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観覧車とホラーがコラボ? 大阪・吹田の大型複合施設にある“最恐観覧車”

 大阪・吹田の大型複合施設「エキスポシティ(EXPOCITY)」にある、高さ日本一の観覧車「オオサカホイール」が恐怖スポットになっているという。聞けば「最恐観覧車」と銘打っているらしい。ジェットコースターのような絶叫マシンでもあるまいし、最恐とは大げさな。一体、何が起きているのか。実際に現場に出向いて確かめるしかない。(大島直之)

ホラー仕様にラッピングされたゴンドラ=大阪府吹田市(渡辺恭晃撮影)
現れたゾンビに、思わず驚きで身をのけぞらせた=大阪府吹田市(渡辺恭晃撮影)

シースルーは封印

 高校野球の代替大会の取材で連日、走り回っていたら、ドタバタデスクから「急で悪いんだけど、これ探偵してきてよ。万博記念公園球場の近くでしょ」と、ファクスが送られてきた。

 タイトルには「最恐観覧車シリーズ 地獄のゾンビ観覧車」とある。肝試し体験か。連日の炎天下での取材と気分も変わっていいかもしれない。探偵記者の任に就くことにした。

 現場に着くと、オオサカホイールは万博記念公園に立つ太陽の塔に対峙するように、そびえていた。高さ123メートルという日本一の高さを誇る観覧車のゴンドラはシースルー構造で、透明なアクリル板の床面から地面を見下ろすと、足がすくむ怖さを体感できるという。

 しかし今回、恐怖体験を味わうのは、シースルーゴンドラではないようだ。72基あるゴンドラのうち、4基だけがフィルムやシートで黒く覆われ、特別仕様に仕立てられていた。

 ドタバタデスクには告げていなかったが、実は高所や狭い空間が苦手だ。しかし、シースルーの特徴を封印してしまったゴンドラなど恐れるに足りない。

不気味な音が

 「すでに何社かメディアの方が乗られましたが『相当怖かった』との評判をいただいています」

 観覧車を運営する「オオサカホイール」(吹田市)のスタッフがあおるが、学生時代は心身をボクシング部で鍛えた。私はちょっとのことでは動じない。

 乗り場に案内され、真っ黒なゴンドラに素早く乗り込んだ。おっと揺れた。思わず扉に手をかけたが、無情にもぴしゃりと閉じられる。これから1周18分、逃げられなくなった。

 真っ暗な内部には、クモの巣も張ってありおどろおどろしい。ヘッドホンを装着し、窓に映し出される映像を見ながら、物語に沿って謎解きを進める趣向だ。ある少女の、けんか別れした行方不明の親友を探す課題をあたえられた。ヘッドホンから響く、窓を打ち付ける音の不気味さに思わず手が扉に伸びる。しまった。ここは日本一の高さの観覧車。出られないのか。

 演出を請け負うのは社名からして怖さを感じさせる企画会社の「株式会社闇」(東京都)。仮想現実(VR)技術などを使ってひらかたパーク(大阪府枚方市)のお化け屋敷やホラー映画も手がけている。

 闇が今、新たな事業分野として注目しているのが観覧車とホラーの組み合わせ。「密室とホラーを組み合わせることで観覧車の新たな楽しみ方を提案したい」とオオサカホイールに今春、企画を持ち込んだ。これまでも「マリノアシティ福岡 観覧車スカイホイール」(福岡)などで観覧車を使ったホラーアトラクションをプロデュース。人を怖がらせる映像作りや演出はお手のものだ。向後(こうご)史朗ディレクターは「1周18分と6人乗りのゴンドラの空間をフルに使って楽しめるストーリーや映像を作り上げた」と不敵な笑みを浮かべていた。

揺れるシート

 一度ゴンドラに乗り込んでしまうと、外が見えないため自分がいる高さも、どのくらいの時間が過ぎたのかも分からない。向後さんの思惑通り、逃げ場のない恐怖に次々と襲われる。自分はボクサーだと鼓舞するが、思わず手が震える。

 急に現れるゾンビに思わずのけぞる。空調は効いているはずなのに汗が背中を伝う。さらにここぞというときに映像と連動してブルブルと揺れるシートに腰が浮く。閉じられたままの扉がうらめしい。あぁ早くここから出たい。

 謎解きを終えると、ようやく扉が開いた。飛び出したかったが、足はすくんだままだ。スタッフに促されてなんとか降りると「Bad End」と書かれた乗車体験カードを手渡された。謎解きに失敗したようだ。恐怖のあまり何かを見落としてしまったらしい。

 探偵記者としたことが…。残念な結果をデスクに報告しなければならない。これこそ夏の最恐体験。汗がどっと吹き出した。

コロナ対策も

 最恐観覧車の企画にあたっては、新型コロナウイルスの感染拡大防止の取り組みも行われている。乗車前には非接触型検温、消毒、マスク着用のほか、大阪コロナウイルス追跡システムへの登録も求められる。ゴンドラの管理も、乗客降車ごとに抗菌作業をするほか、換気口も常時開放している。

 密閉空間となる観覧車にとって新型コロナの影響は大きく、オオサカホイールでも春以降、大きく乗客を減らした。そんな中、同社の三輪武志ゼネラルマネージャーは「いかに空間に付加価値を付けて有意義な空間を提供できるか考えている」と話す。今回のゾンビ観覧車も、特性を生かした一つの挑戦で、「今後も多くの来場者を楽しませる新たな企画で観覧車ビジネスの可能性を探りたい」としている。

地獄のゾンビ観覧車 9月30日まで開催。ゴンドラの定員は6人。乗車料は通常料金の1000円にプラス500円の1人1500円。