【お金で損する人・得する人】コロナで激変する収入 不安に対処する家計管理の5ステップ
緊急事態宣言、外出自粛がはじまって1カ月。失業や在宅勤務による残業消滅、休業による収入減少など、今までと生活が一変した人も多いでしょう。コロナ禍では、従来とは異なる発想での家計管理が必要となります。今やるべき対策とは何かについてお伝えします。
収入が減って不安を抱えているだけでは何も解決しません。次の5つのステップに従って家計を見直してみましょう。
1.給与と社会保障制度からの収入を確認
まずは、毎月の収入を把握しましょう。年収や月収などなんとなく把握している人でも、手取りがいくらか正確に把握している人は少ないもの。会社からいくら振り込まれているかを確認します。給与天引きでの積み立て、例えば財形貯蓄などがある場合は、手取り額にプラスしてください。
給料や年金は多くの人にとって唯一の収入源です。自分が使える金額がいくらなのか把握することが、家計管理の第一歩です。
既に失業している人は、前回お伝えした失業保険給付額(雇用保険の基本手当)を計算しましょう。勤務先や通勤経路で新型コロナウイルスに感染された方は、労災保険の休業補償給付の額を確認、仕事以外や経路不明での新型コロナウイルス感染の方で会社員・公務員の方は傷病手当金の額を確認しておきましょう。収入を減らしたくない方は、有給休暇を使えば給与額は保障されますので、有給休暇を使うという方法もありますが、付与日数は人により異なりますし長くても2カ月程度の利用となります。収入減の状態が長引くことも想定されますので、他の収入(失業保険、休業補償給付、傷病手当金)も計算しておきましょう。
例えば、基本給が27万円、残業代が3万円の場合を考えてみました。(計算式は各HP参照の上)給料と有給休暇のケースでは社会保険料と所得税、住民税などで20%控除されることを前提としています。
・給料の場合の手取り(残業代などが含まれる)
30万円×0.8=24万円
・有給休暇の場合の手取り(基本給と経常的な手当)
27万円×0.8=21.6万円
・失業保険の場合の収入
20万~25万円(年齢と過去の収入による)※1
・休業補償給付の場合の収入
24万円 ※2
・傷病手当金の場合の収入
18万~24万円 ※3
※1 ハローワークインターネットサービス「基本手当について」より
いかがでしょうか、収入は確実に減少します。減った収入で生活が賄えなければ、次のステップに進みます。
2.毎月の支出を計算する
続いて毎月の支出がいくらなのか把握しましょう。支出額は1カ月間の次のように計算します。
4月末の残高-3月末の残高=直近1カ月で貯まった金額(1)。
手取り額-(1)=毎月の支出(2)となります。
将来の支払いが不安な人は、1.で計算した社会保障による収入と(2)を比べておきましょう。社会保障による収入>(2)であれば、生活を維持できるでしょうし、マイナスになる場合、支出の見直しが必要です。
社会保障による収入で生活ができる人以外は、3つ目のステップに進みます。
3.支出を書き出す
支出の見直しに取り組みます。(1)どこに、(2)いくら、支払っているか確認しましょう。支出の洗い出しに家計簿は必要ありません。日常生活に使っている銀行口座の預金通帳があれば十分です。日常生活の支払いをクレジットカード払いにしている人はクレジットカードの明細も準備してください。
一般的な支出として考えられるもので通帳に記入される項目は、電気、ガス、水道、携帯電話、固定電話、インターネット回線、生命保険(共済含む)、損害保険(自動車、自転車、自宅)、家賃、住宅ローン、マンションの管理費・修繕積立金、習い事、給食費、保育費、寄付、クレジットカードなどでしょうか。クレジットカードの支払いが多い人は、クレジットカードの請求明細も確認してください。
通帳に直接書き込んだり、クレジットカードの明細に書き込んでも構わない人は、書き出す必要すらありません。
4.不要不急の支出を減らす
今までは問題なく支払ってきた金額の支払いも、不要不急の内容であれば、一旦支払いをストップしたり、解約する必要があるでしょう。仕事がなくなった人や、収入が減った人は迷っている暇はありません。例えば、上記3の内容であれば、支払いを止めても日常生活に支障がないと考えられるものがあるはずです。筆者の感覚では固定電話、習い事、寄付はこのタイミングで一旦停止を検討すべきでしょう。インターネット回線については、携帯電話でも代替できる場合は不要ですし、無線LANの利用で通信費が圧縮できるなら残します。給食費や保育費は休校、休園となっている場合は支払いがなくなるはずです。食費など必要な支払いを減らすのではなく、不要不急の支払いを止めるのです。生活が元に戻ったら元に戻せばいいでしょう。
5.要支払いを先延ばしする
こうして書き出してみると、生きていくのに必要な支払いが多いことがわかります。生活に必要な公共料金などの支払いは、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、総務省から支払い猶予に対応するよう要請が出ています。上水道、下水道、NHK、電気、ガス、固定電話、携帯電話などの支払いを先延ばしにすることができますので、必要に応じて過去の請求書にあるコールセンターに問い合わせしましょう。
他にも、生命保険、損害保険、税金、社会保険料の支払いも猶予できる可能性がありますので、保険会社や税務署などに問い合わせたり、WEBサイトを確認しましょう。
支払いを先延ばしにする場合は、後々改めて支払いが必要となります。支払いが免除されるわけではありませんので注意してください。支払い猶予の期間は、利息がかからないことが多いと思いますが、支払い猶予期限を過ぎた場合は多額の利息が課される可能性がありますので、払わなくていいなんてラッキーでは済まないと覚えておくといいでしょう。
家計見直しの際は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することを念頭に、手元のお金にゆとりを持つようにしましょう。毎月の支出6カ月分の預貯金がない場合は、支払い猶予を検討、3カ月分に満たない預貯金の人は、支払い猶予を申請した方が安心です。
【プロフィール】高橋成壽(たかはし・なるひさ)
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら
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