新型コロナと戦う医療従事者へ 三つ星や老舗料亭が配る「お弁当プロジェクト」
新型コロナウイルスの感染に最前線で立ち向かっている医療従事者へ感謝の気持ちを届けようと、料理人らによる「お弁当プロジェクト」が始まり、府内では36店が、感染者を受け入れる3病院のスタッフへと無償で弁当を提供している。配送には府内などでタクシーを運行する日本交通が協力。料理人らが腕を振るう特製弁当に、医療従事者からは「励まされる」との声が上がっているという。
全国の料理人らでつくる一般社団法人「全日本・食学会」の事業で、東京、京都、愛知、岐阜でも実施。長引くウイルスとの戦いに疲弊する医療従事者を食の面からサポートすると同時に、休業要請で売り上げが減少している飲食店や生産者の支援につなげることも目指しており、弁当の代金は同会が負担する。
大阪では、今月9日から配達を開始。参加店は、店主同士の横のつながりなどで賛同の輪が広がり、焼き肉や焼き鳥といったカジュアルな店からミシュランガイドの三つ星レストランや老舗料亭までが集まった。
弁当は、3病院のうち1カ所に平日の毎日、残る2カ所に土、日曜を含む隔日で、それぞれ30食ずつを夕食として届ける計画。担当する店はリレー形式で日替わりしていき、6月上旬までと予定している期間中、各店が1回か2回、弁当を作ることになる。和食と洋食が重ならないようローテーションの順番にも気を配っている。
一方、容器や料理の内容は各店にお任せ。ハモやタケノコなど旬の食材にこだわるだけでなく、同じ和食でも焼き魚の種類や味付けを変えたり、豆ごはんや五穀米で変化をつけたりと、メニューがかぶらないよう参加店同士が情報交換しながら工夫を凝らしている。
参加店にとっては、店から離れたエリアにある病院への配送が難関。当初は弁当を作った店や同会大阪事務局のスタッフらが手分けして運んでいたが、日本交通が協力要請に応じてくれたことで、13日からは毎日2台のハイヤーによる“出前”が実現した。弁当の受け渡しも店の近くでできるようになった。
プロジェクトの弁当を、大阪市中央区の法善寺横丁にある浪速割烹「●(=品の口がそれぞれ七)(き)川(がわ)」が作ったのは今月中旬。作業台にずらりと並べた容器に職人たちが焼き物や煮しめなどを丁寧に盛りつけていく傍らにあったのは、医療関係者への感謝の手紙。店主の上野修さんは「医療に携わっている人たちは、私たちが思っている以上にしんどいはず。現場では休憩時間も少ないだろうが、ひとときの癒しになれば」と、料理と手紙に込めた思いを語った。
「法善寺浅草」の辻宏弥店長は「少しでもお役に立てればうれしい。ずっと店を閉めていたので、久々に料理ができて自分への励みにもなった」と料理店側のメリットに言及。同会大阪事務局は「医療スタッフは普段、コンビニ弁当ですませることが多いと聞いており、おいしいものが食べられてありがたいと喜ばれている」と、プロジェクトの効果を強調した。