無視することなく、それぞれの立場からしっかりとその「なぜ」に向き合い、話し合い、学び合いができるような社会になれば良いなと願っています。
【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら