【ブランドウォッチング】自粛生活のマンネリ打破に「ピザーラ」 日本ブランドのパーティー感演出力
新型コロナウイルス流行によるステイホーム生活が長くなりました。国難とも言える状況は誰に対しても仕事や生活の上でシビアな影響を与えていますが、一方でどうせならばせめて自粛生活の効用を発見しようという気分もあるかと思います。例えば、外食や出張が多かったビジネスマンであれば、三食家で食べる生活のシンプルな良さを見直している方も多いかもしれません。
でも、そんなある意味”less is more”(シンプルな中に豊穣あり)を見出す生活も長く続けば、ちょっと変化をつけたくなるのもまた人情。振り返れば、外食はプロが作った美味しい料理を食べるという目的もさることながら、家とは違う空間しかも家族以外の人が集まる場所という身近な非日常のエンターテインメント性を楽しむ意図が少なからずあったように思います。
でも外出自粛生活の今、以前は当たり前と思っていた外食の贅沢がままなりません。そんなマンネリ化しやすい家ご飯生活の中、束の間の変化を求めてフードデリバリーオーダーが今活況となっています。
対応に追われるデリバリーピザ業界
都市部に住む世帯限定の便利さではありますが、Uber Eatsなど配達手法の多様化もあって望めば和洋中、エスニック、リーズナブルな価格帯から高級まで結構なバラエティのデリバリーが楽しめます。また最近では事前に15~30分程度の時間指定が可能なサービスなどで待ちぼうけのリスクもかなり軽減されつつあります。
さて、そんな豊富なデリバリーメニューの中でも圧倒的な定番は、やはりピザではないでしょうか。二番手のお寿司を凌いで圧倒的な人気で、デリバリーと言えば一番に思い浮かぶメニューです。
実際にステイホーム生活の今、デリバリーピザ各社は配達スタッフを大幅増員するなど、対応に追われているのです。
ならではの特性
あらためて考えると、ピザならではのデリバリーに適した特性は驚くほどたくさんあります。
まず何といっても運ばれてきても美味しい。段ボール容器の工夫も大きく貢献しているようですが、容器の中で程よく熱気と水分で蒸されて家に届く頃でも十分美味しくいただけます。加熱調理してあることの安心感もデリバリー食品としては結構重要ポイントです。そして比較的に好き嫌いが出にくい上、単品メニューにも関わらず満足感がスゴイ。ついつい食べ過ぎることを警戒した方が良いレベルかもしれません。
意外と侮れないのが、後始末の容易さです。洗い物を出さずに、容器ごとゴミにしてしまえば片づけられる有難さは、その解放感も含めて非日常性を担保しています。せっかく美味しいものを食べても、普通は後片付けの憂鬱がつきものなのが家ご飯の宿命なのですから結構うれしいポイントです。
イタリアン+アメリカンの「パーティーブランディング」
ここでトップブランドの「ピザーラ」のブランディングをあらためて見てみますと、そんな非日常感を盛り上げる演出で一貫しています。何せピザはご存知の通り、イタリアン料理。今ではずいぶん身近になりましたが、やはり日本のモノではない特別感はまだまだ、そこはかとなく香ります。
大きくデザインされたおなじみ「PIZZA-LA」という赤文字Pのマークとともに英文字のみで構成されたロゴが洋物らしさを伝えます。よく見ると、ロゴの一部にJAPAN STANDARDとあります。日本の定番というような意味あいでしょうか。ホームページを見ると、商品開発コンセプトは、「毎日、日本人がたべても飽きないピザをつくる」とありますので、そんな気持ちを言葉に表したのかもしれませんが、あえての英語。
メニューを見ても、「プライムクォーター」とか、「バスターズクォーター」、「モントレー」など、英語をそのままカタカナにしたようなメニューが並びます。ピザのシズルカット(美味しさを伝えるイメージ写真)の背景が黒だったり発色からして写真もどこか日本離れしたスタイル。そう言えば、モデルさんがいつも外人さんだった印象があります。
そうなんです、このイタリアンとピザデリバリーの本場アメリカンテイストがミックスされたようなハイカラ感が、ピザーラブランドを、どこかちょっとだけ非日常感のあるブランドに仕立てているのです。
だからちょっと誰かの家でホームパーティーというシチュエーションでも、”パーティー”という洋風文化の文脈を壊さずに誰からも異論なく受け入れられてきました。
そしてパーティーブランディングというべきこの少々の非日常感があるからこそ、長い自粛生活のマンネリ感打破に今引っ張りだこなのです。デリバリーを待つあのちょっとしたワクワク感や、”ピンポーン”という到着のサインに”ニッコリ”しない家族はいないに違いありません。
意外。生粋の日本ブランド
でも皆さんご存じでしたか、実はピザーラ、生粋の日本ブランドだということを。1号店は1987年、東京目白。なんでも某アメリカ系のピザチェーンのフランチャイズ加盟を断られたことで自分たちのピザ屋さんをオープンさせることを決意した、創業者である日本人夫婦が立ち上げたブランドであるということを。
言われてみれば、ピザの箱には「ピザーラは、1987年に日本で生まれた宅配ピザです。」としっかりアピールされています。
そう考えるとバブル絶頂期に始まりはじけた時代を営々30数年、デリバリーピザを日本全国に定着させてきたタフブランドだと思い当たります。
誰もが長い自粛を余儀なくされながらも、流行収束後のリカバリーに思いを巡らせている今。そんな日本のパーティーブランドのエネルギーは、我々をちょっと元気にしてくれるように感じるのでした。
【プロフィール】秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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