収入増加と支出削減、「J1の桜」が特別チームでコロナ禍に立ち向かう
新型コロナウイルス感染拡大の影響で休止していたサッカーのJリーグは、今日7月4日再開のJ1に先立ち、6月27日にいずれも無観客で、J2が再開、J3が開幕した。7月10日以降の試合から観客を入れる方針で準備が進められているが、当面は入場制限などがあり、どのクラブもチケット収入やグッズ収入の大幅な減少は免れない。スポーツから遠ざかっていたファンの関心を呼び戻す必要もある。正常化に向け、各クラブはどうコロナ禍に立ち向かっているのか。J1のセレッソ大阪を例に検証した。(北川信行)
プラスとマイナス
ゴールデンウイーク(GW)明けの5月7日、事業部長の橋本毅夫は新たに立ち上げた「収益改善プロジェクト」のメンバーを決め、招集をかけた。当初は前日の6日までだった緊急事態宣言はGW中に延長が決まり、街にはまだ自粛ムードが漂っていた。Jリーグ自体も活動再開の時期が見通せず、「クラブは冬眠しかかっているような状態だった」(橋本)という。
チームは他クラブに先駆けてオンラインでの練習を取り入れ、外出自粛中の選手らはフィジカルコーチの指導の下、自宅でトレーニングに励んでいた。先が見えない状況は続いていたが、運営スタッフもクラブの再始動に向け、かじを切る時期にきていた。
プロジェクトでは、部署を横断する形で、2つのチームを特別編成した。一つはプラスを狙う「収入増加チーム」。もう一つは、マイナスを少なくする「支出削減チーム」だ。未曾有の災厄を乗り越えるには、2つのチームが両輪となり、休止しているクラブ運営を前に進める必要があった。
「収入増加チーム」のメンバーは、社歴の浅い者のリーダー格が中心。先例にとらわれずに、さまざまなアイデアを出し、スピード感を持って実行に移すためだ。一方の「支出削減チーム」は、日常的にクラブの予算を把握している各部署のグループ長を中心に編成した。シビアな削減には、予算を熟知している必要がある。さらに、無駄を洗い出し、わずかなぜい肉をそぎ落とす方法を見つけるには、経験も大事だった。
タイミング見計らい
2つのチームは毎週火曜日の午後にミーティングを開き、意見交換。「収入増加チームから出てきたアイデアの数は3桁にのぼる。他のクラブで既に行っていたものや、インターネットで発見したものもある。とにかく、やってみようというのが大事だった。支出削減チームには、いろんなものを見直してもらい、ニアピン(近似値)を出せるように指示を出した」。橋本は意図をそう説明する。
収入増加チームの発案から、クラブが6月10日に発表した「なんかせなあかん!」プロジェクトが生まれた。キャッチフレーズは「今までの常識にとらわれないさまざまな企画に挑戦していきます」「サポーターが『さすがセレッソだ! 大阪だ!』とワクワクするような企画を行っていきます」。それらは、収入増加チームが与えられたタスクを自ら具現化した言葉でもある。
第1弾として打ち出した、本拠地ヤンマースタジアム長居にサポーターが購入した応援バナーなどを掲出する「長居をピンクに染めよう~桜開花宣言~」では、初日だけで400万円を超える売り上げがあった。無観客の「大阪ダービー」となる再開初戦に向けては、出前サービス会社大手「出前館」とコラボ。同社を初めて利用するサポーターに期間限定で、値引きクーポンを配布している。橋本は「収入増加チームがスケジュールを見ながらタイムリーに、タイミングよく企画を発信してくれていることが大事」と強調する。
縁の下の努力続け
今、クラブは「試合の再開日が決まり、スイッチが入った状態」(橋本)だ。
大阪、京都、兵庫の2府1県で緊急事態宣言が解除されたことを受け、チームも5月25日から少人数のグループに分かれて練習を再開し、その後、全体練習に移行。既に練習試合も行い、監督のロティーナは6月23日のオンライン会見で「ほとんどの選手が90分間プレーできた。いい準備ができている」と自信を口にした。J3に属するU-23(23歳以下)のチームは一足早く、6月27日にヤンマースタジアム長居でガイナーレ鳥取と開幕戦を戦った。
橋本はコロナ禍におけるチームと、自身をはじめとした運営スタッフの役割をこう話した。
「選手がプレーで地域やサポーターに感動を与える。僕らは裏方。当たり前のように試合を整えるのが仕事。長居を舞台にした3~4時間のお祭りを楽しんでもらう。スタッフはそういうところに喜びを感じている。社長の森島(寛晃)も労を惜しまない。血の通ったスタジアムをつくり、セレッソ感、ファミリー感を出していければ」
縁の下の努力が、コロナ禍を克服する鍵を握る。=敬称略