受験指導の現場から

「教養貯金」は小5と中2まで まさかの休校継続にも備えあれば患なし

吉田克己

 まさかの4月休校?

 前回と同様、本稿も3月25日に執筆を始めたのだが、直前の3連休前後は、新型コロナウイルスをめぐり世界状況が目まぐるしく動いた1週間足らずであった。日本でも一部の地域で感染者が増え続けている。文部科学省は休校要請を段階的に解除し、新学期からの学校再開方針を示しているが、安倍首相は28日の記者会見で再開時期の見直しの可能性もあると表明した。「もう一度、専門家会議を開き意見を聞く」と説明している。

 事態の推移によっては、新学期に学校が再開されない可能性も出てきた。ゴールデンウィーク明けまでの自粛要請や休校が続くことも想定しておく必要が出てきたということだ。

 親たちもすでに疲弊

 子どもたちに目を移すとどうかと言えば、3月の休校が決まった時には、多くの生徒にとっては「ラッキー!」だったに違いない。その一方で、そのお母さんたちは(お父さんもだが)3度の食事の準備やらで、かなり消耗されているのではないだろうか。

 実際、筆者が見聞きした声は以下のようなものだ。

「本も読みたいし、刺繍もしたいし。勉強もするけど」

(小5・女子)

「ラッキー! とことんゲームやる」

(中学生・男子)

「えーっ、もうやだ」

(小・中学生の母、休校開始の数日後に「春休みまで続くかも?」と話した時の反応)

「もう、スターウォーズ、ジブリ…流行りものはひととおり観終わってしまった。外出が限られる中で、子どもに合った楽しみを見つけ続けるのは本当に難しい」

(休校開始から3週間目の母)

「丸1週間、3人の子どもと一緒にいて、自分のために淹れたコーヒーすら熱いうちに飲めない」

(欧州在住、幼児と小学生の母)

「マスク義務化。未使用の布巾をおろしてマスクを手縫い」

(欧州在住、小学生・男子の母)

 こんな感じだと、いくら「母は強し」といえど、精神的に疲れてしまうこともあるだろう。

 どの単元に集中するか 春期講習の最終日までに指示を仰ぐ

 塾通いする生徒のお母さんであれば、幸いこの春の講習会はどの塾でも開講されるようなので、春休み期間中は、お母さんも少しほっとできる時間がありそうだ。

 また、ほとんどの塾の春期講習会では、小学生であれば2月~3月中旬の学習単元、中学生であれば直近半年くらいの学習単元の復習となっているため、春期講習会期間から4月12日までしっかり勉強すれば、休塾分は取り戻せるので安心されたい。

 問題は、4月がどうなるかである。最悪の事態は4月6日の週から5週間ものあいだ、休校・休塾になってしまうことだ。休校にはなっても休塾にはならないということもある。地域によって学校、塾とも期間はまちまちかもしれないが、休校&休塾、休校&開塾の2ケースについて、案じておいて損はない。

 昨年から塾に通っているのであれば、この期間に学校の学習内容が塾よりも先に進んでしまうということはないだろうから、学校の課題は必須のものだけやればよいだろう。それ以外の時間の何割かを、塾の既習単元の中から各教科3~4単元ピックアップし、週ごとに単元を決めて集中的に取り組むとよい。薄く広く復習するよりも、後々のためになるはずだ。

 どの単元にフォーカスするとよいか、教材はどれが適切かなど、通っている塾に春期講習会の最終日までに早めに聞いておくとよい。苦手にしているかどうかだけでなく、入試での重要度も勘案してアドバイスしてくれるはずだ。逆に、塾の教材の中に基礎から標準以上までを網羅している(反復練習に向いた)ものがないということであれば、単元別のテキストをあらかじめ何冊か準備しておくとよい。幸いにして休校にならず、そのテキストを使わずに済んだとしても、ゴールデンウィークの集中課題として活用できる。

 いっき見やいっき読みも今のうち

 さらに、大きく空いた時間を普段は長い時間を充てられないことに使えるのであれば、マンガやアニメ、科学番組などの“長編”に時間を使うことも定石だろう。

 連続ものを何種類か用意しておくことができれば、1日数時間、親も手を休めることができるだろうし、鑑賞後の話題にもできる。加えて、学校から読書感想文が課題として出されたりすれば、一石二鳥でもある。

 定番としては、歴史や伝記のマンガのシリーズ、「まんがで読破」、マンガでわかる○○学、○○事典、○○図鑑、といった学習マンガを読むもよし、この機に動画のサブスクリプション・サービスに加入し、『ナショナルジオグラフィック』や『アニマルプラネット』の番組の中から最近の学習単元に合うものをリストアップしておくとか、『白熱授業』を片っ端から、というのもありだろう。

 時節柄、出版各社から無料公開されている学習マンガのデジタル・コンテンツもあれば、「学習 マンガ 0円」で検索すればヒットする作品も多数ある。

 中・高受験を目的に塾に通っている場合、読書や動画にじっくりと時間を掛けられる時期は、じつは小5と中2のゴールデンウィークまでである。この時期に“貯金”をつくっておけるか、教養に触れずに過ごしてしまうかでは、今後の学習に関心を持って取り組めるかどうかという点も含めて、後々に与える影響は小さくない。

 参考までだが、筆者の割と最近のマイブームはTVアニメ『はたらく細胞!!』であった(1年ほど前に一挙放送を録りためてイッキ見した)。原作はマンガで、体内の細胞を擬人化したキャラクターが登場する。ちなみにこの作品は、Yahoo!の「学習まんがランキング」で6位にランクされている。さらに、2018年2月からは姉妹作品として『はたらく細菌』も刊行されている(著者は異なるが『はたらく細胞!!』と同じ監修者である)。

 備えあれば患なし。もしもの時に備えて、対策と作品の按出をしておいてはどうだろうか。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら