受験指導の現場から

夏休みの追い込みは無理 来春の受験は例年以上に計画性と堅実性が物を言う

吉田克己

 長期休暇の短縮も予定していた授業時間数には足らず

 仄聞するところによると、都立高校と区立中学の夏休みは、それぞれ2週間だけになるという。さらに、冬休みは1週間だけになる模様である。

 例年であれば、夏休みは6週間、冬休みは2週間ほどであるから、合わせて8週間。それが3週間となり、5週間も短縮されることになる。もっとも、3月の3週間を含めれば、すでに9週間ほどの休校期間が続いており、その半分程度しか取り戻せないことになる。さらに、登校再開からしばらくのあいだは、授業は午前中だけだったり午後だけだったりといった、学年ごとの分散登校となるなど、授業時間数がすぐに元どおりになるわけではない(地域にもよるが)。

 ということは、新学年が始まるはずだった4月以降の遅れ分は取り戻すが、3月の休校期間には無理には遡及しない、というのが現場での現実的な対応になりそうだ。

 例年どおりの夏期講習期間での追い込みは期待できず

 一方、塾はというと、どの学年も映像授業を中心に粛々とカリキュラムを進めているようだが、夏期講習会は8月に入ってからの開講とならざるを得ない。学校が長期休暇の期間は、本来どの塾も書き入れ時であり、受験学年の生徒にとっても「夏休みの過ごし方が受験の成否を決める!」と言われるくらい大事な時期なのだが、今年は良くも悪くもそうはならない。なにせ、夏休みは2週間しかない。

 となると、来春受験する生徒については、例年のような「部活期間が終わった後、夏休みに猛然と追い込みをかける」という絵図は描けない。昨年まで以上に、自律的にこつこつと努力できる子どもでなければ、勝利の女神は微笑んでくれなくなる。

 2学期が始まるまでの学習計画をしっかりと立てる

 本稿が公開される前後には、それぞれの学校や塾・予備校から2学期が始まる頃まで、あるいは3学期が始まる日までのスケジュールが公表されるはずだ。受験学年でなければ、それらのスケジュールに乗っかっていけば大きな問題はないだろうが、小6や公立校に通う中3・高3となれば、学校や塾・予備校の授業がない時間を何にどう使うかをしっかり決めてかかりたいところだ。

 とくに、半日しか学校がない日と土・日・祝日(登校・登塾しない日)の昼間(夕食までの時間)をどう過ごすか、有意義な時間にできるかが、大きな差につながる。

 筆者の経験に照らすと…例えば、学校が午前中だけの日、昼食後そのまま自宅にいると、たいがいの生徒は夕食後まで勉強しない。休日も、午前中はちょっと勉強していたかと思うと、昼食の後はだらだらしてしまうか遊びに出てしまう。

 そう、学校から帰って来てから(学校や塾に向かうまで)の時間を質の高い学習時間にできるかどうかが、まずは夏休みに入るまでの勝負どころであり、この期間に(なるべく早く)上手く軌道に乗せ、2学期が始まった時には軌道修正程度で済むようにしたい。

 久しぶりの登塾や授業で気がかりなこと

 もし、貴方の子どもが小6か中3で、宿題の多い塾に通っているのであれば、筆者としてはやや気がかりというか、親が気に留めておいたほうがよさそうに思うことが1つある。

 久しぶりの登塾・授業となれば、講師としても自然と熱が入る。と同時に、ほぼ2カ月ぶりに対面で授業をすれば、貴方の子どもにぽろぽろと穴が見つかるかもしれない。そして、その穴を埋めさせるべく、ばんばんと課題を与える講師が出てきてもおかしくはない。

 熱中すればするほど、思い入れが強くなればなるほど、周りが見えなくなるのは大人も同じである。特定の科目の課題量が多くなりすぎて教科間のバランスを欠いてしまい、延いては、我が子の物理的な限界を超えてしまう危うさがある。

 そういう時、子どもはどういう行動をとりがちになるかと言えば…そう、終わらせること(解答欄を埋めること)が第一義的になってしまい、「あれもこれも」が結果的に虻も蜂も取れない1日を生んでしまうことになる。我が子が、どんな勉強のしかたをしているか、塾の再開後しばらくは注視するに越したことはない。

 受験生同士の学習格差はほぼない?

 年度が明け、2度目の休校期間に入った頃、「学習格差がぁ~」と声高に叫ばれた時期があった。たしかに、地域が異なれば休校期間も違ってくるため、地域格差はある程度生じてしまう。また、同じ地域の小学校でも公立と私立とでは、学習環境に大きな差があることも事実だろう。

 しかし、事を受験に限れば、緊急事態宣言の期間が異なる都府県を跨いでの進学はレアケースであり、受験目的で塾に通っている受験生同士の不公平感は、“個人的には”ほとんど感じない。公立中学と私立中学の差は大きいが、私立中学から高校受験をするケースは稀である。逆に、公立高校の高3生は不利な立場に置かれてしまっているが、高3ともなれば、学校の授業に頼らず自分で試行錯誤できるようでなければ、難関大学に合格することも、その後の就活も覚束ないだろう。

 とまれ、子どもよりも親が先に焦ってしまってはいけない。少なくとも、焦っていることを子どもに悟られることは避けたい。これも私見だが、叱っても効果はなく、褒めても一時的で終わるのが常である。やる気がある子は励まし、やる気がない子は諭す。学校の再開は、来春の受験に向けて、親子全員で仕切り直しの家族会議を行うよい機会ではないだろうか。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら