従業員に提示した「信じられない」就業規則
私たちが運営するGGインターナショナルスクール では、毎年4月にAll Employee Meeting(全体会議)を行っています。この時期に新しい配属になるため、また新しく参画する教員との交流の意味もあります。しかし、コロナの影響で今年の全体会議は延期されたままでした。団体の理念や価値観を共有し、議論する場はとても大事だと考えているため、「いつになったらできるかな…」と心配していました。
緊急事態宣言が解除され、国からイベント開催の“お許し”も出たため、先日晴れて全体会議をおこないました。その会議で私は、スクールの経営者として、新たな就業規則や方針を発表しました。
新たな就業規則・方針
1.教室内への携帯持ち込み禁止
数カ月前よりwifiに新しい機能をつけた。仕事と関係なさそうな内容をインターネットで閲覧した場合、AIが判定してアラートが発せられる仕組みになった。数カ月間データ収集し分析した結果、業務中に個人の携帯電話の使用は生産性が下がると判断したため
2.業務に関係ない時間をタイマーで計る
在宅勤務中や出勤中を問わず、トイレの時間や飲み物を飲んだ時間など、業務に関係ない時間はすべて休憩時間とみなす=勤務時間としてみなさない
3.いっさいの私語を禁止する
業務に関係ない時間はすべて休憩時間とみなす
青ざめる従業員たち
新しい規則を発表している間、従業員の顔が徐々に青ざめていきました。「ついに、社長もおかしくなってしまった」「この会社は、終わった」という驚きと諦めの表情が忘れられません。
規則を発表した後、従業員の間でグループをつくり話し合ってもらいました。
従業員たちが、「本当にこの規則を設けるのだろうか…」と半信半疑で、テンションも低いままグループワークに取り掛かって5分程度が経過したところ で…ネタ明かし。
「Tricked Ya~.」(日本語だと「ウソぴょーん!」)
「ネット使用内容を判断する機能付きwifi」なんていうものはありませんし、携帯電話は業務上、連絡帳アプリ などを使用するため必要です。トイレに行くたびに時間を計ることはしませんし、もちろん私語も許されます。GGインターナショナルスクールは、いつも話し声が聞こえ、和気あいあい、にぎやかでとてもエネルギッシュな場所です。雑談がなくなるというのは、学校の魅力を取り上げるようなものです。本当にこのような規則を導入したら、生徒や先生のために、私を社長の役職から引っ張りおろして下さい。
ちょっぴり意地悪な発想でこのようないたずらを従業員にしましたが、伝えたかったメッセージがあります。
いたずらを通して伝えたかったこと
会社が監視・管理をしようとすると、従業員は働きにくく、息苦しくなります。会社にも管理コストが発生しますし、本来価値が出るところではないところばかりに目が行くことになります。互いに不幸な働きづらい職場になります。
私がウソの新規則発表を通じて従業員に伝えたかったのはこういうことです。
- 信用しているからルールはできる限り少なくしたい。
- でもそれには、一人ひとり考えて行動する必要がある。
例えば、細かいことですが、遅刻ひとつとっても、鉄道会社からの遅延証明書の提出は求めません。「電車が遅れていたため出勤時間が遅れた」と言われればそれを信用します。第三者のお墨付きを、わざわざ時間を使って発行してもらう必要はないと考えています。
私は従業員のことを家族同様に考え、信用しています。でなければ、大事なだいじな生徒の命を先生たちに託しません。
ヒエラルキー VS ヘテラルキー
理想的で完璧な社会とは、互いを思いやり、会社の立場、経営者・管理職の立場、中間管理職の立場、現場の立場、それぞれがそれぞれの立場を理解してあげられる社会です。互いに“配慮の鬼”になれば、ルール、規則というのは不要です。ただ、そのようなユートピア(理想郷)は存在しませんので、社会には一定のルールが必要です。
しかし、トップが決めたルールや指示に従うだけの「ヒエラルキー型(Hierarchy)社会」では、ルールに縛られ過ぎて個々の自由な発想を阻害してしまいます。かといって、個の自由を尊重する「ヘテラルキー型(Heterarchy)社会」にも、個が強すぎてカオスになるリスクがあります。
【Hierarchy ヒエラルキー】
トップからの指示に従う社会
規則・ルールが大事≒縛られて自由な発想ができない
【Heterarchy ヘテラルキー】
コミュニティの中でコラボレーションする社会
自由が大事≒個人が強すぎてカオス(混沌とする)
この2つの間でうまくバランスを取りたいものです。ルールで固められた同質の人が「量産」されるようなヒエラルキー型に偏った時代は終わりに来ており、今後はより「個」を尊重するヘテラルキー型の社会に移ろうとしています。
リーダー育成は「育てる人々」のマネジメントから?
私たちGGインターナショナルスクールが育成を目指すリーダー像も、ヒエラルキー型(Hierarchy)の組織の中でトップダウンで周りに指示を出すような人ではなく、コミュニティ(Heterarchy)の中で求心力がある、人と人を繋げられるような人です。
学校としての理念も同様です。生徒たちはお互いの多様性(個)を認めつつ、自分で考えて行動することが大事だと考えております。その運営をする会社も同じような方針となるのは自然なことだと思います。先生がロールモデルとなって、率先して「自由」を謳歌して考える人にならなければ、子どもに同様のことを教えられないですよね。
ちょっと堅苦しい話になってしまいましたが、「楽しく、自由にやるためには、考えて行動しましょう」というとてもシンプルなことともいえます。全体会議は、全員で改めてこれを共通認識として持つ良い機会となりました。
余談ですが、いたずらをすると必ず「お返し」をしてくるのがGGインターナショナルスクールのユニークな従業員たちです。全体会議のいたずら以来、私が会議中であろうと来客中であろうとわざわざ私に確認を取りにきます。
- 「トイレ行くよ!!!! トイレ行くからね!!」
- 「飲み物飲もうと思うんだけど良いと思う?」
- 「〇〇について調べたいんだけど、業務かの線引きが難しいから教えて」
こうして私はいま、“いたずら返し”される日々を送っています(笑)
コロナ時代は働き方のセルフマネジメントが重みを増す
緊急事態宣言が解除され、会社や日常が少し戻ってきましたね。スクールの保護者や友人の話を聞くと、必要に応じて出勤が始まってはいるものの、リモートワークが完全になくなったわけではないそうです。コロナを機に本格的に働き方が多様化してきたといえるかもしれません。
そういった意味で、会社にもよるでしょうが、コロナ時代の人事評価は成果主義にならざるをえないと思います。ルールや指示に従うだけでは限られた成果しか生まれません。時代に取り残されないためにも、与えられた裁量(自由)を活かしながらの「自己管理(セルフマネジメント)」がさらに重要性を増します。オン・オフの切り替え方など、自分自身で生産性を上げていく練習をしましょう!
【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら