終活の経済学

死後の手続き(4)健保・年金・行政

 死亡時から遡って「戸籍集め」

 葬儀が終わっても、遺族は落ち着いてはいられない。健康保険、年金への手続きなど急いで行うことが山積みだ。しかも、古い戸籍謄本を集めるなど、不慣れなものも多い。ポイントをまとめた。

 戸籍法改正期に注意

 家族が亡くなった後の「手続き」で、最初に故人(被相続人)の戸籍を集めると、その後の作業がスムーズだ。戸籍は遺産の「法定相続人」を明確にするために不可欠なもので、金融機関などの手続きでも求められる。必要なのは、故人の出生から死亡までの「戸籍謄本」(全部事項記載証明書)だ。これを死亡からさかのぼって、出生までもれなくそろえれば、故人の生い立ち、同じ戸籍内の家族との関係が分かる。「出生時点から死亡に向かって」でないのは、当時の本籍地が分からずに最初で立ち往生する可能性があるからだ。

 「死亡」に伴う除籍(いつ死亡したか記載され、戸籍から外れる)は、「死亡届」の提出を受け、戸籍がある市区町村役場が行う。通常7~10日程度かかる。この後に戸籍を取るようにする。戸籍には筆頭者と故人が「どこの本籍地から来た」という記載があり、次はその場所の役場に戸籍を請求する。住所や異動年月日を記載した死亡時の戸籍の附票の写しも取っておく。

 故人の戸籍を取得できるのは、配偶者、直系親族(子供、孫、ひ孫、父母、祖父母)か代理人だ。窓口、または郵便で申請する。

 このとき役に立つポイントがある。一般社団法人「しあわせほうむネットワーク」所属の行政書士、花方亜衣さんは「申請書に『相続のために、◯◯の出生から死亡までの戸籍を集めています』と書いた付箋を貼ると、担当者も分かりやすい。気がかりなことを電話で連絡してくれることもある」とアドバイスする。

 転居時などに本籍を何度も変えていなければ、基本的には死亡後の除籍と、既婚者なら結婚したときの親の戸籍からの除籍(分籍)を示す戸籍で足りる。ただし、複雑なのは戦後の戸籍法改正で2回、記載内容や書式が大きく変わったことだ。

 現在の戸籍は、平成6(1994)年の法務省令でコンピューター管理になり、横書きの記載だが、以前は縦書きだった。昭和32(1957)年の法務省令では、長男が筆頭者だった戦前の家単位の戸籍から、「夫婦と未婚の子供」を単位とする戸籍に改められた。

 このため、故人が生まれた年代によって、「改製原戸籍」という書き換え前の戸籍も必要になる。しかも、実際の改製時期は、人口が多い大都市で何年も先になるなど、市町村で大きく異なる。

 例えば、故人が昭和32年の省令前に出生、結婚したとしたら、最低でも(1)死亡による除籍謄本(2)平成6年省令改正前の改製原戸籍(3)昭和32年省令改正前の改製原戸籍(4)結婚による親の戸籍からの除籍謄本-が必要だ。

 プロの目でみると、途中の戸籍が「抜ける」ケースも目立つという。「被相続人の死後、相続人の一人が亡くなると、相続にはその人の出生から死亡までの戸籍も必要だが、この抜けも結構ある」(花方さん)。古い戸籍は旧字体、市町村合併の以前の地名などもあり読み込むには「慣れ」も必要だという。

 2つの申請忘れずに

 死亡届が提出されると、健康保険の被保険者の資格がなくなり、遺族が健康保険証を返却する。故人が自営業者や無職などで「国民健康保険」に加入していた場合は、死後14日以内に住所地の市町村役場の窓口で、資格喪失届を提出し、保険証を返却する。75歳以上で「後期高齢者医療制度」に加入していた場合も、市町村役場に「後期高齢者医療被保険者証」などを返却する。

 故人が現役の場合、会社が所属する「健康保険組合」や各都道府県の「協会けんぽ」、公務員なら「共済組合」に加入していたケースが多いだろう。手続きは通常、5日以内に勤務先を通して行えばよい。被扶養者の家族の場合も同様だ。

 故人が介護保険の被保険者(65歳以上など)なら、介護保険被保険者証も死後14日以内に市町村役場の窓口へ返却する。

 保険証の返却と併せて、やっておきたいことが2つある。1つ目は葬儀費用の一部が健康保険から支給される「葬祭費・埋葬料」の申請だ。

 「葬祭費」は、国民健康保険と後期高齢者医療制度の被保険者が死亡した際、葬儀を行った人が申請すると支給される。ただ、金額は市区町村で異なる。東京都内でも23区が7万円、市町村が5万円(伊豆諸島の御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村は3万円)とばらつく。大阪、横浜、福岡市なども5万円。もっと少ない市町村もある。喪主が葬儀の領収書などを添えて申請する。

 「埋葬料」は、健康保険組合や協会けんぽなどの被保険者が死亡した場合、故人に生計を維持されていて埋葬を行った人に、一律5万円が支払われる。数万円~数十万円の埋葬料付加金を支給する組合もある。勤務先の人などでも、実際に埋葬を行っていれば5万円以内で実費が支給される。

 厚生労働省保険課によると、「埋葬」とは、納骨だけでなく、葬儀や火葬も含む葬送全般を指す。被保険者の被扶養者が亡くなった場合も、家族埋葬料(5万円)が支払われる。申請には、葬儀や火葬の実費(参列者への香典返しなどは除く)の領収書を添付する。

 葬祭費も埋葬料も、申請期間は執り行った翌日から2年以内。後回しにして忘れてしまう人も多いという。要注意だ。

 高額療養費は請求可

 生前の医療費が高額になり、健康保険の「自己負担限度額」を上回る窓口負担(保険適用の医療費に限る)があった場合、死亡後でも超過分を払い戻してもらえる。国保や高齢者医療保険制度に加入していた場合は故人が住んでいた市町村役場へ、会社員などの場合は健康保険組合や協会けんぽへ、相続人や代理人が請求する。申請書、故人との関係を示す戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しも可)が必要だ。

 こちらも申請期間は診療月の翌月から2年以内。医療費の通知後に申請するので、保険証返却と同時には難しいかもしれないが、忘れないようにしたい。

 世帯主の死亡時は 速やかに「変更届」

 市町村役場に死後14日以内に行わねばならない手続きでは、世帯主が亡くなったときの「世帯主変更届」も重要だ。死亡届と同時に行うなど、迅速な対応が望ましい。

 自営業などで、故人のほかにも国民健康保険に加入している家族がいる場合は、世帯主を書き換えた新しい健康保険証を発行してもらう必要がある。加入者全員の保険証を持って手続きするとスムーズだ。

 住民基本台帳法によると、同じ世帯の家族(世帯員)のうち、「15歳以上」なら誰でも世帯主になれる。該当者が1人しかいない世帯なら、手続きは不要だ。「ふたり暮らしの夫を亡くした妻」「妻と小学生の子供3人」といった世帯だ。

 一方、「妻と17歳の娘」のような世帯は、妻と娘が世帯主の該当者なので、どちらに変更するか届け出が必要になる。