【新時代のマネー戦略】家計にもコロナショック 有事の食費節約は賢明とはいえない
コロナショックの影響で、収入が減ったり、仕事そのものを失ってしまった方もいるでしょう。単価が高いマスクや紙類、消毒用品を購入することや、食品の買い溜めによって、減収の中なのに、生活コストがアップしているご家庭もあるはずです。
今はレジャー費がかかっていないから、差し引きすれば、家計収支はそれほどきつくないと考える方がいるかもしれませんが、現在のように「将来の生活設計に不安が生じたとき」は、家計収支を確認する必要があります。そこで今回は、新型コロナウイルスの影響を受けた今、家計がやっておきたいことを考えます。
緊急時の家計見直しは、食費の節約を後回しに
まずは、日々の家計管理からお話しします。コロナウイルスの影響で家計が厳しくなった場合、食費の節約を考えるご家庭が多いはずです。ですが、食費の節約だけに注力するのはおすすめできません。食費を節約しようとすると、ご飯や麺類、パンなどの炭水化物の摂取量が増えて、糖尿病になるリスクも高まるからです。
現在は外出がしづらくなっており、運動不足になりがちな生活の中で、炭水化物の摂取量が増えると、健康面での不安が増します。目先の支出額は抑えられても、病気にかかりやすい身体にしてしまっては、将来、医療費がかさんで、本末転倒。節約をする際はご飯や麺類に頼るのではなく、キャベツや白菜といった葉物野菜、ニンジンなどの根菜類など、時季ごとにお得な野菜を利用するなどして、「おかずのほうをかさ増しする工夫」をしましょう。
また、春休みにレジャー費がほとんどかからなかったご家庭も多いと思います。コロナウイルスがいつ収束するかの見通しは立てられませんが、収束したと感じるようになったら、今まで出かけられなかった反動で、レジャー費にお金をかけるご家庭も増えそうです。
レジャー費に関しては、「夏休みには〇〇万円」、「年末年始は〇〇万円」といった感じで、使う時期の予算を立ててみてください。そして、実際に外出が可能になったときには、その予算を守れる範囲で楽しめるプランを実行するのが理想的です。「コロナウイルスが収まったから、気晴らしのためにどんどん出かける」とするのは、コロナウイルス“再燃”のリスクを拡げる可能性もありますし、それまでの節約努力が薄れてしまうと心得ましょう。
運用資産の目標額を「下方修正」する
コロナショックにより、運用している資産が目減りしているご家庭も少なくないでしょう。損を取り戻すために、積極的に売買しようとする人も見かけますが、今のように相場が乱高下しているときは、運用資産の「目標額の下方修正」をおすすめします。すでに、乱高下を何度も経験している経験値の高い人は、積極的に運用商品を増やしたり、入れ替えてもよいと思いますが、積立投資しかしたことのない人などが、銘柄の入れ替えをしようとしても、失敗の可能性があるからです。
たとえば毎月〇万円の積立で、60歳の時には3500万円に到達する目標を立てていたとしたら、60歳時点の到達目標額を3000万円などにいったん引き下げるのです。目標額を引き下げたのち、また相場が復活をしてきたら、その時に再度「目標額を上方修正」すればよいと思います。もし3500万円にこだわって、運用商品を入れ替えたり、運用方針を変えたとして、新たな運用がうまくいかなければ傷を広げるだけですし、将来の生活設計をより危ういものにしかねないと思います。
「貯金簿」を作り、収支を正確な数字でつかむ
さて、コロナウイルスの影響で、家計に不安が高まっている今、できればやって欲しいことがあります。それは、筆者自身が実践している「貯金簿」の記帳です。
貯金簿は、筆者が30代から付け続けている資産の推移を確認するためのノートで、3カ月に1度くらいの頻度で、記帳しています。
貯金簿の付け方を説明しますと、銀行預金は通帳を見たり、ネットで残高を調べて記入してください。運用商品は各自が利用している証券会社の口座にログインをして、記帳する時点の時価を調べましょう。国債や地方債などの債券は、購入額を記入すればOK。配当金が出ている場合でも、その金額は証券口座のほうの残金に反映されているからです。
個人年金保険や学資保険のように、貯蓄性のある保険に加入している場合は、解約返戻金額を記入したいところですが、毎回調べるのは大変です。そこで、記帳する時点までに払い込んだ保険料の総額を計算してみてください。例えば月額1万円で、その時点までに124カ月支払ってきたならば、124万円と書きましょう。
2カ月ごとの記入でコロナの影響がつかみやすくなる
これら「残高の記帳」を年に数回繰り返すだけで、1年間の貯蓄額が正確につかめます。家計簿をつけていても、口座に入った利息や配当金額などまでをつかむのは難しいですが、貯金簿は口座内の入出金も残高に反映されていますので、家計簿をつけていなくても貯蓄額がわかるのです。
さらに、家計簿だけで1年間の本当の貯蓄額を知ろうとした場合、日々の支出のほかに自動車税や固定資産税などの各種税金、年末年始の帰省費用、家電の買い替え費用といった特別支出についても、もれなく記録していかなければなりません。いっぽうの貯金簿では、特別支出の支出も銀行口座の残高に反映されていますので、特別支出の記帳をしなくても、年間の貯蓄額がつかめます。
貯金簿は通常、ボーナスのある会社員はボーナス月に年に2回程度、記帳すればOKですが、コロナショックで収支に変動が出ている今は、昨年12月末、今年の2月末、そして4月末と、2カ月ごとに記帳することをおすすめします。2カ月ごとに記帳すると、コロナウイルスの影響を受けた期間の収支が家計簿なしでつかめます。できれば6月末にも継続して記帳することをおすすめします。
あえてノートで パスワード帖の作成もおすすめ
貯金簿は将来に向けての貯蓄額を把握できるだけではなく、「昨年の12月末」というように、過去の期間の貯蓄も把握できます。通帳から該当する時期の残高を調べたり、運用商品は過去の推移のページから、該当時期の時価を調べましょう。
ちなみに貯金簿は、ノートを利用して作成することをおすすめしています。今はまだ健康でも、50代や60代、あるいはもっと高齢になった時に、ネットだけで管理していると、脳の病気などでいきなり意思を伝えられなくなることも考えられます。銀行口座があることを家族が知らずに、休眠預金になってしまう可能性もあります。そんな時に貯金簿があれば、銀行や証券会社にいくらあるのかを、家族は簡単につかめるのです。
私は貯金簿のほかに、「パスワード帖」も作成しています。そしてパスワード帖には、パスワードをそのまま書くのではなく、「10ケタの〇〇〇〇」といったように、自分と家族だけが判る暗号のような記入方法を用いています。パスワード帖を作っておくと、ネットでの金融取引に役立ちますし、パスワードそのものは書かないことで、貯金簿とパスワード帖をまとめて盗まれるリスクにも対応できます。
新型コロナウイルスで、先々の暮らしが見渡しにくくなった今こそ、現在と将来の家計収支を数字でつかむことの重要性を認識する必要があるのではないでしょうか。
【プロフィール】畠中雅子(はたなか・まさこ)
新聞・雑誌・ウエブに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを手がける。高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、ひきこもりのお子さんがいるご家庭向けに生活設計アドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」なども主宰。著書・監修著は、『病気にかかるお金がわかる本』(主婦の友社・黒田尚子氏との共著)ほか、70冊を超える。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら
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