ヘルスケア

延びる休校 子供たちの「学校ロス」に懸念 教師の負担も

 緊急事態宣言の延長で、感染拡大防止を重点的に進める「特定警戒都道府県」の対象13都道府県を中心に学校再開が遠のきそうだ。東京都教育委員会は5日、都立学校の休校を5月末まで延長することを決定。区市町村教委にも同様の対応を要請する。休校の長期化に教師からは生徒の落胆を心配する声が上がり、生徒も学校生活を送れないストレスを訴えている。

 心どうつなぐ

 「鏡の前で制服に袖を通し、登校を心待ちにしている子もいた。また1カ月近く学校再開が延びると、生徒の不安は増すばかりだ。登校できないまま、心の糸が切れてしまうことにならないか…」。東京都内の公立中学校で新1年生を担任する教諭(45)は政府の緊急事態宣言が延長された4日、生徒の心境をこう慮(おもんぱか)った。

 教諭の中学校では、4月末、ビデオ会議システムを通じて新1年生との面談を行った。事前に2週間かけて生徒の家庭のデジタル機器の状況などを調査。パソコンの貸し出し対応などもとった。「先生の顔が見れて安心したという子や、次は友達と会いたいと話した子もいた。大型連休後、学校に行けると信じていたと思う。延長後、新入生の心をどうつなぎ留めていけばいいのか」と話した。

 実際、休校の長期化による学級活動の空白は、子供の心に影響を及ぼしているようだ。

 1日に、5月末までの休校延長を知らされたという東京の私立高校3年生の男子生徒(17)は、「高校生活最後の1年なのに、やることもなく家で過ごす期間がまた延びたことがもったいない」と話す。級友とはまだ一度も顔を合わせていない。「6月の体育祭はどうなるのか。あったとしても、級友と仲良くなっていないままでの開催だからいやだ」と落胆した。

 意欲の刺激を

 萩生田(はぎうだ)光一文部科学相は1日の閣議後会見で、「地域の感染状況を踏まえて段階的に実現可能な学校教育活動を実施していくことが重要」と語った。実際に感染者数が比較的少ない青森、鳥取両県は連休明けの7日から県立校を再開するが、すでに5月末までの休校延長を決めた自治体も多数あり、今後、学校の再開時期をめぐり地域差が出ることが想定される。

 受験を控えた家庭も、更なる休校延長による影響を不安に感じている。東京都狛江市の中学3年生の受験生を持つ母親(54)は、「このまま休校が延びた場合、都立高校受験に必要な内申点をどう評価するのか。期末試験はあるのかも分からないし…入試に関わることなので心配だ」と話す。中学3年生の次男(14)も、「もしかしたら休校中の課題も内申に関わるのかもしれない。真面目にやらないと」と不確かな状況に自力で対応しようとしていた。

 休校延長による児童・生徒への心理的な影響について、法政大の渡辺弥生教授(発達心理学)は、「これまで当たり前だった学校生活での先生や友人との交流が遠のいたことで、かえって人とつながることの大事さを感じている」と指摘。そのうえで、「(生徒が心を折らないためには)教師から生徒に手紙や電話で声をかけるなど、できる手段で、休校中でも生徒の意欲を刺激することも大事になってくる」と話した。

 教師の負担も

 長引く休校は子供たちだけでなく、教員にも混乱をきたしている。「9月入学」案も急浮上し、教員は「慎重に決めないと大パニックが起きる」と危惧する。

 「最初の休校から2カ月たったが、ずっと指示が二転三転している。変わるたびに動いてはまた変わるので、結果的に何もできていない」。大阪府立高校に勤務する30代の男性教員は、こう打ち明けた。緊急事態宣言後、在宅勤務となり、自宅で生徒への課題を作ったり、電話で生活指導をしたりしている。

 生徒の自宅学習は、教員が作成した課題を郵送する形で実施。インターネットを使うオンライン授業の導入も検討されているが、実用には至っていない。「ネットが発達しても学校教育は紙と鉛筆で、学校に来ることが前提。日本の学校教育の遅れている部分が露呈した」と感じるという。

 男性が最も心配しているのは、入学・始業時期を9月にずらす「9月入学」の導入だ。「高校は進路や就職もあり、さまざまな調整が必要。学校内だけではなく社会の制度も変えなくてはならない」と指摘する。

 6月から学校を再開し、夏休みも授業を実施すれば、4、5月の学習の遅れは取り戻せるというが、リミットは今月いっぱいだ。「子供も教員もずっと振り回されている。長期的に見て、本当に大丈夫となってから慎重に決めないと、パニックになる」と訴えた。