ヘルスケア

志村けんさん死去で気付かされた葬儀での新型コロナ感染予防

 新型コロナウイルスの影響で葬儀のあり方が模索されている。新型コロナウイルスに感染して亡くなった方をどのように見送るのか。火葬への立ち会いの可否を含めた葬儀の進め方に統一基準はなく、病院や葬儀業者など関係者の判断に委ねられている。また新型コロナウイルスと無関係でも、葬儀会場は感染リスクが高まる「3密(密閉・密集・密接)」になりやすく大規模な葬儀や会食を避ける傾向にある。葬儀の規模縮小の影響で倒産する関連業者も出はじめてきた。

 火葬に立ち会えず

 新型コロナウイルス感染による肺炎で3月29日に70歳で死去したタレントの志村けんさんの遺族は、棺で眠る志村さんに対面できず、火葬にも立ち会えなかった。兄の知之さんは31日、報道陣の取材に「感染するというからやむを得ない。残念です」と無念の思いを吐露した。

 厚生労働省は、新型コロナウイルスで亡くなった方の遺体の搬送や火葬に際して、遺体からの感染を防ぐため、遺体全体を覆う非透過性納体袋に収容し密閉することが望ましいとの通達を出している。火葬に際しても、遺族などの意向にも配慮しつつ、極力そのまま火葬するように努めるものとしている。不透明の納体袋では遺体と対面することはできない。

 宇都宮市のあんしん葬儀社では今月に入り、新型コロナウイルスが原因で死亡した場合の葬儀に関する説明などをホームページ(HP)に掲載した。志村さんの密葬が報道されたことで関心の高まりを感じ、一定の説明が必要と判断した。

 とはいえ、新型コロナウイルスに感染して死亡した人の最期をどう見送るのか。地域ごとに習慣の違いもあり、火葬への立ち会いの可否や葬儀全体の手順に関する全国一律の基準はないのが現状。同社の荒井貴大社長は「感染対策次第では、人数が限定されるとしても遺族が火葬に立ち会うことは可能ではないか」とみている。しかし、あくまで各自治体や保健所、故人が入院していた病院や火葬場の方針、葬儀会社の体制など、複数の要素で総合的に判断されることになり、その準備を進めているという。

 同社はHPで、首都圏の対応がある程度の基準になり得る▽遺体の状況や遺族の安全を考慮して先に火葬を行う提案をする場合もある▽できる限りの感染症対策を行う-などと情報発信している。

 葬儀での「3密」

 新型コロナウイルスと無関係の故人の葬儀にも影響が出ている。葬儀会場が、感染を広げる「3密」になりやすいとの懸念だ。

 実際、今月15日に、新型コロナウイルスに感染していることが公表された宇都宮市内の30代の男性医師の場合、3月27、28日に新潟市内で営まれた葬儀で感染したとみられている。一緒に参列した新潟市内に住む母親が陽性と判明し、男性医師もPCR検査を実施し陽性が確認された。

 同社では、「3密」を避けるため、新型コロナウイルスとは無関係の葬儀の挙行に際しても(1)参列者の規模を縮小する(2)参列者の人数と比較して通常より広い式場を準備する(3)会食を行わず参列者にはカタログギフトなどを配って対応する-といった提案を遺族に行っている。現在、全国的にも業界全体が同様の流れにあるとみられる。

 関連業者の倒産も

 ただ、規模縮小は業界の業績悪化にもつながる。帝国データバンク宇都宮支店によると、栃木県内ではケータリングサービス業者の松田商事(小山市萩島)が今月に入り事業を停止した。同支店によると、新型コロナウイルスの影響で倒産する県内初のケースという。

 松田商事は県南エリアなどでの葬儀関係の会食が主力販路だったが、新型コロナウイルスの影響で会食を避ける葬儀が相次ぎ受注が激減。事業継続が不可能になったという。

 ある葬儀業界関係者は「今後も葬儀の縮小傾向は続くだろう。関連業界も含めた業績悪化が心配だ」と話した。