コロナ禍で残業時間が減るなどして、収入が減少した方も少なくはないでしょう。今夏のボーナス(賞与)も大幅な落ち込みが予想されています。社会経済が停滞しても会社は存続し続けるのが使命なので生き残るのに必死です。人件費削減もやむを得ない場合もあります。
しかし、会社の都合と個人の都合は一致するわけではありません。ならば、「会社に頼らず、自分を頼る」という生き方が、これからはより大切となります。
収入を増やす=給与以外の収入をつくるという発想
家計は、いうまでもなく「収支(フロー)」と「貯蓄など(ストック)」の関係です。収支が黒字なら貯蓄は増え、赤字なら減ります。貯蓄を増やしたいなら収支改善がマストです。
その方法は収入を増やすか支出を減らすかなのですが、後者ばかりが注目されがちです。しかし、支出には安易に減らしてはならないもの(食費や保険料など)、容易には減らせないもの(住居費など)も多く、「減らす」アプローチだけでは効果に限りもあります。
今後はもう一方の、収入を「増やす」アプローチが重みを増すでしょう。もちろん、現在の給与をアップさせるのは努力次第でなんとかなる話ではありません。自分自身で努力して給与以外の収入を持つという発想、マルチプルで多様な二毛作・三毛作的な働き方がスタンダードになっていくやもしれません。
リモートの生活相談でも稼げる時代
「副業」「兼業」というフレーズは、政府の推進もあり、この数年でよく見聞きするようになりました。
副業といえば、アフィリエイトのようなインターネット上での商取引や、ユーチューバーなどのような情報発信、あるいは士業などの資格を活かした仕事を思い浮かべます。もし、こうした特別なスキルをお持ちなら、それにチャレンジしてもよいでしょう。ですが、自分で宣伝用のホームページをつくり営業をしなければならず、ハードルは決して低くはありません。そのハードルの高さの前に、二の足を踏んでいた方も多いと思います。
しかし、ようやくインフラや社会の常識が追いつき始めました。
例えば、ネット上で「フリーランス 登録」と検索すると、スキル提供者と利用者とをマッチングするサイトが増えています。登録できる項目はITやデザイン・ライターのようにキャリアや特技を活かせるもののほか、〇〇代行や〇〇相談といったものまであり、実に多様です。〇〇には営業や経理といったビジネス向けはもちろん、心・恋愛・子育て・家事など生活に関わるものまであり、特別なスキルは要りません。
サービス提供もリモートやメールなどのオンラインで完結でき、すき間時間で対応可能です。自分の提供できる(提供したい)サービスを、そこに登録するだけで、専門的な広告や営業や決済にかかる手間なく手軽に始めることができるのです。
副業への懸念として「本業とのバランス」や「過重労働」を挙げる方もいますが、新型コロナウイルスの影響で、在宅でのリモートワーク(テレワーク)が日常になる人も増えました。通勤時間の削減などで、これまで以上にすき間時間を確保しやすい状況になりつつあります。今がチャンスと捉え、在宅でできる副業を始めてみるのも手ではないでしょうか。
有償ボランティアで将来のセーフティネットづくり
副業が認められていない会社にお勤めでも地域福祉の有償ボランティアなら可能でしょう。
会社員の方にはあまり知られていませんが、お住まいの地域には、実に多様な有償ボランティアがあります。休日や週末を利用し、高齢者宅を訪問して郵便物を整理したり会話をしたりする、介護疲れの家族の話しを聞く、子どもの居場所をつくるなど、最寄りの社会福祉協議会ではこうした情報を提供してくれます。
これらは地域のセーフティネット構築のための貢献活動ですが、周り巡り、いずれ自分の老後の心強いセーフティネットになり得ます。週末や休みの日に、お住まいの地域に参加するのも一考ではないでしょうか。
人生は長い かつて夢見た希望をバイトで叶える
人生100年といわれる時代、これまでとは異なる常識が当たり前になるやもしれません。
100年時代では80年時代より高齢期が20年延長します。65歳でリタイアした場合の余生が15年から35年に延長するのです。この長さは、現役生活にも匹敵する時間でしょう。これまでのような「学ぶ→働く→老後・余生」という画一的な人生でなく、これまでのような1つのキャリア(仕事)しか経験できないわけではなく、2つでも3つでも新しいキャリアを積んでいくことも可能です。
60歳で定年を迎え65歳~70歳まで生活のために雇用延長するという働き方だけではなく、いったん学び直し、その後に全く異なる働き方をするというスタイルも考えられます。
さらに、「もう一度人生をやり直す」という発想もあるやもしれません。子どもの頃や若い時に希望した「なりたい職業」に就くこともできます。
かくいう筆者も、パン屋になりたいと思っていた頃があり、最近はそれを叶えたいと本気で考えています。とはいえ、投資しリスクある個人経営をする覚悟まではありません。ではどうするか。
今の仕事は続けたまま、並行してお気に入りのパン屋さんにアルバイトやパートで働くのです。折しも筆者は早期に個人事業というフリーランスを選んだので、厚生年金保険の加入期間をもう少し増やしたいとも思っていました。非正規雇用でも就労時間により厚生年金被保険者になれるようになったのは追い風です。
生地をこねたり焼いたりまではなかなか難しくとも、心地よい匂いに囲まれ、お金をもらえ、就労環境によっては年金までも増やせるのですから一石三鳥というもの。
これからの時代、本業は本業としてキープしつつ、無理して一国一城の主にならずアルバイトやパートなどの非正規雇用を利用し、全く異なる好きな職種を転々とする働き方も、一つの常識になるのかもしれません。
多重な収入構造がスタンダードになる可能性
人生は一度きり。時間は戻せません。でも、職業は生涯唯一でなくやり直せるようになりました。それでいて多重な収入構造を作り上げ、家計収入を増やせる時代になろうとしているのです。もちろん、すぐに収入を倍増できる近道ばかりではありませんが、将来への種を撒ける機会は、着実に広がっています。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら