【受験指導の現場から】リモート授業を導入しても肝心なのは教師の腕 小島よしお先生の人気も頷ける

 

 子どもを飽きさせない演出に感心

 いきなりであるが、「おっぱっぴー小学校」をご存じだろうか? この「小学校」の存在は知らなかったとしても、お笑いタレントの小島よしお氏なら、ほとんどの読者がご存じだろう。

 そう、おっぱっぴー小学校とは、小島よしお氏が講師として出演している一連の映像授業のことである。何を隠そう、筆者も数日前まで同校(?)の存在を知らなかった。先日、某報道番組が取り上げたことで初めて知った次第。

 まだまだ数えるほどの本数しか収録・公開されていないが、長さも1テーマあたり10分程度で、小学校低学年の子どもでも、最後まで飽きずに観ることができる仕立てになっている。これからのリモート授業のあり方を考える上でも参考になる、と感じた。「円周率」の回の最後のオチはご愛嬌であるが、これも最後まで観させるための仕掛けと捉えれば合点がいく。

 ちなみに、小島よしお氏は早稲田大学教育学部国語国文学科卒、小学生の頃は、小学校の教師になりたいと思っていたという。

 おっぱっぴー小学校 小5算数「円周率」

 お粗末な公立校 対応の早い私立校

 3月上旬以降、新型コロナウイルスの影響により全国規模で休校が続いていることから、各校、各予備校・塾などでなんらかの代替え措置がとられている。その方法や開始時期はさまざまであるが、総じて、公立に比べて私立や民間のほうが、格段に対応が早い。身近なところからいくつか挙げてみたい。

 【筆者が非常勤講師を務める大学・大学院(地方の大規模校)】

 緊急事態宣言発出の約1週間後、4月中旬のうちに、前期授業をGW直後の開始とし、同時に前期授業はすべてメディア授業で代替えする(主にZoomとGoogle Classroomを使用)ことを決定。

 【知人の子息が通う都内の私立大学附属高校】

 GW以降もしばらくのあいだ登校中止。その間は、メール添付で随時送られてきた課題に取り組み、後日提出。5月11日からは当面の間、平日の朝一から夕方までGoogle Meetによるオンライン授業を実施。

 【知人などの子息が通う公立の小・中・高校】

 副教材やプリントなど、学校から課題が指定されている。休校が続いているにもかかわらず、復習中心で単調な課題が多い。課題の量は普段の宿題と大差ない学校が多く、映像などを活用しているという話は聞かない。登校日が設定されることはあっても、家庭訪問はおろか、電話1本すらないらしい。

 【知人や個別指導の生徒が所属する大手塾(中・高受験)】

 4月初めより、当初からのカリキュラムに沿って、社員講師による無観客試合ならぬ“無生徒授業”を収録し、映像授業を配信。生徒は随時その動画を視聴し、各自で課題を進める。塾によっては、Zoomなどでオンライン授業を行っているところもある。

 ちなみに、筆者が主戦場としている塾・予備校では、映像授業に加えて主に3種類の対応をとっている。一つは、生徒が映像授業を視聴した後に取り組んだ課題の一部を宿題として提出してもらい、講師は週1回程度出社して、添削したり電話フォローを行ったりしている。もう一つは、生徒が各教科、週1本の映像授業を視聴するのと並行して、Zoomでクラス単位に学習サポートを行っている。

 さらに、生徒が課題を進める中で質問したいことが出てきた際には、保護者が質問事項(テキストと画像)をサーバーにアップすると、そのお知らせが自動的に担当講師にメールで送られてくる。講師は画像をダウンロードした後、回答(テキストと画像)を作成してサーバーにアップすると、その内容が自動的に生徒側に送られる。いわばクローズドなストレージシステムであるが、休校要請後、急遽構築されたものである。平常時から、映像授業やe-ラーニングを併用できる状態にあり(各教室に個人用ブースあり)、ICT(情報通信技術)に慣れている社員スタッフが多いことが幸いしたようだ。

 国の対応・指示を待ってはいられない

 休校要請が出されてこの方、「学習格差」が叫ばれて久しいが、国や都道府県(政令指定都市)がやることと言えば、目的決めて予算を付けることくらいで、ICTに関しては何も実行できていないに等しい。

 かと思えば、ある新聞のWeb版に「オンライン学習、国が開発へ…作問から成績評価までの活用目指す」という記事(4月27日付)が掲載されたので目を通してみると…自動採点されるという点を除けば、内容も方法も活字教材で学習するのと大差ない。「これからは5G!」という時代に、インタラクティブ性もなく、勘違いも甚だしいと感じるのは筆者だけだろうか。記事中には「問題は、…国立教育政策研究所などと協力して拡充…」とあるが、文科省の天下り先ではないか。呆れてものが言えないとは、まさにこのことだろう。

 どの方式のリモート授業にも向き不向きがある

 閑話休題。時勢柄、テレワーク、リモートワーク…といった言葉が飛び交っているが、仕事と違って学習や授業に関しては、まだ用語の定義が確立されていない感がある。筆者なりに整理してみると以下のようになる(タブレットなどを使って独りで取り組むe-ラーニングは除く)。

リモート授業について整理してみると…(SankeiBiz)

 リモート授業にどの方式が向いているかは、学習の段階や目的、生徒の学力レベルや性格、受験経験の有無などによって違ってくる。初出単元なのか復習なのか、暗記事項が多い単元なのか計算問題が中心の単元なのか、発展的な内容を理解したいのかテスト対策なのか、解説が中心なのか演習が中心なのか…。

 生徒の性格や学習経験という点で言えば、一般的に学年が下がるほどリモート授業による学習は難しくなる。生徒が大手塾に通っている個別指導先(生徒は小5)からも、映像授業に関して、「PCの前でじっとしていられなくて…」「聞き流してしまって…」「理解できてない(しづらい)みたいで…」と聞かされている。

 中学生以上であっても、受験経験(成功体験)があり自宅学習の勘どころが備わっている生徒なら効果的でも、映像を視聴してもその後に何をどのように進めたらよいのかイメージできない生徒だと、一方通行の解説では成果が出づらい。

一般的に学年が下がるほどリモート授業による学習は難しくなる(Getty Images)

 さらには、同じ映像授業という形態であっても、生徒が飽きずに集中して学習できるかどうかは、講師自身の工夫(演出)によるところが大きい。例えば、板書をしながら淡々と説明するのと、冒頭のおっぱっぴー小学校のように、常に生徒に話し掛ける体で、時によっては身体全体で表現し、全員に質問を向けたら少し間を置いて「そう! ○○だったよねぇー!」と念を押してから次に進む、といったのとでは、記憶の残り方がまるで違ってくる(余計な印象を残すと逆効果ではあるが)。

 今後、5Gの普及に伴って、リモート授業でも双方向化が進むことは間違いないが、一時的にはICT環境格差も広がることになる。その部分は、政策でカバーしてもらうしかないが、現場にいる教師・講師の適性も大きく変化していくことだろう。

 説明が分かりやすい、話が面白い、熱心で面倒見がよい…といった、今も将来も変わらないであろう資質に加えて、学習メディアを上手に組み合わせることができるかどうかも含め、ICTを活用した学習の“場づくり”の力が、教える側の重要なスキルの一つになっていくはずだ。

 これから塾を選ぶ(私立の中・高校や大学を選ぶ際も同様)のであれば、今も続く休校要請に対して、その教育機関がどんな対応をとったのか(とれたのか)を吟味することの重要性が、一段と高まったのではないだろうか。

【プロフィール】吉田克己(よしだ・かつみ)

講師

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら