【5時から作家塾】車の鍵がデジタル化、スマホで開閉するだけでなくメッセージでの共有も
スマートフォンを車の鍵として使えるようになる時代がすぐそこまで来ている。スマホを使って遠隔で車の鍵を開けたり、エンジンを始動したりすることが可能になる。
アップルは現在、iPhoneを自動車の鍵にする「カーキー(CarKey)」という機能を開発中であると判明している。今年2月に開発者向けに公開されたiPhone向けのiOSベータ版で、同機能に関する記述が見つかったのだ。それによると、カーキーは近距離無線通信規格NFC対応の自動車で動作し、ユーザーはiPhoneを車のドアの近くに持っていくだけで、鍵を開けることができるという。しかもiPhoneを事前にロック解除する必要がない。
スマートフォンを車の鍵として使用する技術の開発は、アップルだけが進めているわけではない。ヒュンダイは2019年3月、スマホを車の鍵として利用可能にすると発表。合わせて発表されたセダン「ソナタ」は、スマホと連携可能なデジタル鍵機能を搭載している。またテスラも、車をスマホでロック解除する技術を導入している。なおBMWは、アップルと協力し、カーキーに対応した車両を開発中との報道もある。
また「カー・コネクティビティ・コンソーシアム」という業界横断型の団体が、スマートフォンと自動車を連携させる通信ソリューション向けの技術を推進しており、アップルもこの団体の会員となっている。
業界団体は今年5月、スマートフォンを車の鍵として利用するための業界標準規格「デジタルキー2.0」をまとめ、団体のメンバーに向けて公開した。これはNFCを利用し、車のデジタル鍵を安全に保管、認証、共有するための規格である。説明によると、規格はスマホのバッテリー残量が少なくても動作する「低電力モード」に対応する。これはおそらく、iPhoneでいうところの「予備電力機能付きエクスプレスカード」と同様の機能だと思われる。つまり、スマホのバッテリーが切れて電源がオフになってしまっても、一定時間内であれば、車の鍵としては使えるということだ。
また同規格には、デジタル鍵を友人とも共有できると記されている。共有する方法は記されていないが、アップルが開発を進めているカーキーには、メッセージアプリでデジタル鍵を第三者に送信する機能が含まれていることがわかっている。iOSベータ版で見つかったカーキーに関する記述によれば、デジタル鍵は1対1のメッセージでのみ共有可能で、グループチャットでは共有できない。またデジタル鍵は家族などと半永久的に共有することも、友人と一時的に共有することもできる。なお、アップルはiPhoneだけでなく、アップルウォッチでも車のデジタル鍵を利用可能にする計画を進めている。
スマホを車の鍵として使えるということは、具体的には何ができるようになるのだろうか。車のドアロック解除はもちろん、エンジンの始動、シートの調整、ラジオ番組の選曲、そのほか空調の温度設定なども、スマホから遠隔で行うことが可能だ。こうした操作の一部は、スマホの専用アプリを使ってすでに一部の車では行うことができるので、それほど驚きではないかもしれない。
カー・コネクティビティ・コンソーシアムは、すでに次の規格である「デジタルキー3.0」の策定に向けて動き出している。次規格はBluetooth LEと超広帯域(UWB)の両方に対応するため、スマホを車のドアに近づけなくても(つまりポケットやバッグの中にいれたままでも)、ロックを解錠できるようになる。
スマホを車のデジタル鍵として使用する上で、最も重要なのがセキュリティだろう。特に誰かと共有する場合、盗難の危険性が高くなる。利便性の向上と同時にセキュリティの堅牢化が、今後の課題となる。(岡真由美/5時から作家塾(R))
【プロフィール】5時から作家塾(R)
1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。
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