生前整理(2)買い取りのプロに聞く 不用品「高値」期待しないで
生前整理による不用品を何とか高値で買い取ってほしい。誰もが考えることだが、査定結果を聞いて「ガッカリ」という経験をした人も多いだろう。どんなものが高く売れるのか、業者に依頼する際に気をつけることなどを、業界事情に精通する出張買い取り「なんでも市場」の松谷修二さんに聞いた。
大抵は値段つかず
生前整理をするとき、買い取り業者を利用する人が増えているという。特に、長年のコレクションや高額で買った品を手放すときには、他の不用品の処分費を賄うために「できるだけ高く売りたい」と考える人も少なくない。ところが「実際には売れるものは少ない」と松谷さんは話す。
「まず、過度な期待を持たない方がいい。大抵は値がつかず、ごみとして処分されるケースがほとんど。なかには売れるものもあるが、未使用品や希少価値のあるものに限定される」
もし、自分で価値が分かっているものであれば、訪問タイプの買い取り業者に来てもらう前に、売りたい品を得意分野にしている専門業者へ足を運んだ方がよいという。
「生前整理サービスの買い取り業者は、売りたい品に目が利くとは限らない。手間にはなるが、買い取り専門店に持ち込むのがベスト。正しく査定できる人に見てもらい、納得した金額であれば、後悔なく手放せるのではないか」
査定は複数業者に
では、生前整理サービスとともに訪問タイプの買い取りを行っている業者に査定してもらう場合、どんな点に気をつければいいのか。
「基本だが、まず複数の業者に見積もりをお願いしたい。厳しいことを言うようだが、ほとんどのものが売れずごみとして扱われることが多いので、処分する際の費用を確認しておくことが前提になる。買い取りはその場で査定されるが、適当な理由をつけて安く買い取り、高値で売ろうとする業者もいるので注意が必要だ」
もちろん、客の思いを理解して誠実に買い取る業者も存在する。しかし、善しあしを見分けるのは難しい。どうすればよいのだろう。
「処分費や買い取り価格について、なぜこの金額なのか、理由を説明できるか確認してみてほしい。正規の金額を算出している業者や、正しく査定できる人間であれば、しっかりと説明してくれるはずだ。あやふやで不透明な回答をする業者はすぐに断ろう」
業者に言われた金額をそのままうのみにするのは禁物だ。松谷さんは「高齢者が一人で立ち会うのは避けるべきだ」と話す。
「よくあるのが、気の弱いお客さんが業者の言われるままに買い取りをお願いしてしまうケース。特に高齢者に多く、損をしていることもある。必ず業者に意見できる身内や知り合いに加わってもらおう」
だますというよりも、価値をよく分かっていない人を派遣する業者もあるからだ。
松谷さんはさらに、「大型の家具や電化製品などは処分費がかかると思ってほしい。正規の金額であればよいが、残念ながら悪徳業者もいる」と強調する。
「不安な方はトラブルを避けるためにも知人を通して信頼できる業者にお任せした方が無難だ」とアドバイスする。
【プロフィル】松谷修二氏
1973年8月生まれ。2011年、フランチャイズの買い取り専門店オーナーに。翌年には出張買い取り「なんでも市場」を開店。現在、株式会社「Metius」代表。
捨てずに寄付して社会貢献 代表的な4団体紹介
不用品の処分で考えたいのが「寄付」。ごみとして捨てられてしまうものでも、世界には喜んで使ってくれる人々がたくさんいる。心の充足感も得られて、社会貢献につながる。生前整理で生じた不用品を寄付できる団体は多くあるが、代表的な4団体を紹介する。
国際社会支援推進会「ワールドギフト」
主に途上国の人々に集まった不用品を届けたり、現金化してボランティア団体に寄付したりしている。寄付できるのは衣類、シューズ類、カバン類(特にリュックサック)、おもちゃ、縫いぐるみ、文房具、台所用品、調理器具など。物資寄付国はインドネシアやトーゴ、キリバス、ガーナなど87カ国に及ぶ。
「鍋、フライパンなどの調理器具の需要は少なくない。水筒や弁当箱、スプーンやフォークなどの食器も世界中の女性たちが喜んでくれる。特に、お椀(わん)などの日本の文化を感じられるモノは、『かわいい』『素敵』と人気がある」(平井尊雄さん)
寄付の方法は、段ボールに不用品を梱包(こんぽう)し、ホームページの申し込みフォームで集荷依頼をする。段ボールのサイズで集荷料金が決まり、その金額を振り込めば、宅配業者が集荷に訪れる流れだ。
【問い合わせ先】集荷お申し込み専用ダイヤル06・7505・4585
NPO法人「もったいないジャパン」
家庭の不用品を「もったいない精神」のもと、社会還元している。寄付できるものは衣類、靴類、毛布やタオルなどの日用品、スポーツ用品、文房具、楽器類、縫いぐるみ、人形、おもちゃなど広範囲に及ぶ。主な寄付先は、フィリピンやインドネシアなど途上国の孤児院など。
本部では平日9~16時に常勤ボランティアが直接持参に対応。事務所前の回収ボックスには24時間持ち込める。
【問い合わせ先】もったいないジャパン0467・38・7222
一般社団法人いいことファーム「いいことシップ」
全国に寄付先を設けて、地域密着型の寄付活動を目指している。寄付できる不用品は衣類、カバン類、食器、キッチン用品、おもちゃ、縫いぐるみ、家具、工具・農機具など。段ボール1箱分を送ると、100円が寄付される仕組みだ。
最大の特徴は寄付先を選べること。「日本赤十字社」「日本ユニセフ協会」「世界の子どもにワクチンを日本委員会」などの団体から指定でき、寄付の実績はホームページで公表される。不用品を段ボールに入れ、近くの集荷センターに送る。
【問い合わせ先】いいことファーム0120・976・329
ふくのわプロジェクト
寄付された衣類を売却し、収益金で「パラスポーツ(障がい者スポーツ)」を応援する。対象の衣類はスーツやドレス、Tシャツ、ネクタイ、マフラー、スカーフ、着物、帯など。パラスポーツを推進する団体の活動を支援する。
担当者の永栄朋子さんによると、「人の役に立つ寄付が、手放せなかった品々を整理するきっかけになった」など高齢者の寄付が多いという。
東京都内の各地に寄付ボックスを設置している(ホームページ参照)。
【問い合わせ先】ふくのわプロジェクト 関東流通センター070・4176・3700