新時代のマネー戦略

40代になったら、知らないでは済まされない「親の介護」の基本

岡本典子

 大まかにでもいいので予備知識を

 突然、親御さんの介護が必要になったらどうしますか? 人生100年時代と言われていますが、コロナショックにより皆さんの親御さんの日常生活にも様々な影響が出ているかもしれません。親が遠方にいてなかなか会えないので気づきにくいケースや、同居していても、日常生活に流され気づかないケースがあるかもしれません。あまり考えたくないし、まだまだ先のことと思われているかもしれません。しかし、いつか親に介護が必要になることも想定し、いざというときに慌てず、冷静な判断ができるよう、大まかな予備知識をインプットしておかれることをおすすめします。

 コロナの影響が親世代にもじわり

 高齢になっても、うちの親は元気で活動的だから大丈夫! と思っているかもしれません。趣味活動や地域活動、友人知人との語らいを可能な限り続けていきたいというモチベーションで、体力、気力を維持している方もたくさんいらっしゃいます。

 しかし、新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛で、元気の源である様々な活動も休止となり、親御さんも自宅に籠るようになりました。これにより運動量が減少し、筋力が落ち、コミュニケーション不足による脳への刺激も減り、微妙に保ってきた心身のバランスが崩れてきている方も出てきています。私自身、日常生活習慣としていたジム通いができなくなり、元々ない筋肉がさらに衰えたと実感しています。

 総じて、親世代のコロナショックによる心身への影響は、若い人たち以上に大きいといえるでしょう。

 介護が必要になった原因の第1位は「認知症」

 2019年国民生活基礎調査によると、介護が必要になった原因の第1位は「認知症」で17.6%です。認知症の約6割を占めるアルツハイマー型認知症では、認識力、記憶力、判断力など脳の機能が徐々に低下するため、気づきにくいといえます。第2位は「脳血管疾患」(16.1%)で、直ちに治療が行われますが、高齢期に発症した場合、後遺症が残り、介護が必要になるケースが多くなっています。これら2つは脳が原因で、介護が必要になります。

 第3位から第5位は「高齢による衰弱」「骨折・転倒」「関節疾患」です。なお、病気やケガで長期間病院に入院していた場合、筋力が衰え「退院は介護の始まり」となるケースもありますので、注意して様子を見ていきましょう。

 介護が必要になったら、地域包括支援センターに相談

 親御さんに介護が必要となってきたら、親御さんの居住地の「地域包括支援センター」はどこかを調べ、相談するのが一番です。

 介護を社会全体で支えることを目的に創設されたのが「介護保険制度」ですが、全国一律ではなく、地域により使える制度が異なります。地域包括支援センターは役所の出先機関という位置づけで、社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーが常駐し、地域の高齢者の介護、福祉、健康、医療など広範囲に及ぶ相談に対応してもらえます。

 要介護認定と要介護度を知る

 介護保険制度を利用するには、親御さんの日常生活能力がどの程度低下しているかを調査してもらう必要があるため、親本人の居住地の役所に、「要介護認定」の申請を行います。認定調査員が自宅に来て74の質問をしますので、必要な場合は立ち会います。その後かかりつけ医の診察を受けると、約30日で「要介護度」の判定結果が郵送されてきます。

 要介護度は「要支援1」から「要介護5」の【7段階】で判定され、「今回は介護保険利用には該当しない」という場合は【非該当(自立)】と明記されます。

【介護の必要度合いにより判定される7段階】

  • 要支援1
  • 要支援2
  • ---
  • 要介護1
  • 要介護2
  • 要介護3
  • 要介護4
  • 要介護5

要支援2段階・要介護5段階の計7段階に分けられる。上から下に向かって、介護が必要な度合いが重くなる。

 それぞれの要介護度に応じた限度額の枠内で、所得に応じた1割・2割・3割の自己負担分で介護保険サービスを利用できます。まずはケアマネジャー(介護支援専門員)を決め、親御さんが自宅での生活を持続できるようなケアプラン(介護サービス計画表)を作成してもらいます。その時、自分は親の介護にどの位の時間を当てられるか、どのような介護保険サービスを使いたいか、1カ月どのくらいの金額になるかを、ケアマネジャーとスムーズに話ができるくらいの予備知識を習得しておきましょう。

 在宅介護と施設介護のメリット・デメリットを知る

 親に介護が必要になった場合、軽度であれば自宅で介護保険サービスを使い、訪問介護やデイサービスを利用するのが一般的です。ただし、認知症がある場合は、要介護度に関わらず、独居では難しいケースもあります。

 「在宅介護」のメリットは、住み慣れた自宅での生活を継続でき、費用が安く済む点です。反面、家族の負担が大きく、緊急時の対応が不安、寝たきりになる可能性があります。しかし、一番大きいのは、仕事と介護の両立が難しいという点です。

 特別養護老人ホーム(特養)や介護付有料老人ホームなどの「介護施設」に入り介護を受ける場合は、家族の負担は軽くなりますが、費用が高額になる点が一番の懸念材料です。また、親御さんによっては、介護施設に入ることを拒否される方もいらっしゃいます。そのような場合は無理強いせず、できるところまで在宅介護でしのぎ、親も子も在宅での限界が見えてきたら施設を探す方法もあります。

 介護離職しないために、公的な制度を利用する

 自宅で暮らし続けたいという親の気持ちを尊重し、子としてできる限り介護してあげたいと、無理を重ね、仕事に、自分の家庭生活にもひずみが生じ、体調を崩すまで頑張りすぎてしまう人がいます。それは、親、自分、自分の家族にとってベストな選択なのでしょうか?

 介護のために仕事を辞める、いわゆる「介護離職」する人が年間約10万人います。収入はなくなりますし、将来受け取る年金額にも影響が出てきます。仕事を辞めず働きながら介護を続けていくには、育児・介護休業法に基づく2つの制度がありますので、上手に利用しましょう。

 「介護休業制度」は、2週間以上にわたり常時介護が必要な対象家族(※)1人に対して3回まで、通算93日まで休業できる制度です。この期間に、適切な介護サービスなどを探し、介護と仕事を両立させる準備期間として利用します。原則、働く人が事業者に申出を行いますが、事業主はこれを拒否することはできません。介護給付金の給付率は67%です。

 「介護休暇制度」は、対象家族の介護・その他の世話をするため、1年間に5日まで、休暇を取得できる制度です。半日単位での取得も可能で、病院への付き添いなどに利用します。介護休暇における賃金は法的な定めがなく、事業主に委ねられています。

 この他、介護期間中の残業免除、介護のための所定労働時間の短縮措置もあります。企業によってはフレックスタイムや独自の上乗せ制度を用意しているケースもあります。この際に勤務先の就業規則を確認してみてください。

(※)対象家族とは、配偶者(内縁関係を含む)、父母及び子(これに準ずる者として祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む)、配偶者の父母です。

 自らが直接身体介護に当たるだけが介護ではない

 食事や入浴、排泄、着替えなどの介護を「身体介護」といいますが、「親に介護が必要になったら、仕事も家庭も犠牲にして、何が何でも自らの手で身体介護を行ってあげなければならない!」と考えなくてもよいのです。

 利用できる制度や介護サービスを使ったり、場合によっては介護施設への入居を検討しなければならないこともあります。それぞれのメリット・デメリットを把握し、自分や親にとってベストな介護法を選択していきましょう。高齢者施設・住宅の種類や概要・費用の目安などに関しては次回書かせていただきます。

岡本典子(おかもと・のりこ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
FPリフレッシュ代表。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、東京、神奈川を中心に230カ所以上を訪問。シニアライフを安心・安全・安寧に過ごせる「終のすみか」を探される方の住み替えコンサルティングに力を注いでいる。セミナー講師や講演をおこなうほか、執筆、監修、新聞や雑誌の取材に応じている。著書に『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』(日本実業出版社)がある。

【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら